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王族参観

今回のダンジョン学の授業は、いつもの講義室ではなく、大講堂で行うことになった。本来、学園で行われる式典で使われる大講堂で、授業する事は無い。そもそも式典用なのだから、授業に向かないのだ。トムは、現在その原因となった人物と理事長室もにて相対していた。トムの対面に座るのは、コルン王、フィリー王妃、ララ王女。しかし、その後ろに立っている人たちに、トムは額の血管を浮かばせる。


「コルン陛下やフィリー様がお見えになられるとは思ってたけど、なんでオイゲンさん達までいるんだよ!」


王のい後ろに護衛のような顔をしている、この国の【八偉人】達を見る。


「護衛だよ、護衛」

「同じくー」

「私も」

「ワシは面白そうだから」

「同じく」


そこには【槍神】オイゲン、【剣聖】レベッカ、【大魔導】ティナ、【歩法老師】ゲイル、【影勇】タケルがいた。【八偉人】の大半が集結してしまっている。オイゲンなどは軍属のため護衛で通そうとしているようだが、後半二人と同じ理由なのは明白だ。そもそも国王の護衛と言っても過剰戦力が過ぎる。


『隠そうともしないのはそれはそれでむかつく』


トムは青筋をお浮かべながらも、今日の授業は座学であることを説明すると、明らかに落胆する。いまだ、ワクワクしているのは王妃や姫、ティナ位のものだ。


「授業後の放課後でしたら、俺の作った疑似ダンジョン使っていいですから」


トムのこの言葉に、落胆していた奴らの顔にきらめきが戻った。


「じゃあ、私は先に講義室に行くので、開始時刻までライラ理事長にでもアカデミーを案内してもらっていてください」

「もう行くのかい?」

「予想外の客がこんなにいるんじゃ席用意しないと」


トムは、偉人たちを見る。


「俺らは、生徒と同じところで構わねぇぞ」

「偉人が隣に座ったら、緊張で倒れますよ!」


トムはそう言って、大講堂へと向かった。




 大講堂に集まっていた生徒は、どこか落ちつかない様子だ。すでにここにいる全員が、コルン王の授業参観を知っている。


「ママママママ、マリー、本当に今日の授業に王族の皆様が来るのかなななな」

壊れたラジオのようになっているクロムの背中を優しくさする。

「えぇ、でも大丈夫よ、兄さんを見に来るんだもの」

「そそそそうだよね、大丈夫だよね」


マリーが周りを見渡すと、他の生徒も緊張しているのかガチガチだ。エリーゼやドレットは平静を装っているようだが、体が小刻みに震えている。講堂の扉が開く音がすると、全員がビクッと体を震わせて、立ち上がる。振り返ると、そこにいたのはトムだった。ホッとして、また座る生徒達にトムも罪悪感を覚える。


「悪い、あーみんなに連絡なんだけど、追加で【八偉人】の方々が何人かいるけど気にしないようにな」


その言葉で、固まっていた生徒たちがついに石化した。


「でも、見に来るのは俺だから、みんなは普通にしてたら大丈夫だから。礼儀とかにうるさい人も居ないからさ」


トムがフォローを入れるも焼け石に水といった感じだ。現在、トムのダンジョン学を受けているのは、貴族の三男などの家督を継ぐ可能性が低い者や、家から自立したい者、平民で継ぐ稼業も無い者だったりしているため、本来なら、王と会う機会など一生無いはずの者たちのため、この緊張も仕方ないのかもしれない。ちなみに、最初の授業で突っかかってきたような、貴族の子息は、疑似ダンジョン踏破の授業以降受講していない。トムが教壇で準備していると、王族と偉人たちが入ってきた。生徒たちは立ち上がり深々と頭を下げる。


「この場で、お辞儀など不要だよ。私たちが無理行ってきているのだから。いつもどうりで構わない」


そういう王の言葉に一応みんな着席はするものの、体は固いままだ。


「今日は、王族の方々も見えているから、この国の王に関わる授業でもしようか」


トムの言葉に生徒たちは首を傾げる。王とダンジョンにどんな関係があるのか見当もつかない。


「その前に、探索者について少し話しておこう。みんなは、探索者は騎士や魔法使いのように国に仕えることは無いと思っているかもしれないが、探索者でも宮仕えが無いわけじゃない。自国のダンジョンを管理するために、探索者のクランを雇っている国がほとんどだ。まれにダンジョン探索で名を挙げたものに爵位を与え、その貴族に管理させたるといったケースがある。この国では後者だな。なぜこの国は、探索者に爵位を与えたのか分かるか?」


トムの質問に生徒たちが悩む。奥を見るとララ姫やレベッカ、ティナも考えているようだ。大人たちはさすがに知っているので、トムの教師ぶりをニヤニヤしながら見ている。一人の男子生徒が手を挙げた。


「ダンジョンが他の国に比べて多いからでしょうか?」

「惜しいな。確かに、この国は比較的にダンジョンが多いがそれが理由じゃない。明確に貴族でなくてはならない理由があるんだ」


ララ姫が奥で手を挙げているのが見えた。トムが、ララ姫をさすと嬉しそうに答える。


「ダルケン様の偉業をたたえて貴族にした!」

「それも違う。親父のやったことは確かに偉業だけど、この国の利益になったわけではないから、爵位を与える必要もないんだよ。現に八偉人でも【歴史魔女】レイテリスは爵位を貰ってないからな」


クイズ番組の様相を呈してきたので、大人たちが大喜利を始める前に答えを言うことにした。


「答えは、エルヴェスト王城内にダンジョンがあるからだ」

「王城に?」


エリーゼの疑問ももっともだった。ダンジョンが王城の中にあるというのはいささか信じられないものであった。


「王城の下級ダンジョンは一般に知られていないが、その存在は別に秘密でも何でもない。名前を【シークレットベース】という。王城内のダンジョンを管理する以上王城を出入りしなくちゃいけない。頻繁に王城に出入りするのが平民の探索者だと色々面倒事が起こるからな」

「何でわざわざ王城に?」

「初代国王のニクセン・エルヴェストはもともと流浪の剣豪だった。とある宗教団体が召喚した邪神獣を討伐した後、復興やら、なんやらあってこの国の建国に至ったんだが、王としての務めに疲れて、王の身分を忘れられる場所を欲した結果、作られたのが【シークレットベース】だ」

「ダンジョンってそんな簡単にできるんですか?」

「ダンジョンは結構簡単に誕生する。しかし、それはどれも偶発的なものだ。意図して作ることが出来た人物は歴史上一人しかいない。大魔導師アルカナだ」


トムは【シークレットベース】についての説明をしていく。


「王城にダンジョンって危険じゃないんですか?取り壊したりしないんですか?」

「【シークレットベース】の内部にモンスターはほぼいないから、ダンジョンからあふれ出てくるという事は無い。そのかわり、あのダンジョンは多くのトラップが張り巡らされているんだが、【ニクセンの血】という、国王が代々継承する物があればそれは作動しない。だから、いざというときに、国王たちを守るシェルターとして使うんだ。だから壊さない」

「【ニクセンの血】ってどういう物なんですか?」

「それを知ってるのは国王だけだ」


そう言いながらトムはコルン王を見る。生徒たちもつられて、コルン王の方を向く。子供たちの視線を受けたコルン王は、柔らかく微笑んだ。


「ごめんね、こればっかりは教えられない。妻にも娘にも教えていないんだ。息子には、時が来たら教えるつもりだが、まだ教えていないよ」

「だ、そうだ」


残念がる生徒達に声をかけて、授業を続ける。、つつがなく進み終礼の鐘が鳴り、王族配信は無事終了した。






 放課後、疑似ダンジョンの前に、偉人と王族、護衛についてきていた近衛兵たちが集結している。トムは王と偉人たちに猛烈に抗議していた。


「何で、近衛兵にオイゲンさんの部隊とか、レベッカの騎士団とか、老師の弟子たちがいるんですか!」

「何度も言わせるな護衛だ」

「戦力過多でしょ!アカデミーをどんな危険地帯だと思ってるんですか!」

「何度も言わせるな必要戦力だ」

「はぁ、もういいです。じゃあ、あとは勝手に攻略してください」


トムの言葉を聴き、事前に打ち合わせしていたのであろう、チーム分けで順番にダンジョンに入っていく。今回は急遽、偉人用に調整してあるため、モンスターこそいないものの、性格の悪い罠のオンパレードだ。本来は王都その近衛用だたため少し優し目にしてあったのだが、偉人クラスの挑戦となると、温すぎるため改造した。そのため、トムは精霊術で魔力を使い果たし、使いグロッキー状態だ。そこにメイドの女性からお茶が差し出される。そのお茶を受け取りながら、ジト目でそのメイドを睨む。


「お前も王の護衛ってことで良いのか?セシル」


黒髪ロングの美人メイドは、にっこりと微笑む。


「えぇもちろんですよ、トム。私は王を守るためにアルカナ様に作られたのですから」

「【シークレットベース】のダンジョンマスターがほいほい外に出てくんなよ」

「トムが攻略してくれたおかげで、ある程度自由に動けるようになりましたから。それに、誰も来ないダンジョンは寂しいですから」

「まぁ良いけどさ」


貰ったお茶を啜りながら疑似ダンジョン眺めていると王たちが入るようだ。セシルを呼んでいる声が聞こえてきた。


「では失礼いたします。トム」


お辞儀して、王の下へ走っていくメイドの姿は、どこからどう見ても人間だ。


最後まで読んで頂きありがとうございます!

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