不穏な影
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伸びてくる触手をかわそうとするが、触手も軌道を変えてトムに迫る。仕方なく左腕を犠牲にして、触手を止めようとする。しかし、触手はトムの腕も頭も貫くことなく、上から降ってきた、白い巨腕に押しつぶされて消えた。トムが白い腕の持ち主に目を向ける。
「助かったよ、ポチ」
「ワン!」
そこにいたのは、八偉人の一人【守護聖女】セシリアの聖獣ポチだった。ポチはトムの感謝に嬉しそうに吠えると、顔をトムに擦りつける。トムがポチの頭を撫でていると、セシリアと同じく八偉人の【剣聖】レベッカがこちらにやってくる。
「トム!こっちは大丈夫?」
「アンデットはどこですか?」
「こっちのはアンデットじゃなかった。そっちは?」
「ノクティ男爵家は壊滅ね。使用人から男爵本人もアンデットに変わってた。セシリアを呼んでくれてて助かったわ」
「屋敷の浄化は終わりました。しかし、アンデットにされてしまうなんて、お辛かったでしょうに。
あちらで安らかに過ごせていると良いのですが」
セシリアは、沈痛な面持ちで空に祈る。
「アンデットじゃなかったって事は、そいつは何処に行ったの?まさか、トムが殺り損ねるわけないわよね」
「俺の相手は、これだった」
そう言って、トムはゴーレム核と魔石を見せる。
「ネクロマンサーを素体にした、人形ゴーレムだ」
「人形ゴーレムの製造は禁止されてるはずでしょ」
「間違いない、それも、魔法も戦闘もできる軍事用だ。レベッカ、これを解析できる奴に渡してくれ」
トムはそう言って、ゴーレム核などをレベッカに渡し、セシリアに訊ねる。
「貴族街に墓地は何個ある?」
「貴族街に墓地は一つだけです」
「そこに、眠ってるのは、貴族だけか?」
「いえ、国葬になった方は皆あそこに……まさか、先代偉人たちのご遺体を?」
トムの言おうとしていることに気づき、セシリアの顔が青くなる。
「俺の考えすぎなら、良いんだけど。一番厄介な可能性は潰しておきたい。何も出なかったら俺を罰してくれていい。墓地の調査を頼んで良いか?」
「分かりました。レベッカ!手伝っていただけますか」
「もちろん。うちの騎士団で行いましょう」
三人は今後の事を軽く相談し、その場は解散となった。セシリアの代わりに孤児院で待機していたメイリーと合流し、屋敷に戻る頃には、東から昇り始めた日が闇を払い始めていた。トムはメイリーに休むように言いつけ、自分は部屋に戻る。
「遅かったねー」
リルイが、ミニチュアの自分の家から出てくる。
「お前が居たらもっと楽だったんだけどな」
「ごめんねー眠かったんだもん!
「いや別にいいけどな、さて学校に行く準備するか」
「寝なくて良いの?」
「今寝たって、十分しか寝れねーよ。一日寝なくてもなんとかなんだろ。ダンジョンじゃ一日寝ないのはよくあったし」
「それもそうだね!」
「あ、そうだ、近い内【レクチャールーム】の攻略に行くからな。ついてくるだろ?」
「行く!【監視者】だもん!絶対行く!久しぶりにお仕事だー!」
トムは、腕を振り上げ喜んでいるリルイを見て、微笑んだ。ローブを脱いで服を掛け、制服に着替えた。
光がさす、白い部屋。並ぶ家具はどれも高級そうで、大きな窓からは街並みが一望できる。窓の手前には一人の青年がたたずんでいた。青年は整った顔に、さわやかな笑みを浮かべる。
「ひとまず計画は成功だね。もう一つの方は、どうなるかな?」
そういう彼の手には、アカデミー所有のダンジョンについて記載された紙が握られていた。
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