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いつか選択肢に辿り着くために  作者: 七香まど
三章 聖羅ルート攻略シナリオ
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90聖羅ルート 〈花恋〉黒バラの咲く夜

 わたくしは今日、舞衣子に連れられて隣町の有名なランジェリーショップに連れていかれた。


 そして、わけが分からないまま袋詰めにして持たされた三枚の布切れを持って部屋に戻り、夜になってからそれを舞衣子と共に開封することとなった。


「……こ、これは……!」


 大げさかもしれないが、わたくしには間違いなく戦慄が走った。なぜならそれはつい先月、舞衣子の部屋で見た下着と大変形が似ていたからだ。


 一枚目、赤色の下着は派手な色合いとは逆に装飾がそこまで派手ではない。シンプルに真っ赤で、普段使いには恥ずかしいけど、それ以上におかしな点は見受けられない。


 二枚目、真っ黒な下着は装飾が少ない。いや、少ないというのは間違いで、正しくは、本来布部分があしらわれている箇所が装飾となっているため、持ち上げるとほんの大事な一部を除いてほとんどが向こう側が素通しで見えてしまっていた。


 三枚目、白色の下着はわたくしの好きなフリルのついた下着だけども、横が紐だった。紐で大事な部分を支えるタイプで、それ以外は黒と同様向こう側がハッキリ見えている。


 そしてどれもが煽情的で、見ているだけで羞恥心に頭が爆発してしまいそうな代物だった。


「ま、舞衣子? あなたがこれらを身に着けるのよね?」

「何言ってるの? それらは花恋のために買いに行ったじゃん。サイズも花恋にピッタリになるようオーダーメイドよ」

「へ? わたくしの、ため?」

「そうよ、あのランジェリーショップって私の従姉が経営しているからさ、ちょっと融通してもらってね? 花恋のサイズってないからオーダーメイドしかなかったのよ。あ、お金はいらないわ、私たちが完全に個人で作った趣味だから」


 舞衣子が何か説明をしているような気がするけども、わたくしには目の前の三枚の布切れに動揺が隠せずにいた。


 これをわたくしが身に着けるの? こんな着けていても着けていなくても大差ない下着を?


「ちなみにどれが気に入った? フィーリングでいいよ、どれも霜月兄を落とすのには十分すぎるくらいだから」

「え!? 一颯……を?」


 そういえば前に下着のセンスがないって怒られたのだったわ、それで舞衣子がわたくし用の下着を用意したわけで、……でもさすがに攻めすぎてないかしら?


 自分がこれらを身に着けた姿を想像する。どれが一番マシかと言われたら……赤かしら? この中では比較的普通の形状をしているし、でも色があまりにも煽情的過ぎて下品に思われないかしら?


 そうなると、やっぱりフリルのついた白かしら? 透けているのは一旦目を瞑りましょう。これは横を紐で留めるタイプね、結んでもこれは簡単にほどけてしまいそうで、……うぅ、さすがに恥ずかしいわ。


 残った黒だけど、これはないわ。だって白よりもその、……布面積が小さいわ。


 こんな破廉恥な黒を身に着けて、一颯に見られでもしたら……。


「あ、想像しちゃったみたいね。ほら大丈夫、意地悪なあの子はここにいないからね」


 舞衣子に強く抱き締められて妄想を振り払う。いけない、またピンク色の妄想に思考を支配されていたわ。


「ありがとう、舞衣子。もう大丈夫よ」

「これくらいならいくらでも、で? どれが一番よかった?」


 黒で妄想していたなんて口が裂けても言えないから、赤か白で迷う。でもやっぱりわたくしらしくと思えば答えは決まっていた。


「白ね、どれもわたくしには似合わないと思うけど、どれかを選択するならこれね」

「似合わないとは思わないけど、そうだね、花恋らしくって考えたら白かもね、でも黒なら白のゴスロリに似合っていいと思うけどなあ。……うーん、本人の好みを直接聞いた方がいいかな?」

「や、やめて! そんなことされたらわたくし一颯の顔も見れないわ!」


 そんなとき、舞衣子のポケットからスマートフォンのメールの着信音が聞こえる。


 取り出してそれを確認した舞衣子が口の端をピエロみたいに裂けそうなほどに吊り上げて、わたくはしそれを見て戦慄した。


 舞衣子が嬉々としてどうしようかとしばらく悩んだ末、短い文章で返信したみたい。


「ね、ねえ舞衣子? 今のはどちら様かしら?」

「花恋の愛しの一颯王子様よ、私にお願いしたいことがあるんだって、だから借り二つって返信したの。ということで、霜月兄に直接聞くわ」

「やめて! そんなわたくしを辱めるようなことはしないでくださいまし!」


 わたくしの必死な説得と実力行使も、舞衣子の前には無力だった。ぺいっと投げられ、ごろんとベッドから落ちたわたくしが這い上がった頃には舞衣子が三枚の下着をそれぞれ写真に撮って一颯に送信していた。


「あ、……ああ」

「いやあ、楽しみね? これであの子が白を選んでくれたら喜ばしいことだよ」


 一颯からの返信が返ってくるまでの間、わたくしは祈り続けた。


 どうか、どうか一颯が黒だけは選びませんように! 白を選んでください。最悪赤でも構いません!


 やがて返ってきたメールを舞衣子が確認し、予想とは違ういたずら心にまみれた顔をした瞬間、わたくしは悟った。


「黒だって、この中じゃ一番やばいやつだ、霜月兄も男だねえ」

「あぁ、ああ……、それだけは……」

「あら? もしかして先ほどの妄想は黒だった? だとしたら結果オーライ、頑張ってね」


 三枚の中で一番際どく、手に持つことすら憚れるようなこれを身に着けろというのは、酷だとは思わないのだろうか? わたくしはすでに視線を別の所に反らして現実逃避に励んでいた。


「今度、霜月兄が一人でやってくるみたいだし、その時に着けてもらうからね」

「…………」

「逃げようとしても無駄だよ、最悪、花恋を拘束して無理やりにでも穿かせるから」

「…………」

「私のことを無視しようものなら、明日の部活は白を穿いてもらうかな。それで、あの子の前でスカートを捲ってあげる」

「お願い……やめてぇ」


 そんなことされたらわたくしの演劇部での威厳の何もかもが無くなってしまう。それに、それで一颯に幻滅でもされたら、わたくし、部屋に閉じこもる自信があるわ。


 もし無理やりなことになったら、隠れて短パンを穿いてやるわ。


「そういうわけで、もう一つの借りは花恋があの子になんでも一つお願いを聞いてもらえるようにしておくから、絶対に射止めるんだよ? あと、これらは当日まで私が管理しておくから」


 そう言って舞衣子は三枚の下着を持って部屋を出て行ってしまった。


 密かに処分すれば気付かれないだろうと思っていた作戦はあえなく破綻。


 ……どうしましょう? 今のわたくし、かなり詰みの状態?







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