第6話 ココナッツの妖精の導くままに
そしてついに舞踏会当日。
私は緑の布に金の刺繍が施されたドレスに、アル様の瞳の色をした青緑の宝石を散りばめた装身具という、これでもか!と言わんばかりにアル様の色を強調した装いだ。
「私の色を纏う君が見れて嬉しいね」
今日もアル様が甘いっ。
そんなアル様は、水色のアクアマリンを各所にあしらっている。もちろん私の瞳の色だ。
そしてアル様にエスコートされて入場する。
会場中の視線が集まってくる。
こんなときは人間だと思わず、ココナッツだと思えばいいんだ。
丸いし。
ココナッツ、ココナッツ、リボンをつけたココナッツ、これは市場に山積みにされたココナッツ。
よし、落ち着いてきた。
私たちのあとにフェルディナント殿下とその婚約者様、そして最後に陛下と王妃様が入場されて舞踏会は始まった。
陛下は席に着くとぐるりと周りを見渡し、口を開いた。
「さて、ここで皆に発表がある。
本日をもって、第二王子フェルディナントを王太子に任ずる。
また、第三王子アルレリウスは自ら王位継承権を返上し、南の王領を治める大公となる。
また、隣接する領地を治めていたローデン伯爵より、健康上の理由により統治が難しいとの報告を受け、そちらもアルレリウスが統治することとなった。
あわせて、アルレリウスとミケラート家のヘカーディア嬢との婚約が成立したことをここに報告する」
発表のあとはアル様とのファーストダンス。
ダンスはとにかく最優先で練習に練習を重ねたからね。
なんとか、アル様に恥をかかせない程度には踊れたんじゃなかろうか?
緊張しすぎてほとんど記憶ないけど。
このあとはココナッツの行列、いや、貴族たちの挨拶を受けるんだった。
会話はアル様が受け持ち、私は隣で微笑みを絶やさず立ち続ける。
そして、ホルンブルグ公爵家当主を名乗る人物が、私たちの前に立った。
見た目は渋めのイケオジ。でも目が怖いよ、全然笑ってないよね。
「南の地にこのような可憐なお嬢さんが隠されていたとは。ぜひアルレリウス殿下との馴れ初めを聞きたいものですな(訳:田舎娘がどうやって王子をたらし込んだんだ)」
私の社交辞令センサーが発動した。
私は渾身の笑顔で返した。
「ココナッツのお導きですわ(訳:知るかボケ)」
イケオジの目が点になった。
これはなかなかレアな光景なのでは?
それもほんの一瞬、ホルンブルグ公爵は今度こそ本当に楽しそうに目を細めて私を見、そしてアル様に告げた。
「殿下はココナッツどころか素晴らしい真珠を見つけたようですな。大切になされよ」
「ええ、もちろん。彼女は得難い宝石のような人ですから」
その後王都では、ココナッツとポポイポラ地方伝統のスパイシーな料理がブームになった。
さらに、私とアル様の馴れ初めを元にした物語も、絵本や舞台となって人気を博していた。
家族に冷遇され市井に逃れ暮らしていたココナッツ姫が、ココナッツの妖精に導かれて王子様と出会い幸せになるというお話だそうだ。
しかもそのココナッツの妖精と言うのがココちゃん。
ココちゃんは縁結びの縁起物としても大ブームになった。
ポポイポラで私が住んでいた小屋の跡地には、いつの間にかどデカいココちゃんの像が建っていて、人気の観光スポットになっているらしい。
誰だ建てたの。
でも村外れで一人で暮らしてた変わり者の女の子が、領主夫人(予定)になって戻ってきても、皆は最初こそ驚いたもののすぐに、そういうこともあるよねとあっさり受け入れて前と同じように接してくれた。
ここの人たちのこういうところが好きなんだ。
だからここが有名になってココナッツも売れて、少しばかり恩返しできたみたいでうれしい。
それから、男爵家に婿入したカーサイス兄上からお手紙が来た。
内容は「我が領地でも何か名産品作りたいから、キャラクターの作り方教えてくれない?」だった。
「カーサイス兄上はこういう人なんだ」
アル様は笑いながら言った。
いつかカーサイス様にも会いに行ってみたいな。
あちらは北寄りの土地らしいから、ココナッツは珍しいだろう。
「ココナッツたくさん持って、会いに行きたいですね、アル様」
「そうだな。君のココナッツ割りの技を目の前で見せてあげたいものだな」
今日も私たちはココナッツに囲まれて暮らしている。
だって、ココナッツに導かれて出会ったんだもの。
これにて完結です。
最後までお付き合いくださりありがとうございました。
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