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第九話。もう一回遊べるドンッ。

最近クレイモアスピノもこの辺を訪れることが少なくなりました。

理由は判ります。

ジャイアントヴェスパ。

蜂族筆頭の個体においても群体としても最大戦力を誇る昆虫の成虫群です。


まるでこの付近自体に用事がある様に何度も訪れては、

ついでにクレイモアスピノを殺して肉団子にしては持っていきます。

…これで王族種ではないというのが恐ろしいですね。

同じ蜂族であってもその力に恐れを抱かざるを得ません。

もし、ジャイアントヴェスパの女王級などにあったらきっと私は気絶しちゃうかもしれませんね。


そんなジャイアントヴェスパの群れがクレイモアスピノを来ては狩っていくので、

何と私は今まで食べたことが無いクレイモアスピノ『を』おこぼれとして食べていけることになりました。

少しだけ水から出る必要がありますが水中に散っていたクレイモアスピノの肉を食べた時に『空気呼吸化』を手に入れたので大丈夫です。

まぁジャイアントヴェスパはわりかし綺麗に肉団子を造っていくので、

彼女たちが去った後にそこに行ってもあまり残ってはいないんですけどね。


それでも、ほんの残り滓でも、クレイモアスピノという今迄に無いランクC+のモンスターの肉、

文字通りランクの高い肉を食べられるということは、

私自身の性能を向上させ、より強く、より逃げやすく、より助かりやすく、より生き延びやすくさせます。

迷うことなんてないですよね。


そうやって食べていくことでスキル『針山』『切断』『体温上昇』『待機時間短縮化』を手に入れました。


ジャイアントヴェスパ様様ですね。

圧倒的強者が強者を殺しその肉を残していくことで弱者が成長し強者(くわれない)側にまわれるんです。

しかしそう考えていたのは私だけではなかったようで他の死肉喰らい達も来たようです。


       キノドドン  RANK E


哺乳類モンスター、キノドンの進化系ですね。

哺乳類の力強さと爬虫類の機敏さを持った中途半端というかそんなモンスターです。

…っといっても私よりは強いんですけどね。

水中に溺れた個体ならともかく、陸上では勝てない可能性もあります。

というか勝てないでしょう。逃げるのも陸上では明らかに分が悪いですね。

さてどうしましょうか?


「ドンドン、カッカッ、ドンッ。」






……仲間、呼んでます?

食事があるぞーって。

何言ってるのかは哺乳類の言葉なんて知らない私には解かりませんが何と無くそんな気がしますね。

……ほら、やっぱり。




キノドン(RANK F)×8 キノドンドン(RANK D)×1が現れた。






さて、どうやって逃げますか…。




…浮かびませんね。下手な考えよりは行動するが勝ちです。

とにかく逃げましょう。

私よりクレイモアスピノの肉に集中するかもしれませんし。


そういって逃げ始めた私でしたが残念ながら奴らは待ってくれませんでした。

特有のドンドンと響く器官を使って音を鳴らした後私を追ってきました。

しかし、水辺まで間に合うでしょうか?

…いえ、間に合わなければ終わりですね。間に合わせましょう。



気合はばっちり、気概もばっちり。

――――――――――でも現実は非情です。

速度まではばっちりではなかった私はあと少しというところでキノドンドンに回り込まれてしまいました。

再び方向を変えて這う私でしたがそれもキノドドンによって道を阻まれ、再び方向を変えざるを得なくなりました。

そしてその先にはキノドン達が待ち構えています。



…そういうことですか。私はキノドン達の狩りの練習材料となっているわけですね。

そうと判ればそれなりの対策を考えられるものです。

舐められたと腹を立てて戦って命を落とすなんてそんなことはやりません。

ただ、舐められているこの状況だけはしっかり使わせてもらいましょうね。


私は敢えて水場に向かいます。

キノドンドンが待ち構えていますがそんなことは関係ありません。

これは恐らくキノドンドンとキノドドンの仔である『キノドン』の狩りの練習です。

だから『キノドン以外』が私を殺すことはありません。

精々キノドン達の方に蹴り飛ばされるくらいです。


足蹴にされようがなんだろうが殺しに来ないのならその分チャンスはいくらでもあります。

一回でも、そのうち一回でもうまく躱して逃げ切れれば私の勝ちです。


そう思った私はキノドンドンの方へ向かっていきました。

フフッ、怖いか?と脅かす様に何度も私に向かって、

「ドドンカカッカ」

と威嚇をしてきますが、殺すつもりのない殺気なんてただの張りぼてでしかありません。

私は迷わず先をゆきます。

当然それをさせたくないキノドンドンは遂にその脚で蹴飛ばしたり鼻などをぶつけてきますが、

何度傷付けられようが転がされようが死ぬことが無ければ問題はありません。

少なくとも痛みと命を天秤にかけて痛みを取る考えは持っていないつもりです。


そして私は何度目かの挑戦の後キノドンドンの脚を寸前で横に転がることで躱しそのまま奥を抜けていきました。

あと少しで水辺に着きます。

傷は染みるでしょうがこれで陸生動物はそう追ってはこれなくなるでしょう。

特に泳ぎが困難な仔供であれば。




そう、思っていたのですが、

しかし遂にキノドンドンはキノドン達に狩らせることを妥協したようです。

キノドンドン自体が私を狩るつもりで追ってきました。

もう私は振り返らず全力で逃げることにしました。

しかし足音が直ぐに近づいてきているのが解かりました。

それでも最後まで逃げ切りましょう。


しかし、足音からすると接触まで後4メートル、3メートル2,1―――――――――――








0。

そう思った瞬間でした。

「やっと見つけたわ。探したのよ。」


そんな澄んだ声と共に羽音が響きました。

振り向くとそこにはジャイアントヴェスパの成虫の群れ。

一般種の働き蜂にその顎で噛み千切られたキノドドンとキノドン達。

そして脳を串刺しにされたキノドンドンと串刺しにした若い王族種の姫バチ。



後の私が姉のように尊敬するファデータさんとの初めての出会いでした。

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