06 カオリ、外に出る
魔道書専門の本屋の話ですが、筆者は魔道書についてはあまり詳しくありません。今度調べます・・・・・・。
「は?」
「ちゃんと聞こえたでしょ。二度は言わないわよ」
美女は、澄ました顔をした。
「あの成金男が、ガジェットさんの息子……?」
「そうよ。あなたは雇い主の家族に、失礼な振る舞いをしたことになるわね」
その言葉を聞いたカオリは、ガタガタと震え出した。
――私は、命の恩人のご家族に、なんてことを……。
カオリは、立ち上がり、美女に向かって言った。
「おねえさん、一緒に、ハウエルさんを助けに行きましょう!」
「ふふ、元気ね。でもね、私にも名前はあるのよ?」
そう言って美女は、カオリに手を差し出した。
「ピジョン=ヒューズよ、よろしく」
カオリが握ったピジョンの手は、氷で出来ているように冷たかった。
「……で、あなたは何をしているのかしら?」
「決まっているじゃないですか。あなたを盾に、身を守っているんです」
カオリは、ピジョンの背中に隠れて、こそこそと道を歩いていた。
カオリは、ガジェットさんに助けられてから、今まで一度も外を歩いたことがなかった。
怖かったからである。食事もガジェットさんに自由に食べていいと言われた、缶詰めなどの保存が効く食べ物を少しずつ食べて生活していた。
言わばこの数ヶ月間、カオリは引きこもりだった。
「あなた、美人なんだから、堂々としてれば誰もチョッカイ出さないわよ。服も高そうなもの着ちゃって。よっぽど彼の父親に大事にされてたのね」
そうか、と、カオリは気づいた。この世界に来たばかりの時は、自分は貧乏だったが、今はガジェットさんが買い与えてくれたきれいな服を着て、清潔な格好をしているのだ。
――もっと、自信持たなきゃ。
カオリは背筋を伸ばし、堂々と前を向いて歩き出した。
――でないと、あたしを助けてくれたガジェットさんに、申し訳ない。
ピジョンは、カオリが歩き出したのを見て、うっすらと微笑んだ。
それは、子の成長を見守る親のような気持ちから、ではなくーー。
ただ単に、カオリが自分のコートのすそを握ったままなのが可笑しかったからだった。
(続く)
お読みくださりありがとうございました。ハウエルは一体なんの仕事をさせらているのか、ご期待ください。