一時間目・魔物戦闘学
ダンジョン探索の死因で一番多いものは、魔物との戦闘での死である。。もっと正確に説明するなら、疲労による戦闘不能、もしくは撤退不可能な状態に陥ることだ。そのため探索者には、体力に余裕があるうちに撤退する判断をしなければならない。しかし、撤退は依頼失敗を意味し、報酬がもらえない。そのため、無理に突き進む探索者も多い。
「マリー!ハウリングバットを頼む!」
「兄さん!右からガイアウルフ、三匹来てます!」
マリーは水の玉で蝙蝠を落としながら、常時展開しているサーチに引っかかったオオカミの数を報告する。トムは目の前の盾持ちゴブリンを盾ごと蹴り飛ばし、壁に打ち付ける。すぐに右を振り向き、地中から飛び出してきたオオカミを切り伏せる。
「マリー魔力!」
「まだいけます!」
トムは、マリーからのバフを受けながら、次々と魔物を倒していく。
「やっぱりトムはすごいねー♪」
マリーの肩に乗るリルイが目を輝かせながら、トムの無双ぶりを眺める。
「相手がゴブリンなどの低級とはいえ、あの数でしたからね」
トムとマリーが戦闘を始めて二分程経ったが、200程いたモンスターもその数を減らし、残り30ほどになっている。
「普通なら入った瞬間に撤退だねー♪」
トムがゴブリンを切り捨てると同時に、マリーに向かって叫ぶ。
「退くぞ!退路作れ!」
「ハイ!」
トムの撤退の合図を聴いたマリーが、下がるトムを魔法で援護する。安全圏まで引いたトムは、カバンから水筒を取り出し一口飲む。
「ありがとうマリー。魔法制御がうまくなったな」
「いえ、そんなことありません。兄さんだってあれだけの数相手にして、生き一つ上がってないじゃないですか」
トムに褒められ、頬を染めて照れるマリーの肩から、リルイが飛び立った。
「なんで撤退したの?まだ体力にも余力あるよね?」
「このダンジョンは【条件クリア型】だからな、層ごとに決められた条件をクリアしないと次にいけない」
「へー!ここのクリア条件は?」
「一定数のモンスターを残しての一時撤退。今回は俺に難易度合わせたからこんな数だけどな」
「じゃあこのダンジョンって難易度変化の特性持ちなんだ!」
リルイが珍しそうに周りを見渡す。本来ダンジョンの難易度は固定であり、変化しない。しかし、稀に侵入者に合わせて難易度が変わるダンジョンが存在する。そのほとんどは、危険なため、ヘイカー家や他のダンジョンを管理している者たちによって、破壊されているためとても珍しい。
「条件クリア型で、なおかつ特質持ちはこのダンジョン位だな」
そう言って、トム達はもう一度第一階層に入る。そこにいたはずのゴブリンたちがいなくなり、次の階層への階段が出現していた。
「毎度のことながら、どうなってんだかな、このダンジョンは」
「でも、そこが好きなんですよね?」
「まぁ、そうだな」
トムは笑いながら階段を下る。すると、細い一本道が現れた。左右にそびえる壁は天井にくっついてるのではと思うほど高く伸びている。
「こっからがめんどくさいな」
「そうですね」
「一本道?」
この階層知っているトムとマリーは渋い顔をし、リルイは小首を傾げた。
「さて、二時間目は【迷路】か」
トムは、カバンの中から数枚の紙とペンを取り出し、マリーは腰に付けたランタンに火を灯す。三人は暗い一本道を進みだした。
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