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昼食。トムのズレ

トムはエリーゼに掴まれたままマリー達に手を振る。


「よ、ようマリー、なんか急にエリーゼが俺につかみかかってきてな」


やっと我に返ったエリーゼがトムから手を離す。マリーはエリーゼを見ると顔だけ笑顔を作り挨拶する。


「初めまして、トムヘイカーの妹のマリー・ヘイカーです」


名前を聞いたエリーゼたちが驚く。


「あなたがあの【氷傑のマリー】?」

「氷傑のマリー?なんだそれ?」


エリーゼの言葉に疑問を感じたトムが、詳しく聞こうとすると赤面したマリーが、トムに呼びかける。


「ににに、兄さんその方たちは兄さんの御友人ですか?」


マリーの態度に首を傾げながらも肯定する。


「あぁ、エリーゼと、ドレットと、リコだ」


トムが順に紹介しそれぞれ挨拶を済ませて食堂のカウンターに向かう。


「あらぁ、トムじゃない。大きくなったわね」

「マゼルおばちゃん!まだこの食堂やってたのか」

「えぇ、また会えてうれしいわ、何食べる?」


マゼルとの再会を喜ぶトムはある事を聞いた。


「アレはある?」

「あぁー、アレはもうやってないのよ。でも、せっかくトムがいるんだし作っちゃおう

かしら」


無いと聞いて、肩を落とすトムにマゼルが希望の光を見せた。


「じゃあ頼む!愛してるよ!マゼルおばちゃん!」


目を輝かせ、マゼルの手を握る。その様子を見た、エリーゼがマリーに耳打ちする。


「トムって、この学園にいたことがあるの?」

「えぇ、確か五年前の一時期、ここに通い詰めていたそうです」

「五年前って十一歳の時ってこと?何で?」


声を潜めながらも驚くエリーゼに、マリーは答える。


「兄さんのダンジョン巡りを許可される条件が、アカデミー所有のダンジョン【講義室】(レクチャールーム)の踏破だったんです。その条件を満たすために通い詰めていたそうです」

「【講義室(レクチャールーム)】って確か、今は進入禁止になってる?」

「えぇ、兄さんは無事踏破し、今ダンジョン巡りをしています」

「もう、いろいろ驚きすぎて疲れたわ」

「なら、私たちもご飯を頼みましょう。もう皆さんあちらに座ってます」


エリーゼが見ると、トム達がそれぞれの料理を手に席についていた。


 エリーゼたちが料理を持って席に着くと、ドレットが戦慄した顔でトムを見ていた。というよりも、その視線はトムの料理に向かっていた。何かと思ってみると、トムの皿には超大盛りに多種多様な甘味が乗っていた。まだそれだけなら良いのだが、それが五つトムの前に並んでいる。見ている方が胸焼けしそうな甘味の数々にドレットが口を開く。


「おい、トムお前、それ全部食うのか?」


トムは心底不思議そうに首を傾げる。


「当たり前だろ?頼んだんだから、いや~五年ぶりだぜ、マゼル甘味スペシャル」

「兄さんは本当に甘味が好きですよね」

「あぁ、ダンジョン探索中とかは食べられないからな、全員そろったなら食べようぜ」


トムは早く食べたいのかスプーンを構えながら言う。全員食事を取り初めた。ありえない速さで減ってくトムの甘味を見て、ドレットが負けじと自分のどんぶりをかっ込みのどに詰まらせるという事件もあったが、和やかに進む食事中に、ドレットが切り出す。


「トムは、なんかいろいろおかしいよな」


最後の一口を頬張ったトムがドレットを見る。


「どこがだよ」

「いや、サイクロプスとか、火竜とか、まるで弱いみたいに言うじゃねーか」

「弱いとは言ってないだろ、一般的には強いってのは知ってるよ。でも、俺からしたら楽勝だと言ったんだ」


トムは少し不機嫌そうに答えた。すると、マリーが付け足す。


「兄さんはもう五年、いろいろなダンジョンに潜ってますから」

「まじかよ!」

「じゃあ、午後の演習は【ダンジョン学】を取るのか?講師が見つかったらしくて、今日から開講らしいんだ。俺もちょっと探索者に興味があってよ。受けてみようと思うんだ」

「いや、兄さんは」


マリーを制し、トムは悪戯っぽい笑みを浮かべながら答える。


「もちろん、受けるさ」


エリーゼやリコも興味があったらしくダンジョン学を取る話を聴いたトムはさらに笑みを深めていた。それを見たマリーは兄の悪癖を思い出し、苦笑する。食堂に予鈴が鳴り響き、五人はダンジョン学の講義室へと向かった。


最後まで読んでくださりありがとうございます!

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