弟子
クロムは戻ったマリーに声をかける。
「やったねマリー!」
「ありがとうクロム。でも、同世代からも手加減されるなんて、私ってそんなに弱く見えるのかしら」
頬に手を当て大きくため息をつく。
「そんなことないよ。合同魔法を当てられて無傷だったんだよ?」
「でも、兄さんなら……」
言葉を続けようとするマリーの頬を掴む。
「マリーはトムさんと比べすぎだよ。あの人は別格だもん」
「そうかしら?」
「そうだよ!マリーは十分すごいよ!あ、私の番だ。行ってくるね!」
そう言って闘技場へと駆ける少女の背中に、手を振って送り出す。
「でも私は、その別格に追いつかなきゃいけないんです」
振っていた手を握りしめ、その別格が待っているであろう観客席へ向かう。
闘技場の修復が終わり次々と進行していく。クロムも無事突破し、本選へと歩を進める。本戦は後日となり、今度は高等部の予選となる。と言っても、高等部は参加が自由のため中等部程人数がいない。そのため、予選が中等部とは違った方法で行われる。
「さぁ!中等部予選が終わり!これより!高等部の予選を始めます!」
アイクの声に観客が湧く。闘技場に立っているのは、胴着のような服を着た青年だ。
「彼は、我が国の八偉人の一人、【歩法老師】の一番弟子であるテオ様です!制限時間五分の間に彼の背中についているバルーンを割ることが出来れば、本選に進むことが出来ます!」
アイクの説明に合わせて、テオと呼ばれた青年は観客に見えるように背中を見せる。そこには紙風船のようなものがついている。
「ちなみに、テオ様は一切攻撃してきません。さらに、テオには残り二分になった段階で、移動を制限。その場で動かないで頂きます」
あまりのハンデに会場がざわつくが、舞台にトムが白いローブを着て、愛刀を腰に差した完全武装で現れた。
「ではここで、テオ様の実力を見させていただきましょう。お相手は、最近アカデミーに転校してきたトム・ヘイカー殿です!【剣聖】に引き分けた彼と戦って頂きます」
トムは、テオの傍まで行き二人は握手を交わす。
「久しぶりだねトム君」
「お久しぶりです。正直あなたとはやり合いたくないのですが、手加減して下さるんですよね?」
「ハハハハハ」
爽やかに笑うが、手を握る力が手加減はしないと雄弁に語る。それを感じたトムは顔を引きつらせる。
「君相手に手加減できるほど、僕は強くないよ」
そう言って両者が開始位置に着く。審判が手を上げ、二人とも戦闘態勢に入る。
「始め!」
審判の号令と共に、先ほどまで騒がしかった観客席は水を打ったように静まり返った。
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