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この病院、治ります。ただしーー  作者: アル治


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7/7

第7話  ただしーーー

いつも読んでいただきありがとうございます。

最終話になります。

 結局、何もなかったことになった。

 報告書には、簡潔に書かれている。

 「異常なし」

 失踪者の記録は見つからず、

 証言も曖昧で、証拠もない。

 あの病院は——

 ただの古びた医療施設として処理された。

 それで、終わり。

 表向きは……

 マークスは、デスクに座っていた。

 ペンを持つ手が、止まる。

「……」

 報告書の最後の一行。

 異常なし。

 それを書き終えれば、この件は完全に終わる。

 終わる、はずだった。

「……なあ?」

 隣の同僚が声をかける。

「最近、変じゃないか?」

「何がだ」

「いや……その……」

 言葉を選ぶようにして、続ける。

「お前、さっき……」

 一瞬、間。

「……なんでもない」

 それ以上は言わなかった。

 言えなかった。

 マークスは、ゆっくりと立ち上がる。

 トイレへ向かう。

 鏡の前に立つ。

「……」

 映るのは、自分の顔。

 問題はない。

 普通だ。

 だが——

 目を閉じて、開いた瞬間。

 顔が、ほんのわずかに増えて見えた。

「……っ」

 息が詰まる。

 もう1度見る。

 元に戻っている。

「……疲れてるだけだ」

 そう言い聞かせる。

 水で顔を洗う。

 顔を上げる。

 その時。

 鏡の中の“何か”が、一瞬だけ遅れて動いた。

「……」

 もう見ない。

 マークスはその場を離れた。

 その夜。

 彼は、どこへともなく歩いていた。

 気づけば——

 見覚えのある場所に立っている。

 名前のない病院。

「……なんで……」

 来た覚えはない。

 だが、足が止まらない。

 自動ドアが開く。

「いらっしゃいませ」

 受付の女性が、そこにいた。

 いつも通りの微笑み。

「……俺は……」

 言葉が、続かない。

「ご安心ください」

 女性は、静かに言う。

「治ります」

 何を、とは言わない。

 だがその言葉に——

 マークスは、わずかに笑った。

「……ああ……」

 その笑い方は、どこか——

 人間ではなかった。

 案内される。

 廊下を歩く。

 足音が響く。

 カツ、カツ、カツ……

 1つ多い。

 部屋の前で止まる。

 プレートには番号。

 「A-19」

「こちらです」

 ドアが開く。

 ベッドが2つ。

 その1つには——

 すでに誰かが眠っている。

 マークスは、ゆっくりと中へ入る。

 ドアが閉まる。

 バタン。

 静寂。

 そして——

 ピッ……ピッ……という音が、部屋に満ちていく。

 その頃。

 受付では、新しい来訪者が立っていた。

「助けてくれ……もう長くないんだ……」

 女性は微笑む。

「はい。治ります」

「本当か……?」

「ただし——」

 その言葉の続きを、彼はまだ知らない。

 案内される。

 同じ廊下。

 同じ扉。

 その途中で——

 誰かとすれ違う。

 ふと、振り返る。

 その人物は、どこか見覚えがあった。

 だが、思い出せない。

 ただ1つだけ分かるのは——

 何かが、少し多かった。

 やがて、部屋に入る。

 ベッドが2つ。

 片方に、意識不明の患者。

 ドアが閉まる。

 ピッ……ピッ……

 静かに、“治療”が始まる。

 そして——

 翌朝、出てくるのは1人だけ。

完結。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

B級映画になったら嬉しいです。

ありがとうございました。

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