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 トムは、ランタンの柔らかい光に照らされた迷路を慎重に進んでいく。マリーはトムから受け取った紙とペンでここまでの道のりを記録している。そんな二人の前に、分かれ道が現れる。


「兄さんどっちに行きますか?」


トムはマリーの質問に答えず、ポケットの中からコインを一枚取り出し、無造作に投げる。床にぶつかったコインから、チリーンという澄んだ音が鳴り、迷路の中に響いた。トムは、その音をたどるように目をつむり、耳を澄ませる。


「こっちだな」


トムはそう断言すると、右の通路に入っていく。


「すごいですね。音の反響で構造を把握することが出来るなんて」

「探索魔法使えたら、必要ないからな」

「すいません……私が使えれば」

「気にすんな。マリーの魔法は支援魔法に回復魔法、高火力の攻撃魔法も使えるんだ。ここまで心強い光栄はいないよ。前に一緒に潜った時より、魔力の配分もうまいしな」

「そうでしょうか……」

「マリーは上を見すぎだな。叔母様も母様も魔法に関しては超人の域だ。お前はそれだけの魔法がつけてまだ成長途中なんだから、そう急ぐな。お前なら宮廷魔導士もゆめじゃないだろう?」

「私は兄さんのような探索者になりたいんです!」

「それは……まぁ、好きにしたら良いさ」


トムはマリーの言葉に微妙な顔をする。


「この先が出口みたいだな」


トムの視線の先に光が見える。次のフロアから漏れてきているようだ。


「マリー、お前が探索者になりたいなら、ちゃんとパーティーを組んで潜れよ」

「え?でも兄さんはソロで潜ってるじゃないですか」

「俺とお前とじゃ、持ってる力の種類が違う。魔法使いはどうしたって、敵の注意を引き付ける前衛が必要だ。それに俺だって、ずっと一人だったわけじゃない」

トムは出口に向かって歩き、マリーもそれに続く。マリーはトムの背中位に問いかけた。

「あの人はどうしてるんですか?」


マリーはある男を思い出す。自分より魔力量で劣り、ろくな魔法教育を受けていないにも関わらず、巧みに魔法を操りトムの隣に立っていた唯一の兄の相棒。


「あいつは死んだ」


マリーはトムの返答に目を丸くする。


「じゃああの噂は……」

「あぁ、本当だ」


マリーが以前耳にしたトムの噂。それを聴いたときには、兄さんがそんな事するわけないと

一蹴した話だ。


「あいつは俺が殺した」


そう言い放つトムの手は腕の血管が浮く程、強く握りしめられていた。



最後まで読んで頂きありがとうございます!

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