レクチャールーム攻略開始
トムが机に向かい、リルイを肩に乗せながら、うず高く積まれた書類に目を通していた。メイリーが淹れた紅茶を啜っていると、そこにマリーがやってきた。
「兄さん何してるんですか?」
「あ、マリーちゃん!」
部屋に入ってきたマリーの方へリルイが飛んでいく。笑ってリルイを受け入れたマリーは、トムの机の上を見る。そこにあったのは塔のようになった暦表だった。
「明日、【講義室】を攻略するからな。暦を見返してる」
「明日の階層内容の予想ですか?」
「あぁ、あそこは日によって階層が入れ替わるからな。最後に潜った時から何日経ったか計算してる」
「でも兄さんが最後に潜ったのって……」
「五年前だな」
「だからこんなに、ところでこの暦表の所々に血文字みたいなのが書いてあるんですけど」
そう言ってマリーが手にした暦表には、所々血で滲んでおり赤文字で、「どこ」や「なぜ」などの言葉がホラー調に書いてあった。
「メイリーが何故か持ってたらしいから、貰ったんだ」
「メイリーさんが……なるほど」
マリーは、トムがいなくなった後のメイリーが幽鬼のようにフラフラ歩く様子を思い出し、納得した。
「兄さん、私も攻略について行っても言っても良いですか?」
「別に良いけど、なんでだ?」
「久々に兄さんと一緒に潜ってみたくて」
マリーは手を組み、トムを見る。トムは、マリーの頭に手を置いて撫でる。
「分かった。マリーがいると助かるしな」
「ありがとうございます!兄さん!」
マリーはトムの返事に、跳ね上がるほど喜んだ。そのまま、明日の準備をすると言ってスキップする勢いで、部屋を出て行った。
「良いのトム?マリーちゃんにはダンジョン潜ってほしくないって言ってたじゃん」
マリーの肩から、トムの頭に戻っていたリルイが訊ねる。
「マリーからのお願いはなるべく聞こうと思ってな。ダンジョン探索で構ってやれなかったし。それに、【知恵の塔】を攻略したらまた忙しいからな」
トムは、暦表に向き合ったまま答える。
「早くパパさん見つけないとね」
リルイの言葉に、トムの眉がわずかに動く。そして、思いっきり腕を伸ばし、イスの背もたれに上体を預ける。
「本当にな。どこの世界に子供とのかくれんぼで、古代迷宮に隠れる父親がいるんだか」
息を大きく吐いて、イスからベッドへ移動して横になった。
翌日、トム達はアカデミーの東端にある【講義室】に向かっていた。立ち入り禁止と書かれた立て札と、張られたロープを潜り抜け、洞穴の入り口にたどり着いた。
「荷物確認したら潜るか」
「はい!」
トムは背負ったバックパックをおろし、中身を確認する。腰に差した投げナイフや愛刀といった装備を確認する。マリーも動きやすい軽装、すぐ抜ける位置に差した杖や副武器、魔道具を丁寧に確認し、リルイも二人を真似て自分の身だしなみを整える。
「確認も終わったし、行くか久々の【講義室】!」
「はい!兄さん!」
「おー!」
トムを先頭に洞穴に入っていく。ランタンを腰に下げ、入ってすぐの所にある階段を下っていく。途中でトムが立ち止まり、耳を澄ませる。
「杖抜いとけ」
「分かりました」
マリーは杖を抜き、トムは刀を抜く。そして階段を降り切った先をランタンの火が照らす。そこにはおびただしい数の蝙蝠やオオカミ、ゴブリンなどの魔物がいた。その様子にトムの口がわずかに微笑む。
「やっぱり今日の【時間割】は、【魔物戦闘学】からか。マリーは援護を頼む」
「はい!行きます!」
マリーは返事と同時に無詠唱で魔法障壁を展開。トムに速度上昇効果や毒物への耐性を上げるバフをかける。トムは、満面の笑みで魔物の森に飛び込んだ。
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