43話:実践終了、そして初任務へ
今回も遅くなって申し訳ありません。
ディザスターとリミア視点の話を書いた後にクロト側のストーリーに戻ると、前回の話の内容を忘れがちになってしまいます……。
〜人間界〜
マーリンが教科担当を務める魔法実践の授業は、今回も不祥事ありの模様だった。
と言うのも、先程の"魔法弾"の実践では、またしてもミキが魔力を暴走させて狙いとなる的の殆どを消滅させてしまったからだ。
「えーっと……今の魔法は"魔法弾"ではなく、その強化系となる中級魔法に分類される"魔導砲"なのです。
威力も射程も段違いとなる、この魔法を打てるのは凄い事なのですが、あくまでこの授業では"魔法弾"を打って欲しかったのですよ……」
落ち込みつつも、さり気なく"魔導砲"の説明を簡潔に行うあたり、マーリンの教師としての意識は高いのだろう。
「すいません……まだ上手く魔力を制御できなくて……」
反省を交えつつ、申し訳無さそうにミキが謝った。
初級魔法である"魔法弾"を打つつもりで、中級魔法である"魔導砲"を打つというのは、もはや制御云々の話では無いのだが。
とはいえ、以前のように直ぐに制御不能状態に陥るのではなく、魔力を収束して指向性を付けて放出する事はできているので、多少の上達は遂げている事は窺える。
「まぁ、確かに膨大な魔力を制御するのは魔法工学でも長年の課題とされている程の難易度ですから、慣れない内は自在に扱うのは難しいと思うのです。それでも、魔導師になれば否応なしに繊細な魔力操作は必要になるのですよ」
厳しい事を言っている様だが、マーリンの言葉に嘘は無い。
実際、繊細な魔力操作も出来ずに魔法を扱おうものなら、例え難易度の低い初級魔法であろうと、暴発や不発など様々な問題が懸念されるのだ。
先程のミキの魔法にしても、もう少し上達が遅れていれば生徒達に向けて発射されていた可能性もあった。
とは言え、幾ら口で言っても、生徒達にとっては実際にそのような事故を目の当たりにしなければ実感が湧かないとは思うのだが。
「それにしても……的の大半を消滅されてしまっては、流石に"修復"でも直しきれないのです。代わりに新しい的を用意するのです」
マーリンがそう告げて指を鳴らすと、転移魔法によって先程まで使われていた的が消滅し、同じ位置に新しい的が出現する。
やはり何度見ても無駄がなく、高い熟練度を感じさせる手際だった。
「あ、あの……壊してしまった的の弁償とかって……」
先程、自分が起こした事故を申し訳なく思っているのか、気まずそうにミキが訪ねる。
「この的は敢えて粗悪な素材で作られている安価なものです。この程度でお金は頂戴しないのですよ。何より初心者の内は失敗するのは当たり前の事なのです」
ミキの不安を解消させるように、マーリンは優しく微笑んで答えた。
大雑把なのか、それとも寛大なのか……とにかく細かい事は気にしない性格の様だ。
「さて、では気を取り直して続きを始めましょう! しかし予想外の事態ばかりで思いのほか時間が押してしまったため、ここからは立候補ではなく席の並び順で実践してもらうのですよ」
確かに今回の魔法実践の内容には、今の"魔法弾"の他にも、"魔法盾"が含まれている。
クラス全員が実践するには、手際よく行っていかなければ時間的に厳しいだろう。
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生徒達の様子を見ていると、やはり同じ魔法を使っても、初心者であるが故に個人差がはっきりと生じる結果となった。
三発とも的のほぼ中心に命中させた者も居れば、全て的から大きく逸れた者も居る。
平均的な点数としては二十点ほどになるのだが、個人の偏差はかなり大きい。
平均点がこのクラスの基準と考えるのは軽率だろう。
「ふむふむ、やはり"魔法弾"でも結果は人それぞれ大きく変わりますね。でも、今の結果が悪かったからと言って、決して魔法の才能が無いという訳ではないのですよ」
生徒全員の結果にマーリンが納得した様子で満足げに頷く。
魔法の才能が無いという訳ではない、という台詞も嘘ではなく、他の魔法では"魔法弾"に必要な技術とはまた違った技術が求められる。
それら全ての能力を判断するには、"魔法弾"の結果だけでは不十分過ぎるという事だ。
特に次の実践内容となる"魔法盾"に求められる技術は、"魔法弾"とは全く異質のものになる。
当然、"魔法弾"に比べて一人一人の結果も大きく変動する事だろう。
俺的には、特にフィリアたち五人の結果は見ものだな。
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それからは円滑に授業は進んでいき、何とか時間にも余裕を持たせて"魔法盾"の内容に移る事になった。
「では、最初に告げた通り、"魔法盾"の実践を行うのです。
これは初級魔法に分類されていますが、実は慣れない内は意外と難しい魔法なのです。
という訳で、まずは先生がお手本を見せるのです」
簡潔に説明を行うと、マーリンは両手を前に突き出して詠唱を始めた。
「《無垢なる力よ――堅牢なる盾となりて、我が身を護れ》!」
元々マーリンの性格が繊細なのか、相変わらず正確な発音と絶妙な発声速度だ。
そして詠唱を終えたマーリンの掌が白く発光し、その光はスライムの如き柔軟性を感じさせる動きで変形してゆき――やがて身体の前方を覆い隠す、薄い板状の膜が形成された。
この薄い膜が"魔法盾"なのである。
脳内で計測したところ、詠唱完了から盾の形成までは約五秒であった。
マーリンが本気を出せば一秒以内に済ませる事も出来るとは思うのだが、今はあくまで授業なので、生徒達に分かりやすい様に敢えてゆっくり実践したのであろう。
「見た目は簡単そうに感じるかもしれませんが、魔力の変形と形状維持は想像以上に繊細な操作が必要で難しいのですよ」
確かに原理は"魔法弾"同様に単純だが、いざ試してみると見た目以上に難しい魔法でもある。
少しでも集中力を切らせば盾が変形し、耐久力が低下する為、実戦で使える段階まで鍛錬するには相当な期間が必要となるのだ。
「では、今からは皆さんにも同様に"魔法盾"を形成してもらい、先生がその盾に向けて、威力を抑えた"魔法弾"を三発撃ち込むのです。
それを三発とも耐える事ができれば、ギリギリ実戦でも使える段階なのです」
マーリンが先ほど形成した"魔法盾"を解除し、全員に向けて実践の説明を行う。
勘違いしてはいけないのは、ギリギリ実戦でも使えるという言葉は、あくまで敵の攻撃に対して、今の実践と同じ条件か、それ以上の"魔法盾"を形成できた時の場合に限るという事だ。
この実践では身の安全が保証されているが、いざ実際に殺意を込められた敵の攻撃を前にした時、物怖じせずに正しく詠唱を行い、更に精密な魔力操作をこなす胆力を、果たして生徒達が持ち合わせているのか――その答えは、容易に想像できるだろう。
つまり、あくまでこの実践は、生徒達がどれほど精密な魔力操作が可能かを見定めるものであって、生徒達の形成する"魔法盾"が実際の戦場で役に立つかどうかを判断するものではない、という訳だ。
「では、やっぱり最初は一番成功する可能性が高そうなクロト君に実践して貰いたいのです」
マーリンは俺の方を見ながら、そう言って笑顔で指名した。
「構いませんが……"魔法弾"を三発とも耐えれば良いんですね?」
「その通りなのです。ではクロト君、盾を形成するのです!」
「分かりました。《漆黒の力よ――堅牢なる盾となりて、我が身を護れ》!」
右手を突き出し、詠唱を完了させた俺の掌から黒い粒子状の魔力が集まって変形してゆき、身体を覆い隠す面積を持つ漆黒の薄い盾が完成する。
詠唱完了から形成までは、およそ二秒程度だ。
「さすがクロト君、盾を作るの早すぎ……。っていうか、やっぱり魔法を使うと黒色になるんだね」
その様子を見ていたアイラが、若干呆れたように苦笑いで感想を口にした。
「ほ、ホントに初心者なのですか? 既に実戦でも使える形成速度なのですよ……」
少し呆然とした表情で、マーリンが驚嘆する。
初心者どころか、彼女よりも遥かに魔法の扱いには慣れているのだが……勿論それを暴露つもりはない。
「で、でも、大事なのは強度なのです。早速試すのですよ!」
気を取り直したマーリンの指示に従い、俺は先ほどの"魔法弾"の発射位置と同じ場所に立った。
「今回は短縮した詠唱で"魔法弾"を撃つので、それを予め注意しておくのですよ。では始めるのです!」
「ええ、何時でもどうぞ」
特に身構えもせずに突っ立って盾を構えたまま、マーリンの諸注意を聞き流す。
かなり自然に会話しているので生徒達は気づかないと思うが、実は"魔法盾"を維持する集中力を保ったまま会話するというのも、意外と難易度は高いのである。
「自信満々みたいですね。では……《撃ち倒せ》っ!」
一声で放たれた詠唱と共に、一条の閃光が真っ直ぐに俺を目掛けて高速飛来し、構えた"魔法盾"と真正面から衝突し、その衝撃が僅かながら俺の腕に伝わる。
それと同時に響いた衝突音は、まるで銃弾が金属の壁に弾かれる時の様な甲高い音であった。
しかし、その衝突によって消滅したのは"魔法弾"のみで、盾は文字通りの無傷である。
「なるほど、強度も高いようですね……。では、《撃ち倒せ》! 《撃ち倒せ》っ!」
盾の強度を見て、もう少し威力を上げても良いと判断したのか、今度は二連続で弾丸を発射した。
更に、その弾速も先程よりも速く、恐らく威力も数段増しているのであろう事が見て取れる。
そして弾丸は二つとも俺の盾の中央を正確に捉え、相乗効果によって単発よりも倍の威力で襲い掛かる。
……と言うか、下手をしたら怪我じゃ済まない威力だな。
それでも俺の盾はびくともせず、"魔法弾"の威力を耐え凌ぎ、遂に二つの弾丸は消滅した。
「これも防ぐのですか……では、次は――」
「……いや、三発とも防ぎましたが?」
合計で三発の弾丸を防いだにも関わらず、何故か楽しげに笑みを浮かべて実践を続けようとするマーリンに突っ込みを入れる。
「ハッ! すいません、つい盾の強度を確かめたくなって、ワクワクしてしまったのです……」
つまり、優れた魔法の才能を見ると周りが見えなくなる程に、マーリンの魔法に対する好奇心や探究心は強いという事だろう。
それが性分と言うのなら仕方無いのだが、暴走だけは勘弁して欲しいものだ。
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それからも実践は続き、その結果からクラス全員の素質が大体判定できた。
流石に特別学習クラスと言われるだけはあり、"魔法弾"と"魔法盾"の両方に苦手意識を持つ者はおらず、少なくとも片方の魔法には高い適正を持っている様だ。
相変わらずアイラは優秀で、他の生徒が"魔法盾"を形成するのに五秒から七秒程度の時間を要するにも関わらず、彼女は三秒で盾を形成し、見事にマーリンの撃ち出す三発の光弾を防いだのである。
しかし、アイラの結果以上に刮目すべき、驚きの結果を出した者が居た。
何と、ルアナがアイラよりも更に早い形成速度……たったの一秒で盾を形成し、弾丸を三発とも余裕で防いでみせたのだ。
彼女の繊細な魔力操作のレベルは、俺の予想を遥かに上回るものであった。
そして、フィリアとユウナは慣れない手つきではあったが五秒で盾を形成し、何とか盾を維持したまま三発とも防いでいた。
まだ実戦で使うには不安の残る結果だが、初心者としては上出来である。
この二人の実力はかなり近いので、良い好敵手になりそうだな。
肝心のミキについてだが……彼女は九秒という時間を掛けて身体全体を覆い隠す様な球体状の魔法防壁を作り上げた。
それは薄い膜などという脆い作りではなく、厚さ五センチ程の立派な防護壁で、三発の光弾如きでは衝撃さえ伝わらない程であった。
正確に言えば、その魔法は"魔法盾"ではなく"魔道防壁"と呼ばれる上級魔法なのだが……それを九秒で完成させるとは、もはや実戦云々の話ではなく、戦術級とも言える技術だと考えるべきだろう。
これに対してはマーリンも流石に文句は言えず、この才能は寧ろ伸ばすべきだと賞賛するばかりであった。
「皆さん、やはり優秀なのです。特にミキちゃんの結果には思わず舌を巻くほどだったのですよ」
口を開けて呆然としていた程だったからな。
もし、あの防護壁を長時間維持できるのであれば、激しい戦火の中からでも生還できるであろう程に魔術的価値の高い防御力なのだから、驚くのも当然の事だが。
「ですが、もちろん他の生徒さん達も優秀なのですよ。他のクラスでは有り得ない程に授業を円滑に進めた事が、何よりの証拠なのです!」
マーリンに褒められた生徒達が、嬉しそうにお互いに顔を見合わせ、拳を握り締めて笑みを浮かべる。
やはり、自分の実力を他人に認められるというのは誰でも嬉しいものだろう。
「さて、この授業の内容はこれで終わりなのです。次の時間からは座学が続きますので、頑張って学を身に付けるのですよ!」
マーリンがそう告げてガッツポーズを生徒達に見せると同時にチャイムの鐘が鳴り、授業終了の時刻となった事を伝えた。
「おっと……もうこんな時間なのです。練習場の施錠は先生がしておくので、皆さんは次の授業に遅れない様に、教室に戻るのです!」
鐘の音に反応したマーリンの指示を聞き、全員が「はーい」と軽く返事を返して教室へと向かうのであった。
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それから時は流れて全ての授業が終わり、現在はフィリアと共にいつもの帰路を辿っている。
「ふぁ……やっぱり座学は難しいわね」
フィリアが口を手で覆いながら欠伸をし、授業の感想を呟く。
やはり昨日の徹夜が影響しているのか、彼女は授業中もかなり眠そうにしていたのだ。
部屋に戻ったら、今日こそは早めの睡眠を取らせよう。
「最も、アンタにとっては退屈するぐらい簡単かもしれないけどね」
「あぁ。退屈だ」
「あっさり言うわね……正直羨ましいわ」
フィリアの言葉に、俺は一言で率直に返答する。
実際、既に頭に入っている知識を淡々と教えられても面白くはないものだ。
俺としては、簡単に授業についていける余裕よりも、より高いレベルの学習をする手応えが欲しいのだが。
「まぁ、クラスの中で一番授業を聞く意味が無さそうなのはアンタだからね……」
「今のところはな。授業の内容が難しくなれば集中して聞かなければならない時も来るさ」
最も、俺の知識に無い魔法を、授業で生徒達に教える事は無いと思うが。
だが、俺が魔法学校に在校している間までに、どれ程の難易度の授業を行うのかは気になるものだ。
それだけでも、授業を受ける理由には十分であろう。
「ふーん……でも、アンタに分からないような内容に移る事なんて無いと思うけどね」
まるで心の中を見透かされているかの様な返答だな。
稀にフィリアは感の鋭い発言をする時があり、更に彼女自身も割と確信を持って言う事が多いので下手な誤魔化しは効かないのだ。
「まぁ、そうだと良いけどな」
あまり追求されるのも面倒なので、俺は微笑を浮かべ、軽く話を流した。
そんな取り留めのない話をしながら暫く歩き、俺達は再び王城へと帰ってきた。
「はぁ……今日も頭使って疲れたわ。明日からは騎士団の方で訓練があるし、早めに休まなきゃね」
部屋に着いて早々、フィリアは大層疲れたようにベッドに腰掛けた。
「そうだな。報告が終わったら早めに睡眠を取る方が良いだろう」
「ええ。やっぱり夜更かしは良くないものね……」
昨日の徹夜が今日の授業に響いた事を省みて、少なからず後悔している様だ。
この後の仕事はハイネへの報告だけなので、それが終われば今日こそはゆっくり休む事もできるだろう。
そう考えていると、玄関の方から叩扉の音が聞こえた。
流石にこのノック音にも聞き慣れているので、扉の向こう側に誰が居るのかは既に判る。
「はい。今開けます」
その音に反応して俺が扉を開けると、やはり扉の向こうにハイネが立っていた。
「今日もお疲れ様。授業の方はどうだったかしら?」
「順調です。今のところは」
ハイネの質問に対して、俺は簡潔に答えた。
今のところは……とは言ったが、別にこれからが難題だとは思っていない。
ただ、無駄にハードルを上げる返答をしない方が良いと考えただけだ。
「予想以上に難しいけれど……何とか授業には着いていけてます!」
フィリアもこちらに近づいて、笑顔で偽りなく感想を述べた。
まぁ、授業態度も悪くなく、内容も理解出来ているので、当分の間は彼女が学習で悩む事は無いであろう。
「二人とも流石ね。それで明日の事なんだけど……」
俺達の感想を聞いて満足げにハイネは頷き、話題を切り換えようとする。
明日は訓練の予定と聞いているが、わざわざここで明日の事について話すという事は、何か事前に連絡する事でもあるのだろうか。
「実は最近、とある冒険者ギルドが新設されたのよ。そこは元々は闇ギルドだったけれど、ある日を境に突然、雰囲気が一変して正規ギルドとして認定された様なの」
闇ギルドが唐突に雰囲気を変えて正規のギルドに……?
それ自体は悪い事では無いのだが、犯罪を共有して仲間意識を持つ組織が、唐突に集団で善意に目覚めるなんて事があるのだろうか。
かなり怪しさの漂う話だな。
「今のところは怪しい動きは無いみたいだけど、元は闇ギルドよ。もしかしたら裏で何かしらの陰謀があるんじゃないかと兵士達の間では噂になっていて……」
「なるほど。それでこの三人の班がその調査に向かう事になったという訳ですね?」
そこまで説明を聞けば、自ずと話の内容は察する事ができる。
わざわざハイネに全て説明させるのも悪いので、俺は要点だけ纏めて質問した。
「えぇ、その通りよ。私達の班は割と自由に動けるからね」
「あれ? じゃあその調査が、この班にとって最初の任務って事になりますよね?」
言われてみれば、確かにそうだな。
以前に街の巡回をした事もあるが、それは新兵として決められた仕事であって、上層部のからの命令で動くのは、これが初めてだ。
「確かにそうね。じゃあ最初の任務はしっかり成功させて、周りからの評価を上げましょう!」
「はい! 頑張ります!」
ハイネの言葉に意気込んで返答するフィリアは、楽しそうに笑顔を浮かべていた。
初任務として、新しい経験を得る事に期待を抱いているのだろう。
とは言え、相手は闇ギルド。
どういった経緯で正規ギルドに変わったのかは分からないが、元々は犯罪者の集団であり、油断は禁物だ。
「じゃあ、また明日の朝に部屋を訪れるから今日はしっかり休んでね。それじゃあ、私は仕事に戻るわ」
「はい、分かりました!」
「ええ、また明日」
俺達の返答を聞いてハイネは頷き、玄関の扉は閉ざされた。
「闇ギルドの調査、ねぇ……何だか本格的な任務って感じでワクワクしてきたわ」
初任務が余程嬉しいのか、フィリアが笑みを浮かべてそう呟いた。
本格的な……と言うより、実際に本物の任務なのだが。
何より懸念されるのは、こちらが三人の少数班……それも騎士団の人間とはいえ、二人は女性であり、相手は元犯罪者の集団という事だ。
仮に兵士達の噂が間違っており、陰謀というのも杞憂に終わるのであれば、それが最善の結果なのだが……その可能性は恐らく低いであろう。
どの様な不祥事に出会っても対応できるよう、最大限の警戒を心掛けるべきだ。
この時の俺はそう考えていたが、その翌日、俺の懸念とは全く別の形で予想外の事態が発生し――とある人物との、重大な邂逅を果たす事になるのであった。
生徒全員に三発ずつ魔法弾を撃てるマーリンの魔力って、一体どうなっているんでしょうね?
それはそうと、ようやくリミア視点で立ててきたフラグの回収が間近になりました。




