王都襲撃
時間は少し巻き戻り、トムたちがレクチャール―ムでの戦闘に勝利したころ、王都では住民たちが騎士の指示に従って避難を始めていた。
「こっちへ!焦らずに非難してください!まだ守護聖女様の結界があります!誘導に従って避難してください!」
騎士たちが声を張り上げて一般人を誘導している。
「なんだあれは……」
騎士の言われるまま避難していた男が空を見て思わず呟いた。
雲一つない晴天にもかかわらず。そこだけ夜空のように黒い。よく見るとそれが竜であることに気づいた男は、その場にしりもちをついた。
ゴーンゴーンゴーン
突然教会の鐘が鳴り響く。いつもは正午と日の入りにしかならない教会の鐘が鳴った。その意味を知っている兵士たちの顔には緊張がはしっていた。定時ではない教会の鐘の音。それが意味するのは、
結界の崩壊である。
黒竜は街中に悠々と着陸するとその背中から二人のこどもが降り立った。黒スーツ着た少年が黒竜の足を蹴りながら、声を張り上げ怒鳴っている。黒竜は申し訳なさそうに首を下げる。
「埃っぽいじゃねぇかよ!お前の着陸が雑だからだぞ!おい!」
「や、やめなよ黒竜さんだって悪気があったわけじゃ……」
「あぁ!?」
「ヒィ!」
少年を止めようと、ゴスロリの少女がたしなめるが少年にすごまれて萎縮してしまう。
「あーイライラするぜ。ここが王都か?あれが城かさっさと王様殺して帰ろうぜ」
「う、うん早く帰ろ」
「ガウ」
とんでもないことを言う少年に少女と黒竜が頷きながら同意する。その周りを騎士がとり囲む。
「お前たち!何しにここに来た!」
「なんだ?おまえ?」
「質問しているのはこちらだ!何を……」
騎士は問い詰める途中で上半身が消し飛んだ。そのまま後ろに倒れこみ血だまりができる。
「うるせぇ」
何が起こったのかその場にいた誰もわからなかった。いつの間にか自分たちの仲間が死んでいた。その事実に動揺しながらも、仲間の命を奪った敵へと立ち向かっていく。
「「「「うぉぉぉぉ!」」」」
「や、やめましょう?」
迫る兵士にゴスロリの少女が呼びかける。しかし、それを無視して騎士たちは突っ込んでいく。
「へ?」
ひとりの騎士が間の抜けた声を上げると地面に倒れる。自分の足を見ると砂のように崩れている。ガシャンと何かが落ちる音が聞こえ、前を見ると、先を走っていた騎士たちが装備を残して砂のように崩れ落ちた。吹いた風が兵士だった砂を巻き上げ空へと舞い上がる。
「もうめんどくせぇな。城ごと消し飛ばそうぜ」
少年が言うと、黒竜が口を大きく開く。そこに光の粒子が集まる。黒竜の首が王城へ向けられた時、黒竜の体が吹き飛んだ。吹き飛んだ拍子に光の粒子が霧散する。
「誰だ!」
少年が叫ぶと空か白い何かが降ってくる。少年と少女は飛びあがってそれをかわす。土煙が晴れると、そこにはレイテリスを除いた八偉人の面々が並んでいる。
「いつもは息子任せなのに、どういう風のふきまわしだ?」
【槍神】オイゲンが横にいる人物の肩を叩く。
「たまたまこっちに来てたからな。たまには偉人らしく責務を果たすさ」
オイゲンに返事をした人物は、片手で器用に刀を抜いた。服の左袖が風にはためき。右目には傷があり、完全に目を閉じてしまっている。
「偉人としての責務ね~?珍しいこともあるもんだ。なぁ?【探索王】」
会議にはいなかった最後の偉人。マリーとトムの父親にして、この世のすべてのダンジョンを攻略した男。【探索王】ダルケン・ヘイカーを要する偉人対魔人の戦闘が始まろうとしていた。
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