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ウイユの村 11


―――――ガサガサ……


 私達は暫く森を見回り、辺りはすっかり暗くなっている。 道中、何度か動物に遭遇した。 しかし、どれも私達を見るや逃げていってしまい、徒党を組んで襲いかかってくるようなものは確認できなかった。




「やはり、明らかに森の動物達が落ち着いていますね」


 テレズさんはそう話す。 確かにこれなら、彼女の言葉を信じざるを得ない。 少なくとも今の様子なら、村が襲撃されることもなさそうだ。




「これなら、村は大丈夫そうね」


「ああ、俺達も一度戻るとしよう」


 村に帰ることにしよう。 そんな中、私はジェラと黒い狼を思い出していた。 ……彼女は、"またね"と言っていた。 つまり、いずれ私の前にもう一度顔を出すという事だ。 それなら、私は早めに村を離れたほうがいいだろう。 また村を狼に襲わせられては、たまったものではない。




「そうですね、暗くなってきましたし帰るとしましょう。 着いてきて下さい」


 帰り道はテレズさんに任せ、私達は後ろについていくことにした。 特に私は二人と違って、暗闇に慣れていない。 まだぎりぎり見えるが、なるべくテレズさんの後ろを離れないように帰路についた。




―――――ガサッ!


 テレズさんについて進んでいくと、森が開けて来た。 先には明かりが見える。 どうやら村についたようだ。 私達が近づくと、村の物見櫓でチカチカと明かりが点滅した。 恐らく帰ってきたことを伝える合図だ。




「帰って来れたわね」


「ああ、随分長く居たように感じるな」


「ええ、色々ありましたから……。 レティさんとキースさんは、どうぞ体を休めて下さい」


 私達三人は、村の門の方に歩きながら話していた。 昼過ぎに出て、まだ半日も経っていないが体感的には数日彷徨っていたような疲労感を覚える。 ……一度に色々ありすぎた。




―――――ギ……ギギギギギ……


 軋む音を立てて村の門が開かれる。 中から出てきた村人達が出迎えてくれた。 その集団から人影が飛び込んでくる。 シエラ達だ。




「お父さん!」


「シエラ!」


 シエラは真っ先に父親に駆け寄った。 少し遅くなってしまったかしら……。 帰りを待っていた彼女は不安だったことだろう。 続いてユエラさんもテレズさんを抱きしめる。




「あなた!」


「大丈夫、無事だよ。 二人が守ってくれたからね」


 ユエラさんは涙目になっている。 やはり夫を危険地帯に送るのは不安だったようだ。 当たり前だ、無事に村へ送り届けられて良かった。 それを眺めていると、横からシエラが抱きついてきた。




「レティさん! キースさんも……。 無事で良かった……」


「お二人にはなんと感謝を申し上げていいか……」


 シエラは泣き出してしまった。 こんなに心配してくれていたとは……。 私は少し罪悪感を覚えながら、シエラの頭を撫でた。 すぐ後ろでは、先程までテレズさんと抱き合っていたユエラさんが、今度は私達に向かって、何度も感謝の言葉を述べていた。




「ごめんなさい、シエラ。 遅くなってしまったわね。 でも無事よ、怪我もしてないわ」


「ああ、俺達は平気だ」


 私とキースはそう言ったが、シエラは泣き止む気配がない。 彼女の気の済むまで、暫くこのままにしていよう。 ふと、横を見るとテレズさんがリズ達を抱きしめていた。 リズ達もいつもなら寝る時間だろうに、父親の帰りを待っていたんだろう。




「……グスッ。 ……ごめんなさい、疲れてますよね。 どうか、ゆっくり休んで下さい」


 ようやく泣き止んだ彼女は、休憩を勧めてくる。 そうしたいが、今日のことを早めに報告しておきたい。 私は近くにいる村長に、視線を向けて話した。




「そうね。 でも先に報告をしてしまいたいの。 その後ゆっくり休ませてもらうわ」


「それは、ありがたい事ですが……。 無理をなさらずとも……」


 私の提案に、村長は困り顔で返事を返してきた。 私は大丈夫だ……でもテレズさんは、シエラ達のもとに返してあげたほうがいいかもしれない。 そう考えてテレズさんの方を振り返った。




「私は大丈夫です。 それに早めに報告したいことが多くあります。 そちらを優先したほうが良いでしょう」


「テレズまで、そう言うか……。 それならば、着いてきてくだされ。 私の家で話しましょう」


 私の視線を受けたテレズさんは、少し考えるような仕草をした。 しかし、報告を優先したようだ。 結局、村長が折れて家で報告をすることになった。 私はシエラの方を向き直す。 彼女達には先に家に帰ってもらおう。




「ごめんなさい、シエラ。 先に帰っていてくれる? 報告が終わったらすぐに向かうから……」


「はい! 食事の準備をしておきます! ……無理はしないでくださいね」


 名残惜しそうにはしていたが、こちらの意思を汲み取ってくれたようだ。 彼女はそう言い残して家に向かって行った。 それを笑顔で送りつつ、私達は村長の家に向かって歩き出した。




 

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