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アグレスを目指して


「ほら、そんな顔しないの!」


「……わかってるわ」


 ノーランの街に入った所で、馬車を止めてランを降ろす。 渋い顔をしている私に、ランは笑いかけている。 彼女の手には台車が握られていて、そこには私が作った保存の魔道具と警報の魔道具が置いてある。 持ちきれないので、近くの店で借りてきた。




「またすぐ会えるから! ね?」


「……そうね」


 ぐずっていても仕方がない。 気持ちを切り替えて、彼女を見送ろう。 目尻に浮かぶ涙を拭いて、私はまっすぐとランを見た。 彼女は私の頭を撫でている。 これでは、いつもと立場が逆だ。




「それじゃあ、キースもまたね!」


「ああ、またな」


 ランはキースにも一言言うと、そのまま荷台を引いて行ってしまった。 あまりにもあっさりとした行動に、私は思わず口を開いて固まった。 少し離れた所で、ランが振り返って叫んだ。




『すぐ会いに行くからねー!』


 大声で叫んだ後、彼女は走っていった。 私はきょとんとした後、すぐに笑いがこみ上げてきた。 ランらしい。 まるで、遊び終わって家に帰るような気軽さだ。 そんなに難しく考えることはなかった、ランとは本当にすぐに会えそうだ。




「ふふ。 ……全く、もう」


「あいつらしいな」


 キースも苦笑いをしている。 さあ、私達はアガレスを目指さなくては。 宿屋で聞いた話によると、アガレスの街はノーランを挟んでリディルとは反対側にあるらしい。 今日はここで一泊して、明日すぐに街を出る。 依頼を受けていることだし、あまり待たせるのも悪いと思う。


 宿屋に馬車を預け、私達は街に繰り出した。 冒険者ギルドに顔を出しておこう。 正確には、レイラに会いに行くだけなんだけれど。




―――――ギィ……


 冒険者ギルドに入り、受付の方に視線を向ける。 レイラは……、いるみたい。 私に気づいた彼女も、此方に小さく手を振った。 そのまま彼女の方へと向かう。




「あら、帰ってきたの? どうだった? 海、良かったでしょう?」


 知っていたかのように話すレイラに驚いていると、どうやらランも尋ねてきたらしい。 一瞬だけ訪れて、私達のことを話して出ていったそうだ。 その様子は用意に想像できる。 まるで嵐みたい。 私はレイラに、アガレスに行くことを伝えた。




「そう。 ……なら、あのお店はお預けね。 また集まったら皆で行きましょう」


「ええ、そうね」


 あのお店とは、レイラとランと私の三人でいった店のことだ。 再び行くのは、またこの街に集まったらにしよう。 少し残念だが、抜け駆けするのも気が引ける。




「アガレスって、魔術学園のある所よね? やっぱり、そこに行くの?」


「その予定よ、届け物の依頼も受けているしね。 ついでに、魔法についてなにか学べれば良いのだけれど」


 レイラに魔族の事を話すか迷った。 彼女は一般人だ、冒険者というわけでもない。 むやみに危険に晒すことはないだろう。 私は黙っていることにした。




「魔法についてなら、学園以外にも学べる場所は沢山あるはずよ。 あの街は魔術師の街だから……。 貴女みたいな優秀な魔術師は歓迎されるはず」


「そうだといいけど」


 レイラと軽い雑談をした後、私達は冒険者ギルドをあとにした。 次は……。 ジェムズさんの所にも寄っていこう。 ついでに少し早いお昼を済ませてしまうのもいいかも。




「キース。 ジェムズさんのお店に行きましょう?」


「もう昼だしな。 丁度いい、挨拶ついでに行くとしよう」


 ジェムズさんの料理店に近づくと、相変わらず賑わっている。 列に並び、店に入った所で気づかれた。 今日はマイアさんは居ないようだ。




「おう、久しぶりだな」


「ええ。 でも、すぐに街を立つわ。 アガレスに行くの」


 厨房から出てきたジェムズさんは、私達のところへとやってきた。 アガレスに行くと言うと、彼は少し驚いたような表情をしている。 行ったことがあるのかしら?




「あぁ、あの街か。 前に一度行ったことがあるが、でかい図書館があったな。 中を覗こうとしたんだが、魔術師以外は、お断りだって言われたよ。 一般人の俺は、随分居心地の悪い場所だったな」


 ジェムズさんは渋い顔をして話している。 魔術師達が多く住む街で、魔術に関しては有用な情報が得られる。 その反面、魔術師以外に対しては余り受けが良くないようだ。




「まぁ、嬢ちゃんなら大丈夫だろう。 むしろ歓迎されるんじゃないか? 学園に入学できたりしてな! はっはっは!」


「歓迎されるのは嬉しいけど、入学する気はないわ。 私はまだ旅を続けたいもの」


 魔法の知識を教えてもらえるのは大歓迎だが、学園に縛られるのは勘弁だ。 そんな都合のいいことがあるわけもないだろう。 アガレスで得られる魔法の知識には期待をしないでおこう。 それより、図書館のほうが気になる。 そこなら、リディルの遺跡と同じ様な場所について調べられるかもしれない。




「ねえ、図書館って魔術師なら誰でも入れるの?」


「ん? あぁ、それはだな。 アガレスの街には魔術師ギルドってのがあるんだ。 そこに所属している魔術師なら、自由に出入りできるらしいぞ。 図書館で止められた時に聞いた」


 魔術師ギルド。 そんなものがアガレスの街にはあるのか。 私がギルドに登録できれば、キースも図書館に入れるだろうか。 彼は魔術師ギルドに登録はできないだろう。 それに、嫌な思いはして貰いたくない。




「心配するな、俺は大丈夫だ。 その事はとっくに吹っ切れている。 今更言われても何も思わない」


「……そう」


 魔法に適正が無くて捨てられた過去。 魔術師ギルドで、その事が知られたらなんて言われるだろうか。 キースは私の護衛という形で登録しよう。 笑っている彼を見ながら、私は心の中で決めた。




「おっと、厨房に戻らなきゃ怒られる。 それじゃあ、ゆっくりしていってくれ」


「ええ。 話し込んじゃって、ごめんなさいね」


 ジェムズさんは片手を上げて厨房へと戻っていく。 私達も席に付き、注文を取りに来た店員に料理を選んで頼む。 暫くすると、その料理が私達の前へと運ばれてきた。




「お待たせいたしました」


 ジェムズさんではなく、別の店員だ。 店の混み具合を見るに、彼はとても忙しそう。 前来たときより混んでいる気がする。 目の前に置かれた料理を食べつつ、私はキースと話し合った。




「他にこの街で必要なものはあるかしら?」


「必要な物資は積んである。 この後、商店街で補充すればいいだろう」


 他に必要そうなものも考えつかない。 キースの言う通り、旅で使う物資を補充したら宿へ戻ろう。 明日から、また旅に戻る。 体をゆっくり休ませておかないと。



 

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