決着
レーラーは杖を振り、トムの下に魔方陣を発生させる。トムは即座に飛びのくと、魔方陣から勢いよく水柱が噴き出す。水柱の奥に、怪しい二つの光が見えた瞬間、トムは水柱を一太刀で切り伏せた。上がった水柱が重力に従って滝のように落ちてくる。そこにレーラーの姿がいない。
「【レッドポール】」
姿を見失ったレーラーの声が頭上に響く。上を見あげると、トムの上を身をひるがえすように飛び越えるレーラーの姿。体で隠れていた天井部に魔方陣が描かれている。気づいたときには、火柱がトムを包む。
「兄さん!」
「ご自分の心配をした方がいいですよ?」
いつの間にか、マリーの後ろに立っていたレーラーが杖を振る。マリーの周りに小さな魔方陣が複数展開される。魔方陣から射出された鎖が、マリーの体を拘束した。
「【チェーンプリズン】」
拘束状態でもマリーは何とか杖をレーラーに向け、魔法を唱える。それは、レーラーと同じ魔法だった。しかし、飛び出た鎖はレーラーの体をすり抜ける。マリーは目を見開くも、自分の状況を理解した。
「私にいつ幻惑魔法を?」
「あの水柱は、とある幻獣を呼び出した副産物なのです。近くにいたトムはすぐに気づいたようですが、あなたは少し遠くにいましたからね。あの子の目を見てしまったのでしょう」
マリーは唇の端をかむ。全く痛くない事に、悔しそうに顔を歪める。
「そろそろ起きた方がいいですよ。いくらトムと言えど、眠ったあなたを庇いながら、本気の私と戦うのはきついでしょう」
「言われなくとも!」
そういうと同時に、マリーは躊躇なく杖を自分に向けて、魔法を唱える。
杖から跳んだ水弾がマリーの額を打ち抜き、体から力が抜け落ちる。
マリーが目を覚ますと、トムの肩に担がれていた。
「兄さんすいません!」
「気にするな!下ろすぞ!」
マリーの声が聞こえたと同時に、マリーをおろす。少し乱暴だったが、綺麗に着地する。
「マリー、行けるか?」
「ハイ、やられた分、やり返してやります」
マリーは即座に魔法を発動させる。
「【フリーズボックス】」
マリーの前に現れる立方体の氷。それは、レーラーの方へ飛んでいく途中で破裂した。同時に冷気が奔り、空気も凍らせ波のようにレーラーに迫っていく。完全にレーラーを呑みこんでしばらくすると、氷が砕け、無傷のレーラーが現れる。彼の周りを火の鳥を飛んでいる。
「【フレイムバード】初級の火魔法の一つですが、魔力を籠め洗練するだけで、上級魔法を防ぐこと
もできるんですよ」
「どこまでもレーラーらしいな」
「行きます!【アクアドラゴネス】」
水の竜がレーラーへと迫る。火の鳥がレーラーを庇うように前に出て龍とぶつかり、水蒸気は霧のように上がる。
「これは上級魔法を防げるんですよ?いまさらそんな魔法意味があるわけ・・・・・・!」
言葉の途中で、レーラーは足元に氷の箱が転がっていることに気づいた。
「凍れ」
マリーの絶対零度の視線をレーラーに向け、低い声で告げる。同時に箱が破裂し、周りの水蒸
気があるためあっという間にレーラを凍り付かせる。火の鳥がレーラの氷を解かすよりも先に、トムが火の鳥ごとレーラーを真っ二つに斬る。その愛刀は赤く染まっていた。
「おみごとです」
「やるだろ、オレの妹」
笑顔のトムを見て、レーラーも微笑み返す。直後に体が光に包まれ、杖とローブを残して消えた。レーラーの消失と同時に、部屋の中央に地上へ帰還するための魔方陣が出現する。しかし、トム達はその魔方陣をスルーして、壁に手を添える。すると壁の一部がスライドし、木の扉が現れた。
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