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兄妹の胸の内

 トムは副理事長が消えた瞬間、膝を折り、地面に手をついた。苦しそうに息を吐く。マリーーが駆け寄ろうとすると、このダンジョンの主であるレーラーが現れた。


「やぁトム、マリー終わったようだね」

「レーラーか」

「こっちで休みなさい」


レーラーがトムに肩を貸しダンジョンの奥へと進んでいく。リルイの治療により、傷がふさがったマリーも続いて奥へ行く。扉を開けると一面に草原が広がっていた。遠くに丘が見えそこにログハウスが建っている。レーラーが杖を振るとログハウスが目の前に移動した。ドアが自動で開き、全員が入ると勝手に閉まる。中にはプランターが並び様々な植物が育っている。日が木漏れ日のように刺し、ダンジョンの中とは思えないほど穏やかな時が流れている。


「僕はトムをベッドへ連れていく。マリーはそこで姫様の治療を受けてなさい」


レーラーは階段を上に上がろうとする。


「でも兄さんは呪いを!」

「大丈夫任せなさい。それに君も、決して軽傷ではないんだよ?」


そういって杖を振る。椅子がマリーの近くに移動し、マリーの体が勝手に座ってしまう。


「では姫、よろしくお願いします」

「まかせてー」


そういってリルイはマリーに手をかざす。マリーの体が光に包み込まれていく。


「リルイちゃん傷はもうふさがってるから大丈夫。兄さんの方へ行ってあげて」

「ダメだよーいまマリーちゃん聖獣の攻撃食らったせいで、体に聖気溜まっちゃってるから少しづつ外に出さないとー」

「聖気?聖気ならいいのでは?」

「だめだめー人間が取り込みすぎたらその人、亜神になっちゃうもん。神の承認してない亜神なんて天使が討伐に来ちゃうよー?聖気は良いものだけど、どんなものでも取りすぎはダメだよーこればっかりは一気にできないからもうちょっと時間かかるのー」


リルイはそういって、額に汗を浮かべマリーを治療する。


「マリーちゃん無理しすぎたねーなんで?」

「それは……」

「トムが原因?」

「いや、そんなこと……いえ、そうですね。兄さんの役に立ちたかった。役に立って認められたかった」


膝の上で握りしめた手の上に涙が零れ落ちる。


「でもダメでした。結局私一人では止められなかった。結局場をかき乱しただけ……」

「なんでトムが上級ダンジョン攻略にマリーちゃんを連れて行かなかったと思う?」


マリーが顔を上げるとそこにはリルイの顔がある。いつもの子供らしい無邪気な顔ではない。まるで

親が子供を叱るような眼差しだった。


「それは私が足手まといだから……」

「違うよ」


リルイの顔がフッとほほ笑んだ。


「マリーちゃんに探索者以外の道も考えてほしかったからだよ」

「え?」

「これ以上は二人で話し合いなー」


そういってリルイはいつもの調子に戻り治療を続ける。マリーは、トムたちが昇って行った階段を見つめた。


 レーラーがトムをベッドへ寝かせると、トムの服をまくる。あざは体の大部分へと広がっていた。


「聖獣に手を出すとは、無茶したね」

「ほかに方法がなかった……」


浅い呼吸を繰り返しながらトムが答える。レーラーは、そんなトムの様子を見て、ため息をつく。お

もむろに杖を振ると、部屋の戸棚が空き、中からそれぞれ個別の色の液体で満たされた瓶がいくつも出てくる。瓶のふたが空き、液体が空中に飛び出すと、その場で混ざり合う。


「今回は、条件を満たしていない儀式から生まれた聖獣もどきだったから、この程度で済んだけど、本物の聖獣相手だったらこんなものでは済まないよ」

「わかってる」

「じゃあなぜ一人で戦った?」

「マリーに、これを味合わせるわけにはいかないだろ……」


レーラーは空中で合わさった液体をトムの体に落とす。トムは急に体に奔った痛みに苦悶の表情に変わる。


「今回のことはマリーにも責任があるだろうに。それに、二人で戦っていれば、この天罰も分散できて、軽くなっていたんだぞ?」

「それでも兄は妹を守るものだろ」

「愛が深いのは良いことだが」


レーラーは杖を振る。すると、液体はあざを伝い全身へ広がっていく。あざから翡翠色の液体が浮かんできた。レーラーは、それを確認すると再度杖を振ってトムにまとわせた液体をすべてすくい上げ、瓶の中へと注ぎ込んだ。瓶が満杯になったところで栓をする


「君たち兄弟はもっと話し合うべきだ。家族だろうがしょせんは他人。想いなんて、言葉にしないと伝わらないよ。今回はこの程度のすれ違いで済んだが、取り返しのつかないこともある。マリーも悪かったがトムも君の想いを話さなすぎだな。……これで良し!少し眠りなさい。半端とはいえ神罰に抗っていたんだ。疲れただろう」


そういってレーラーは部屋を出る。ドアがバタンと閉まる音が聞こえると、トムは腕で目を隠す。まとわりつく苦痛は嘘のように消え、疲労からすぐに意識が暗闇に沈む。


「マリーには幸せになってほしいんだよ」


トムの無意識のつぶやきは、陽光さす穏やかな部屋にしっかり響いた。


最後まで読んでいただきありがとうございます!!

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