幕間
―――――ズズズ…。
部屋の一角に影が集まる。 大きな窓から夕日が差し込み、置かれた机には高級そうな調度品が飾られている。 その場所は、城の一部屋のようだ。
「……ただいま」
影から這い出た彼女。 ジェラは、部屋の片隅に向けて声をかける。 日陰で見辛いが、その場所には男が立っていた。
「おかえりなさい、ジェラ」
優しく彼女に声をかける彼は、家族を見るような目でジェラを迎えた。
「会えましたか?」
彼はジェラに問いかける。 会えたかとは、レティシアの事だ。 その問いに、ジェラは頷く。
「……うん。 会えた。 ……優しかった。 ……でも、まだダメだって」
前半は嬉しそうに、後半は悲しそうに。 表情を変えながら彼女は話す。 その感情の切り替わり方は、まるで操り人形だ。
「そうでしたか。 ……大丈夫ですよ、またすぐに会えますから」
落ち込む彼女を、あやすように。 頭を撫でながら、彼はジェラに話しかける。
「……ほんと?」
ジェラは彼を見上げて、聞き返す。 その言葉には、今までで一番感情がこもっているように聞こえた。
「はい。 良い子にしていれば、きっと」
そんな彼女に、彼は広角をあげながら答える。 ジェラは、その言葉を噛みしめるように頷いた。
「では、皆さん待っています。 行きましょうか」
「……うん」
彼は、部屋の扉を指さしながらジェラを促す。 彼女は返事をして、扉に向かって歩き出した。 それを確認し、窓から外を見上げる。
「ようやく、時が来ました。 今度こそ、貴女の夢を叶えてみせます。 ……"母上"」
彼の発した言葉は、誰に届くことも無く暗闇に紛れて消えていった。




