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この病院、治ります。ただしーー  作者: アル治


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1/7

第1話  この病院、治ります。ただし……

初めまして、よろしくお願い致します。

この作品も、B級映画を目指して書いております、よろしくお願い致します。


その病院の名前は、地図に載っていない…

正確には……載っていた形跡があるのに、誰も場所を説明できない。

 住所を調べても、ナビに入れても、途中で必ずルートが消える。

 それでも辿り着く人間はいる。

 “どうしても治したい病、怪我がある人間”だけが。

 深夜2時。

 郊外の静まり返った通りに、1台の黒い車が滑り込んだ。

 運転席から降りた男は、高級スーツに身を包み、顔色だけが異様に悪い。

 男の名は、レイモンド・クラーク。

 アメリカでも名の知れた投資家だった。

 だが今の彼には、金も地位も意味がない。

 ——全身に広がる原因不明の病。

 世界中の医者に見放され、残された時間は数ヶ月。

 そんな彼の元に届いたのが、この病院の情報だった。

「……ここか」

 古びた外観。

 灯りはついているのに、人の気配が薄い。

 自動ドアは音もなく開いた。

 受付には、白衣の女性が1人だけ立っていた。

「ご予約の方ですね」

 名前も聞かずにそう言う。

 レイモンドは一瞬眉をひそめたが、すぐに頷いた。

「ああ……金はいくらでも払う。治るんだろう?」

「はい。必ず治ります」

 その言葉には、一切の揺らぎがなかった。

「ただし……」

 女性は、そこで初めて少しだけ間を置いた。

「治療には条件がございます」

 通されたのは、特別室のような広い病室だった。

 中央にはベッドが2つ。

 ひとつは空。

 もうひとつには、誰かが横たわっている。

 呼吸器に繋がれた、意識不明の患者。

 年齢も性別も判らない。

 ただ、生きてはいる。

「この方と、今夜一晩をお過ごしください」

「……は?」

「それが治療です」

 レイモンドは思わず笑った。

「冗談だろ。点滴も手術も無しで?」

「必要ありません」

「ただ隣で寝るだけで治るって?」

「はい」

 沈黙。

「……で、デメリットは?」

 レイモンドは低い声で聞いた。

 この手の話には、必ず“裏”がある。

 女性は微笑んだまま答える。

「翌朝、この部屋から出られるのはお1人だけです」

 空気が、止まった。

「……どういう意味だ」

「そのままの意味です」

 レイモンドの喉が鳴る。

「どちらかが……死ぬのか?」

「はい」

 即答だった。

「ふざけるな!!」

 レイモンドは声を荒げた。

「そんなものが治療なわけ——」

「ですが」

 女性は淡々と続ける。

「これまで、この方法で治らなかった方はいません」

 その一言で、部屋の空気が変わった。

 レイモンドは息を呑む。

「……全員、治ったのか?」

「はい」

 視線が、ベッドのもう1人へ向く。

「……そいつは?」

「本日の“患者様”です」

 患者様。

 その言い方に、違和感が残る。

「選ぶことはできないのか?」

「できません」

「部屋を変えることは?」

「できません」

「途中で出たら?」

「——その時点で、どちらも助かりません」

 逃げ道は、ない。

 レイモンドはしばらく無言で立っていた。

 呼吸器の音だけが、規則的に鳴る。

「……本当に治るんだな?」

「はい」

 長い沈黙のあと、彼はゆっくりと椅子に腰を下ろした。

「いいだろう!」

 決断は、あまりにも早かった。

「どうせ俺は死ぬ。だったら——」

 彼は笑う。

 乾いた、壊れかけの笑み。

「賭けるしかない!」

 女性は1度だけ深く頷いた。

「それでは、良い夜を……」

 ドアが閉まる。

 レイモンドと、意識のない“誰か”だけが残された。

 時計の針が、ゆっくりと進む。

「……なあ」

 レイモンドはベッドに近づき、声をかけた。

 返事はない。

「聞こえてるわけないか」

 だが、その時。

 ピクリ、と指が動いた。

「……?」

 レイモンドは目を細める。

「今、動いたか……?」

 次の瞬間。

 心電図の音が、一瞬だけ乱れた。

 ピッ——……ピ、ピッ……

 そしてまた、元に戻る。

 レイモンドの背中に、冷たいものが走った。

「……気のせい、か」

 そう呟いた時。

 ベッドの上の患者の口元が、わずかに歪んだ。

 笑ったように見えたのは——

 気のせいだったのか。

 時計は、ゆっくりと“朝”へ向かっていく。

 この部屋から出るのは、1人だけ。

 そして——

 どちらが生き残るのかは、まだ誰にも分から

ない……

1話読んでいただきありがとうございます。

今後もよろしくお願い致します。10話以下でまとめる予定です。

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