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墜星のイデア ~生まれついて才能がないと知っている少女は、例え禁忌を冒しても理想を諦められない~  作者: イサキ
第4章 魔法都市メルリナ

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7

「二手に分かれましょう」


 予め用意されていた宿へ到着してすぐ、シルフィは全員を自室へと集めそう提案した。


「ついてくると宣言したのは私ですので、精霊科の皆様がどのように行動されても文句を言うつもりはありません。ですが、全員が雁首揃える真似は魔力探知に引っかかるリスクがあると思います」

「でもさ、シルフィ。大図書館への入館許可は取れてないんだよ?」

「そこは私の権限と、あまり気は進みませんが植物科の『導師』に依頼します。先の学科対抗戦で気になることができたと言えば説明がつくかと」


 勝手に同行しているだけで、シルフィの所属は植物科だ。

 ライネの言う通り、精霊科という括りで施設の使用許可が下りないのであれば、シルフィまで一緒になって動くメリットは少ない。


「別に止めはしないけど、禁忌指定書籍への閲覧許可が下りるとは思えないけど?」

「禁忌指定書籍!?ほんとにあるのそれ!?」

「むしろ無いほうが不自然でしょ。魔法使いの世界において悪影響を与えると認定された書物なんて、処分するより人知れず保管するほうがいいに決まってるわ」


 禁忌指定書籍とは、ホムラの説明通り携帯すら禁止されている書籍の総称である。 

 危険極まりない魔法が書かれていたり、あるいは事実無根の出鱈目が偶然危害を加える魔法に変質していたり。

 理由は様々だが、少なくとも閲覧することで不利益を被るのが確定している書籍が禁忌指定されている。


「…………そこに、精霊にまつわる書籍があると知っているんですね」

「まぁね。何回か見に行ってるし、そういうのが得意なだけ」

「ホムラちゃんは魔力隠匿が抜群に上手で、王都メルリナの魔法使いでも見破れないくらいなんです」


 どこか誇らしげにライネが説明するので、ホムラは少しやりずらそうにしつつもこう口にした。


「変に推測されても困るから先に言うけど。わたしが大図書館への侵入経験があるの、全てチョコが理由だから」

「チョコ先輩?」

「列車でも話題に出ていた、歴史科の二回生、ですよね?」


 学科対抗戦に出場していたからか、サレンだけでなくシルフィも顔が分かるらしい。

 ホムラは一つ頷くと。


「ホムラの家、フォルワ家は代々文学科に属する魔法使いの一族で。主に蔵書管理などを手掛ける仕事を任されてる。灯台守を図書館に限定させた感じね」

「司書ってこと?」

「少し違うかな。あくまで管理に特化してたから、他の業務はさほど関わってない。いわゆる中流階級の魔法使いってところね」


 大図書館に保管されている書籍の管理は、まず一介の魔法使いでは関わることのできない仕事である。

 だが、ただそれだけを任されている立場は、安定はしているが発展はしずらい。

 まして逸脱した行為が許されていないとなれば、単純作業と表現して差し支えない内容だ。


「チョコは例に漏れず問題児で、精霊科に来た表向きの理由はそれなんだけど」

「実際は違うの?」

「チョコは歴史科の『導師』に勧誘されて、精霊科の情報を流す間者をやらされていた。あくまで対面上は魔法統括局へ情報を送りながら、本命の情報は歴史科の『導師』にのみ渡してた」


 歴史科の『導師』。

 本校での入学式の際、サレンを殺そうとしてきた一人がそうであり、どこか修道服に似た格好をしていたのを覚えている。


「問題は、歴史科の『導師』は『教会』から派遣された人間ってこと。あくまで魔法統括局への出向扱いだけど、実質立場としては『教会』のままだった」

「ですが、列車の中では理由は知らないと…………」

「ここまでは単なる外付けの情報。悪いけど、チョコがどうして歴史科の『導師』の小間使いをしてるのかは本当に知らないから」


 それでも、与えられた情報を整理すれば、自ずと答えは一本に絞られる。


「チョコ先輩は、その歴史科の『導師』に協力する見返りとして、『教会』から何かを貰おうとしてたってこと…………?」


 信じられないが、仮にそうならサレンへの献身も説明はできる。

 最も近い位置で序列持ちの精霊の力を分析し、その情報を対価に『教会』と交渉する。

 単なる善意だったよりも遥かに納得がいく動機だ。


「じゃない?わたしは単に目障りで叩き潰す前に、ライネに少し調べたらって言われて」

「それで、何度か大図書館へと行ってたんです。ウチもその、どうしてそうしてたのかまでは分からなくて…………」

「調べて分かったのは、この手の情報戦は他でも普通にやってて。チョコがやってること自体もさほど珍しいことじゃないってこと。で、それをコイツも裏で把握してたこと」

「ま、まぁ、なんじゃ。チョコ氏の魔法の性質から、検索用の魔法具が多く必要なのは知っておったからの」


 ホムラが指さした先では、何故か顔面がボコボコにされ縄で縛られたトアがいた。

 なんだか可哀想と思えてしまうが、現状サレンとシルフィは近づくことすらできていない。


「それが常時稼働しておるとなれば、そうする理由があると推理するのが自然なことじゃろうて。ついでに言うならば、チョコ氏の魔法具を作成したのはトアなのでな」

「ですので、皆うっすらと距離を取ってたんです。その、変に重要な情報を手にしてしまうと、チョコさまが危険に晒されるかもって…………」

「それがなくても、何してるか分かんない奴と関わる気にはなれない。シュラは例外だったけど」


 そして今、チョコは行方を晦ませており。

 恐らく、いや確実に大図書館のどこかに滞在している。


「魔力の流れを追いかけたら、チョコが定期的に大図書館に来てるのは確定。で、大図書館の管理人は歴史科の『導師』。懐古派の一人にして、『教会』出身の魔法使いってなれば、集めた情報をどうするつもりなのかも容易に想像できる」

「そして、今一番大きな情報は、サレンちゃんと契約したロアの情報」


 シルフィの呟きにホムラは力強く頷く。


「このタイミングでユダが精霊と契約して、行方を晦ませた。もしこれとチョコの失踪と関係があるんだったら、もっと上で指示出してる奴が尻尾を出す可能性が高い。わたしらの最終目標は、そいつをとっ捕まえてユダへと続く手がかりを確保することよ」

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☆☆☆完結済の過去作はこちら☆☆☆
異世界に転生したら最強になって無双できるんじゃないんですか!?
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