ラクトとガイウスのコンビ技…鍛冶師とアトリエ職人による作られた得物
こ、コイツ急に強気な発言を……いや待てよ。
以前に洞窟にいた時も確かタメ口になっていたような。
……成る程コレがコイツの本性か……いや今は関係ないな。
「ああそうだな。お前の言う通りこの状をどうにかしたい。でもなさっきもいったが俺には見えない物を鍛錬する事はできないんだよ。」
「やってもないのにか?」
「何?やってもいないだと?」
「ああ。ガイウスお前は今まで目に見えている武器や刃物といった物を鍛錬していたんだよな?」
「あ、ああそうだ。」
「じゃあその中でちゃんと向き合った物を鍛錬した事はあるのか?」
「……どう言う意味だ?」
「深く考えるなよ。ガイウスお前は今まで逃げてきた鍛錬をしてきてこなかったんじゃないのか?自分のやりたい様にやってきたわけじゃなく、鍛冶師として当たり前の事をしてきた。……けどそれは当たり前の事……言ってしまえばお前は逃げていただけなんだよ。」
「だから何を言っているんだ!」
そう力強く。
ラクトの言ってる意味がわからなかったガイウスはラクトの胸ぐらを掴み今にも殴りそうな体制を取る。……しかし。
「自分の満足の行く物を鍛錬した事はあるか?」
「!?そ、それは…」
その言葉にようやくピンときたのかガイウスは心当たりがあったかのような顔をして殴ろうとしていた拳が硬直する。
「俺がどうして、ガイウスの事を信頼してまであんなことを言ったと思っている。ここでなら俺とお前でならやれると思ったからだ。決してお膳立てをしたわけじゃない。……いやすまない。少しはしたかもしれない…けれどお前には自信を持ってほしいんだ。鍛冶師としてのガイウス・クルミトルが作る誇りのある品物を自信を持って作ってほしいんだ。」
コイツの言う通り…俺は自分の作る物に自信はなかった。
だけどルミナ達は壊れた装飾品や武器…刃こぼれした物を研いで欲しいと言われて…アイツらが満足のできる物を鍛錬した。
そして喜ぶ顔が見れて俺でも役に立ってたんだなと改めて自覚した。
コイツらに頼られるんだったらそれでいいじゃないかと…コレ以上何を求むんだとな。
……けれど違ったんだ。心の何処かで納得のいかない自分がいた。
何かが足りない。コレでいいのか?自分の満足する結果を得られたのか?もっと凄い物を鍛錬できるんじゃないのか?
そう思う時が頻繁に出てくる様になった。
だから俺は逃げたんだ。
そう思わない様にして隠れるようにして…自分の満足の行く鍛冶師としての錬金術を一旦保留にし…コレからのルミナだけの事を考えると…そう思っていたんだが…
「くっ!」
コイツが…コイツが現れてから何もかもが変わってしまった。
ルミナと一緒に冒険という道筋をコイツが停止させたんだ。
そのままコイツなしでいけばいいというのに頑なにルミナはコイツを必須という。
俺とアリシアはコイツの事が嫌いだ。
だから別に仲間になろうがなんだろうがどうだってよかった。
ルミナがコイツの事を呆れるまで待てばいい。
適当にあしらって、ちょっと仲の良い感じで振る舞えてしまえば後はどうとでもなる。
この神殿攻略だってそうさ…コイツを仲間に率いれる為にルミナのお願いでここまできた。
嫌だって断ればよかった話しだ。
だけどアイツはこう言った。
……
[ラクト君と一緒にいたら何か掴める事があるかもしれないよ]と…
そしてこうも言っていた。
[何か思い悩んでる事があるのなら彼に聞く事で改善されるかもよ]とも……それを聞いて腹が立った。
それならそれで試してやろうとも思ったが……俺にそういった考えは思いつかない。
馬鹿だからな。
結果……今俺は完全にキレてしまっている。
コイツの知った風な顔と話し方に苛立ちながらこの話の続きを俺は聞かざるを得なかった。
「作って欲しいだ〜いとも簡単にそんな事がいえるな。根拠なんて何処にもないのによ。」
「根拠ならある。俺はお前の未来を知っている。」
「何?俺の未来を知っている?」
「……いや違うな。こう言った方が1番いいか…お前の未来の今後のルミナに関わる一大事にお前の力が要になる。それが今俺がお前にしてやれる成長の糧としての道標だ。」
「!!!」
コイツそんな事を考えていやがったのか。
いや単なる思いつきでのデタラメを言ってる可能性がある。
それに乗っかるほど俺は馬鹿じゃない。
……馬鹿じゃないが。
「……チッその安い挑発乗ってやるよ。」
「ガイウス。」
「クソッタレ。時間がねぇ。早いとこ鍛錬始めるぞ!」
何かを吹っ切れたのかガイウスは俺の言葉に否応なく答える。
それに俺も少しホッとしつつ自分も得物を作る体制をとる。
てゅいーーん!
ヒュゴーーー!!
「ふぅあの子達ようやく話がつけたのかしらね。全く残り3分なんて時間じゃ足りないわよ。」
カチンココチン
バキバキ!
パリーン!
「本当そうだよ。でも明らかに悪いのはガイウスの方だけどね。」
2人は同時に3分という時間稼ぎを保とうと魔法を使ってリザードマンを足払いながらカバーをするが…予定の時間では…
「もう2分ぐらいは経ってるわね。」
「はぁーー!!とう!」
しゅいーーーん!
ピカーン!
カチンコチンカチンコチン!
「だね。でもコレぐらい余裕余裕。リザードマンの攻撃さえ当たらなければどうって事ないよ。」
「そうね。」
だとしても魔法の余力がずっと続くわけじゃない。
私が抱えている魔法が風の魔法と一緒に気配遮断魔法も使ってるから中々骨が折れるぐらいに魔力が減っていく。
マーシャ程私の魔法の力はそこまで威力はない。
だから早いとこしてちょうだいよ2人とも。
………
「いいかガイウス。俺の掌にだす光をお前は力目一杯叩きつけてくれ。」
「なに?掌に出される光にだけ打ち込めばいいのか?」
「ああ。何もない形でお前に掌を出すとは思うが…そこには何かがある程で掌をお前に向けて差し出す。」
「言ってる事はよくわからないが…ひとまずお前の掌の光に集中すればいいんだな。」
「ああ。ただし…打ち込む力はガイウスの腕次第になる。こめる力が強ければ光は消えその物体も粉々にになる。しかしバランス取れた力で打ち込めば…」
「粉々にはならずとある物体の得物が完成するというわけか?」
「ああ。時間的には3分かかる予定ではある。」
だけど、今のガイウスとの口論で役2分ぐらいは経った感覚がある。
となればスムーズにいくやり方では最早手緩い形になる。
だとするならば……
「ぶっつけでやるしかないよな。……いや最早丁寧にやる必要性なんて皆無だ。」
俺は掌をガイウスに向けて差し出す。
姿勢を低くしガイウスがハンマーで叩けるように地面に座る。
「ガイウス。悪いがやっぱりバランスなんて考えないでくれ…一回だけ…一回だけの打ち込みを頼む。」
「な、何言ってんだ!鍛冶師を舐めてんのか!一回だけで完成する得物なんてまずないんだよ。それを分かって言ってんのか?」
「当たり前だろう。だからお前に全部託すと言ってるんだ。」
「……お前何言って。」
そう。
最早丁寧差なんて関係ない。
俺の中にある錬金術…錬金魔法を上手く微調整すればいいだけの話だ。
つまり今から俺の中にあるアトリエとしてやってきた事を全部…何もない場所に具現化させればいい。
本来であればアトリエでやってこその装飾品や物を作るという工程が必要になるわけだが…今はそのアトリエがここにはない。
俺にしかできない昔先生から教わった1つの錬金魔法。
それを実現させてやる。
「さあ!始めるぞ!」
掌をガイウスにさしむけ俺は手の平一点に力を集中させる。
そして浮かぶ小さな光。
その光がだんだんと神々しく光っていき俺は頭の中で1つの得物を浮かばせる。
日本でよく戦闘とかで使われる武器。
その中でも銃や刀といった物がある。
だけど、ここではそれを具現化させるには時間がかかる。
だから俺はこう全ての工程を捨てて1つの重なったオリジナルのやつを生成させる。
「はは、アニメでみた時と似たような物を作るってなんだかワクワクするな。」
「あ?何か言ったか?」
「いや何も……よし。ガイウス目一杯ハンマーを振りおそろしてくれ。」
「お、おお!」
「ガイウス。ただ振りおろすんだけじゃなく、ちゃんと自分が今何の為に鍛冶師としての役目を果たすのかを考えて振りおろしてくれ。」
「分かってるって!」
ブン!
カン!
「お、おい!今俺の言った事完全に横流ししてるじゃねぇか。」
「そんなわけねぇだろう。ちゃんとお前の光ってる場所に振り下ろしたぞ。そら輝きが違うだろう。」
「……た、確かに輝き方が…赤く光って。」
そう俺は単に大きくハンマーを振り翳したわけじゃない。
ラクトに言われて俺は力強くハンマーを握りして、思いっきりハンマーを振り翳した。
側から聞けば思いっきり強く踏み込んだだけにしか思わないかもしれないが…俺はその瞬間に鍛冶師としての鍛治錬金術での力を込めて打ち込んだ。
そうする事で何もないと思われていたラクトの手の中にあるものは原形となって現れるという形で俺はその思いを込めた一撃を打ち込んだ。
ぐわん
ラクトの手の平でグニャっと蠢く何かはどんどんと歪な形となっていき赤く輝いた光は一気に眩くなり周り一帯に光輝く。
「な、なにこの光は!」
「うっ……ま、眩しい。」
リザードマンやマーシャそしてエルゼ達の動きが止まり全員がラクトとガイウスの方へ視線が注文を浴びる。
「よし!できたぞ!」
ラクトはガイウスと一緒に作った得物を真上にかざしながらたからかにその得物の名前を口にする。
「全てを薙ぎ払う武器。バハムートα!」




