二通目
甘いものが食べたい今日この頃。
茶封筒に張り付けられたテープは剥がし辛く、俺はしぶしぶ普段使うことの無い鋏を手に取った。
あった。封筒と同じくらいの紙切れが一枚入れられていた。縁にクローバーが描かれた淡い緑色の便箋。
‘0303REDTREE@AA.COM’
ただそれだけ便箋の真ん中にしかし控え目に手書きで書かれていた。俺は二枚目を戸惑うことなく鋏を手に取り開封する。
‘0303REDTREE@AA.COM’
もう結果は分かっていた、ただ作業的に開封し続けた。中身は全て同じだった。俺はうんざりした、開封する前は現金が入っているのではないか? 誰かが誰かに宛てた手紙のやり取りを見られるのではないか? 検討はつかないものの何か重要な機密が書かれているのかとも思い馳せた。そんな過去の自分に恥じ入る。
俺はまたフローリングに横になった。まだ眠気が残っていた。思考がゆったりとして気持ちがいい。
あれがメールアドレスだったとして何処に、誰に通じているのだろう? 俺は使っていないメールアドレスを持っていたことを思い出した、パソコンのものだ。そこまで考えて再び眠りに落ちた。
目覚めた俺はつけっぱなしのパソコンで時間を確認した。午後三時を少し過ぎている。時間を有効に使いたいなんて思ってなどいない。だが眠った時間がいつも俺に喪失感を与える。パソコンからメールを送る準備をする。数回ネット通販で買い物をしたときに使ったアドレスだ。もし送ったとして、嫌がらせのいわゆる迷惑メールがきたとしても俺は困らない。
しかし、ここで一つ問題が生まれた。俺の本文は何を書けばいいのか?
沢山の同じ手紙、宛名はなかったが、個々に配るものだったのではないかと思う。あんな同じ内容の紙切れ貰って喜ぶやつはいない。それは確かなことだと俺は確信している。貰う人間はどんな人間だったんだろう。わからない、ただ行動しない人間には渡さないと思う。手紙に書かれたアドレスにメールが来て初めてスタートなのだろうと。
そもそもあの手紙の山は意図的だったのだろうか? あんな手紙よっぽどのもの好き以外拾わない、俺が拾わなければ全て道端の溝に落ちて雨の日に流れただろう。
文面を大して考えずに。
‘手紙を拾った’
ただのそれだけの文章、相手を詮索せず、様々な意味で解釈できる。送信した手に迷いはなかった。
それから一時間程たった。俺は部屋に棒立ちになっている無数の空ペットボトルをゴミ袋に放り投げて一段落着いたとき、着信が来ていることに気が付いた。
‘ありがとう’
それだけだった。あの手紙のアドレスにメールを送ることに感謝される。俺は返信をすぐさま考えた。
‘何か用だったの?’
そう送った。手紙について考えたが正解が分からない。ならいっそ手前にある疑問を解消させていくだけだった。
程なくして返事が来た。
‘私の手足になってほしい’
意味が分からず考え込む、ホラーっぽ表現だと俺は真っ先に思った。
続くと思います。