エルゼのやるべき事
ラクトとガイウスはそのまま2人を置き去りにしてその場を後に街へと戻る。
「な、なんなのよアイツら。というか何か今の力。アレ魔法じゃないわよね?」
「お兄ちゃんのは魔法でも何でもないただの錬金魔法だよ。」
「錬金魔法!あ、あれが?いやアレが錬金魔法って、さすがに無理があるんじゃ…」
「それよりもエルゼが残していったこの記録読もう。正直コルデリアと一緒に見たくはないんだけどね。」
「それはお互い様。本来の目的が台無しだよ全く。エルゼを亡き者にしたら私が数少ない魔法使いの中で優れている者に成り変わったというのに…」
「またそんな無意味な事を…私以外にも魔法使いはいるでしょう。」
「身近に強い奴がいるって意味ではあなたが最適解なのよ。」
「またわけのわからない事を……でもいい?次また同じような事をしたら私があなたを殺すからね。」
「…ふ、ふ〜ん!そ、そんな事あなたにできるのかひらね。」
「声上擦ってるよ。動揺しすぎ。」
「ど、動揺なんてしてにゃい!」
「噛んでるし。」
「噛んでない!」
そう言い合いしながらエルゼが残した魔法陣に手を触れるマーシャ。
そこに浮かんでくるエルゼの姿。
姿形はモニター映像の様にして映り出しそのまま録画した物みたいに再生が始まる。
ぶーぶーブッブ!
[ありゃりゃ…ちゃんとメモリーの方は大丈夫なのかしらねコレ……でも地面にちゃんと陣がはれているって事は大丈夫なのよねきっと。……コホン!え〜ひとまず先に一言伝えておくわね。……し、死ぬかと思ったわ〜]
ああまず最初に言う言葉がそれなんだね。
[全くやってくれるじゃないのよコルデリア。殺す気もない爆破魔法を使ってこんな事をしてくるなんて、とてもじゃないけど正気の沙汰じゃないわね。]
何で私怒られてるのよ。
てか何で殺す気がないとそんな事言われなきゃならないのよ。
コイツも似たような事を言っていたし。
私本気で殺すつもりで魔法を放ったんだけどな。
[さてさてひとまずコルデリアに関しては置いておいて……何で爆発で死ななかったというような顔をしているかもしれないけれど……あっそもそもコレ2人に見られているかどうかもわかんないわよね。もしかしたらラク君達が見ちゃってる場合があるのか……いやそもそもコレは魔法使いにしか見れないから別に大丈夫か。ああでもでも他の魔法使いとかに見られたらどうしよう。]
ぜ、全然本題に入らない。
ぜ、全然本題に入らない。
[まぁこんな事を話してても仕方がないか。ひとまず2人が見ている程で話すわね。……コルデリアが私に爆発魔法をかけた事に関してから話すのだけれど……あっ違うか正確的にはマーシャの方になるか…まぁどっちでもいいんだけど、それに関して多分コルデリアは命令されてコッチに来たんだよね。僅かに感じたあの人の魔法の力…あなたの爆発魔法に付与されていたわ。]
「え?じゃあコルデリアは自分勝手でここに来て私を殺しにきたわけじゃないんだ。な〜んだツンデレってやつなんだね。」
「ちょっと!変な解釈はやめてくれるかしら!」
[はいはいそこ。多分今どうでもいい事で言い争ってるみたいだから静かにしてね。今私が話してるんだから。」
記録魔法陣にまさかの注意された。
記録魔法陣にまさかの注意されたわ。
[それで爆発されて生き残ってるならとっとと顔を出せよと話にはなるけれど…残念だけど私は行く所ができてしまったわ。正直行きたくはないのだけれど……ここからは私個人の問題になるし…コルデリアを消しかけた奴も会う必要がある。]
「……え。」
「コルデリア。」
[というわけだからコレから2人はどうするかちゃんと話しあって決めておきなさい。しばらく私に連絡はしない事…居場所を特定されたら元も子もないからね。]
「何でそんなことまで知って…」
「ふん。大体そういう事だろうなとは思っていたけれど…まさかコルデリア故郷から追われてきたの?それで私を始末すれば話がどうのこうのと言われたわけ?」
「ち、違うわよ!私はあなたが私を捨てて勝手に故郷から出ていったのが気に食わなかっただけよ。まだ勝負すらちゃんと決着つけられていないというのに…」
「その前に私を殺したら意味がないんだけどね。」
「だ、だからそれは!」
「はいはい。とりあえずまだ記録が残ってるからエルゼの話の続きを聞こう。」
[それとあの土壇場でどうやって、私が消えたと言うのも話しておかないといけないね。あの場で爆発が起こったのと同時に私はあるワープ魔法を使ったのよ。上手くここから掛け離れた場所へ移動する事になったんだけど……とりあえずは無事だという事だけを伝えておくわ。だからコルデリアは気にせずにコレからの自分を見直していってちょうだいね。]
「な、慰められた!私よりも弱い魔法しか使えない人に慰められた!」
「………」
別にエルゼは弱い魔法しか使えないわけじゃない。
ただ魔法が使える余力を残すようにして弱い魔法を使ってるだけにすぎない。
私もコルデリア同様で同じ事を言っていたけれど……やたらと仲間を庇う魔法に拘ってるんだよね。なんでだろう。
[じゃあ私は色々と準備をして旅に出るからあなた達また会う事があればその時は立派な魔法使いなってる事を期待しているわよ。]
ブン!
そう言って記録が残された魔法陣は紋様と一緒にうっすらと消えていきその場にはただの土で覆われた地面でしかなくなった。
「正直もっと3人で話し合いをしておくべきだったけれど…エルゼがコルデリアの為に出ていくなら仕方がないよね。」
「うっ……なんだろうこの罪悪感は…悪い事をしていたのは間違いないんだけど…やたらと心が痛む。」
「慣れない事をするからだよ。……さてじゃあ私も街に戻ろうかな。」
「え!ちょっとちょっと!私をおいてどこにいくわけ!」
「街に行くんだよ。まだ用事が終わってないからね。」
「用事?用事って何よ。私がここに来た事よりも大事なわけなの!」
「まだ約束が果たされてないから街に行くんだよ。……あっついでだからコルデリアも一緒に行こうか。どうせ宿無しなんでしょう。」
「うぐっ!し、仕方がないわね。特別に私がついてってあげる感謝しなさいよ。」
「ねぇそういうめんどくさい所マジで直した方がいいよ。幼馴染だから別に気にしてはいないけど側から聞いたら何だコイツ?ってなるからね。」
「べ、別にいいじゃないのよ!って!あ!置いてかないで!」
エルゼを失ったとばかり思われていたマーシャ。
しかしそれはコルデリアがちゃんと魔法を加減していたということもありまたエルゼは魔法の防御もして無事に神殿から脱出されていたというのがわかった。
そしてまたコルデリアの問題でエルゼは1人単独行動を起こし自分達の故郷にいると思われるコルデリアを唆した奴を倒しにいくと決意する。
………ラクトのアトリエ
「た、ただいま。」
「あ!お兄様おかえりなさいませ!よくご無事でなによりです。ご飯にします?お風呂にします?そ・れ・と・も……わ・た・し?っあだ!」
「古典的な誘いはやめろ。というよりどこで覚えたそんな言葉。」
「ぶすーーー!!たまには妹の我儘を聞いてもいいじゃないですか!」
そういいながらセピリアは痛くもない連続パンチを俺の胸にポカスカと叩いてくる。
「はいはい。後でちゃんと相手してやるから今は風呂に入らせてくれ。」
そういいながらラクトはポカスカと叩いてくるセピリアをおしのけ浴室へと向かう。
「もう!帰ってきて早々冷たいんだから。」
「………なぁいきなりの質問をしていいか?ラクト妹。」
「はい?……ってあなたもいたんでしたね。忘れていました。」
「兄にご執心かよ。まぁいいや。今アイツタメ口で話していたが…普段のアイツはああいうなりなのか?」
「え?お兄様は私としか俺様ボイスをしゃべりませんよ?何を言っているんですか?」
「そ、そうか。」
なんだ俺様ボイスって…
「は!?もしかしてあなたもお兄様の俺様ボイスにハマったのでは!」
「いやそういうわけじゃないんだが……猫かぶってるアイツよりかはやっぱり今みたいな素の方が俺はいいなって思ってな。」
「………で、ですよね!!!」
「うわ!なんだ急に!」
「そうなんですよ!お兄様何故か周りを装う癖がありまして、自分自身を曝け出さないでんすよ。どうしてもっと今の自分を曝け出さないのか……いやそれがかえってギャップがいいといいますか。勿論普段丁寧な言葉を発してるお兄様もまた神なのですが…私はどちらかと言えば俺様系のお兄様の方がいいんですよ。なのになのに……何故お兄様は…」
「な、なんだか自分の世界に入ってしまったな。まぁアイツのそういった部分に思うところがあるんだろう。……俺からしてもそう思うしな。」
そう呟きながら周りを見渡すガイウス。
「ん?店番はお前1人だけか?ルミナやアリシアはどうした?」
「………は!?そう言えばそうでした!今お二方は…」
「あ?なんだもしかして何かやばい事でもあったのか?」
「い、いえそういうわけでは……でもでも今はとてもヤバいかもです。」
「あ?だから何がヤバいんだよ。」
きゃあああ!!!!
うわあああ!!!!
「な、なんだ!今の悲鳴は!」
「ああ〜やっぱりこうなってしまいましたか。」
「何かあったのか。確認しないとヤバいよなさすがに。」
「いえ確認したら恐らくあなたがどやされるかと思います。」
「は?どういう意味だよ。」
「そのままの意味ですよ。……今お二人は浴室にいるんです。」
「浴室?………あ。」
「察してくれましたか。そういう事です。」




