緊急事態
ダンジョン奥地、荘厳な部屋の中央に煌煌と輝く宝玉が鎮座する。唯一ある大扉がゆっくりと開く。入ってきたのは、マリーと副理事長だった。
「これがダンジョン核か……」
「はい、これを破壊してしまえばダンジョンは崩壊します」
あまりの神々しさに圧倒される副理事長と、無感情にそれを眺めるマリー。
「それにしても、本当にここまでモンスターも出ないとはな。君は本当にダンジョンマスターと仲がいいのだな」
「レーラーに友人にダンジョン核を見せてやりたいとお願いしただけです」
「ははは、私は君の友人か」
マリーそのセリフに眉をしかめるが、上機嫌に笑う副理事長尾は気づかない。
「さて、これを壊して任務完了だ」
副理事長はそう言ってダンジョン核に向かって歩き出した。
「その前に、私たちを受け入れてくれる方の名前を教えていただけますか?」
マリーの問いかけに、副理事長は歩みを止め振り返る。少し不機嫌そうに花を鳴らし、その問いに答えた。
「【苦痛なき世界の会】のジョセ・ニクラウス様だ」
「その方は、どういう立場なのです?」
「なんだ?疑っていいるのか?まぁ良いだろう。ジョセ様は【苦痛なき世界の会】の6聖人にして、至高神から創造の権能を賜ったほどのお方だ」
「至高神?」
「私たちの新しい王だよ」
「……そうですか」
マリーは、副理事長の言葉を聞いて、納得したように微笑み返す。副理事長は、改めてダンジョン核に向かう。
「なんのつもりですか?」
後ろにいるマリーに振り向きもせずに、副理事長が呼びかける。
「あら、気づかれましたか?まぁもう遅いですけどね」
そう言うマリーは、副理事長に杖を向けている。その杖の先から、一滴の水が弾丸のように飛び出し、副理事長の胸を穿った。
地上では、突如として現れた天使型ゴーレムの大群に生徒や観客がパニックを起こしていた。そこに、拡声魔法によって、ライラの声が響く。
「皆さん、落ち着いて後者の方へ避難してください。講師が対処に当たります」
ライラの言葉に、皆静まる。声に鎮静の魔術を仕込んだらしい。落ち着きを取り戻した、観客たちは、校舎へと向かう。迫りくる天使の群れにライラが杖を向ける。学園全体を半ドーム状に透明の壁が形成される。
「結界を張りました、これでしばらくは持つでしょう」
トムは生徒会メンバーの男子生徒を引きずって、ライラのもとにやってくる。
「叔母様、今回の事はこいつらが関わってる」
そう言って、物のようにライラの前に頬りだす。ライラは男子生徒の胸に彫られているマークを見てため息をつく。
「この学園にも来ていたのですね」
「俺は【講義室】(レクチャールーム)に向かいます」
「分かりました。それを外しましょう」
ライラはトムに手をかざし、呪文を唱える。すると、四肢に付けていた黒い輪が外れ、体が軽くなったのを感じた。
「では、気を付けて行ってきなさい」
「ハイ!」
そう言って、走り去るトムを見送ったあと、足元の男子生徒を見やる。汚物でも見るかのような冷たい視線に、男子生徒は肩を震わせる。
「大変な事をしてくれましたね、全て吐きなさい?」
「し、知らない」
「私は、お願いしているのではありません。命令しているんです」
周囲の空気が重くなる。ライラの威圧感がだんしせいとを押しつぶす。
「ち、違うんです!本当に知らないんです!こんな、ゴーレムの大群計画になかった!ただ自分たちは、トムをあ、足止めして、ダンジョンの破壊する予定だったんです!」
生徒の様子に、本当に知らないらしい事が分かり、威圧感を引っ込める。そこに、【歩法老師】ゲイルが現れる。
「ライラさん。取り込み中の所良いかね?」
突然現れたゲイルに驚きながらも来た理由を尋ねる。
「どうされました?」
「先ほど、王の通信士のもとに伝令が来ての。どうやら街も襲われているようじゃ」
「なんですって?!」
ライラの驚きと共にガラスの割れる音が聞こえる。見あげると結界が割れ、ゴーレムが滝のようになだれ込んできた。
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