2. 95日前_招待客を決めよう!
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がんばります!
「ジョアンナ。
招待するご令嬢のリストアップは出来てるか?」
「はい。現在婚約者がおらず、
年齢も適当なご令嬢を。
ざっくりではありますが。
これから殿下の元へ行き、
ある程度のご要望を確認した後、
再度選定し、
関係王族と担当大臣の実務担当者と相談し、
最終的には担当大臣にご報告上げる予定です。」
「了解。」
私たちの部署は、オージアス殿下の執務室と同じ階にある。
が、
離れた所に殿下の執務室があるので、
少し、いや、だいぶ歩かなければならない。
そう、だいたい10分位。
たかだか10分と思うのだが、同じ建物内。
しかも同じフロアなのに10分も歩く廊下って、
一体、どんだけ広いんだ!
と配属した時は思ったもんだ。
今では、良い運動だと思うことにしている。
切羽詰まってる時は、中々、憎らしい廊下なのだが。
「第三王子部ジョアンナ・カールストンです。
殿下にお目通り願いたい。」
殿下の執務室の警備兵に取次を頼む。
「確認してまいります。少々お待ちを。」
「どうぞ、お入りください。」
通された部屋の正面奥には、大きな窓があり、その前には立派な机がある。そして、そこに日の光を浴びて後光がさしているように座っているのが、私達、第三王子部の主であるグランチェス王国第三王子オージアス殿下である。
私に気がついた殿下は、話かけてくる。
「やあ、ジョアンナ。元気かい?」
「はい、殿下もご機嫌麗しく。
早速ですが、
本日は殿下のお好みの女性をお伺いしたく。」
と切り出すと、殿下の隣にいた侍従が吹いた。
「それは、ずいぶん唐突だね。
まあ、構わないよ。」
「ありがとうございます。」
「そうだね。
背の高さは、僕より少し低い位かな。
髪の毛の色は、ブルネット。
化粧はそんなに濃くなく、
香水もあまり付けてない、
しっかりとした聡明な女性。
これ位でどう?もう少し続ける?」
殿下の言葉を逃さないよう、私は必死に紙に書き続ける。
「いえ、結構でございます。
これ以上多くなりますと
選定に支障が出てしまいますので...。
それでは、私はこれで失礼いたします。」
「もう少しゆっくりしていっても、良いのに。」
「いえ。殿下もお忙しいと存じますので。」
「そう。またいつでも聞きにきて。」
「ありがとうございます。」
◇◇◇
「以上が、殿下のご希望でした。」
「結構、具体的だな。」
「そうですね。」
「ここから、ある程度殿下のご要望を加味しつつ、
絞り込みますか。」
今私は、先ほど殿下から聞いたご要望を参考に、リストアップしたご令嬢をさらに人数を絞り込む為に、陛下、妃殿下、担当大臣配下の実務者達と選定会議を行っている。
「背の高さは、殿下より少し小さいか。
“少し”とはいかほどだ?」
「とりあえず、殿下より大きくなければ、
よろしいのでは?」
「そうだな。」
「髪色は、ブルネット...。」
「茶色なら大きく外れていないだろう。」
「そうだな。」
「そうですね。」
「化粧が濃くなく、
香水もあまり付けていない...。」
「ご婦人は大体、
化粧も香水も結構つけているだろう。
どうするんだコレ?」
「まあ、度が過ぎなれば良いのではないか?」
「と言っても、リストからでは何とも。
しかも、王族のお茶会に呼ばれたとあれば、
普段付けていないご令嬢でも、
これでもか!って、
いう位盛ってきそうですが...。」
「とりあえず、この条件は、横に置いておこう!
次!」
「しっかりとした聡明な女性。」
「聡明の定義だが...如何とする?」
「女学校を出ている者、
家での淑女教育が行き届いている者...
あたりですかね。」
「ただなあ、これはいくらでもやろうと思えば
虚偽できるからなぁ。噂も粗方盛ってるし」
「この条件に全ての条件に合致するご令嬢は...
6人ですね。」
「少ない!」
「まあ、全て合致する必要はないと思いますので、
どれか一つでも当てはまれば良いのでは?」
「そうですね。」
「他に、こちらで条件を付けるとすればなんだ?」
「あっ、このご令嬢!
この前、王妃様が『あれは、ないわ』と
ボソッと言ってたので、外してもらえますか?」
「承知しました。何かあったのですか?」
「それがですね...。」
「このご令嬢は、この前、
第四王子と仲良く芝居を見に行っていたのですが、
どうします?」
「彼女のその他の条件は、どうですか?」
「ブルネットってだけですかね。」
「では、外しても良いのでは?
第四王子と遊びに出かけているご令嬢、
第三王子にぶつけた所で、
どう転がっても悲劇だ。」
「確かに。」
この後、家格や王宮内での派閥の調整、その他もろもろを加味し、選定の草案が出来上がった頃には、夜が明けそうになっていた。
ある程度出来上がったそのリストは、翌日各部署に一旦持ち帰り、各部で上長の承認を得たり、差し戻されたりを繰り返しながら、数日後、選定理由を付けて選定したご令嬢を、担当大臣に報告した。特に問題もなく、許可を得る事が出来たので、一先ず安心だ。
連日の徹夜で、目の下に隈が出来ていたし、肌荒れも気になったが、まあ、第一関門と呼べるご招待するご令嬢の選定が、無事に終わったのだ。良い事にしよう。