第二話。 だいたい母のせい。
グラシリスとファデータ達は親戚であった。
後の世に現れてくるヒトという種の研究結果によれば、
グラシリスの種族であるミズバチ型種族の始まりは、
正統派蜂種族ヴェスパの家系に産まれながらの先祖帰りの上の変異体であったとか、
直系がヴェスパに変わる以前からの分岐であったとか様々な説があるのだが、
全員が一致していうことは、
どうであれ変人、もとい変虫が先祖であったことは間違いない、ということだ。
考えてみて欲しい。
なにせ本来地上で育ち空を舞う種族が水の中に暮らせと仔らに言うのだ。
正気の沙汰ではない。
他の姉妹たちが普通に木や地下やとにかく普通に暮らしているところに卵を産み、
翅が生えては空で生活しているのに対し、
「貴女達は水の中で育って水中や時折空で過ごしなさい。私もそうするから。」
酷い話である。
イメージがわかないものの為に人間で例えよう。
そんな母親は人間でいえば名家の生まれでありながら変わり者で、
急に外国の無人島で暮らし始め、そこで素潜りで魚介類を取ったり、
サメと格闘したりして生活して子育てしている御嬢さんのイメージを持ってもらえば大体あってるだろう。
んでもってそんな御嬢さんの母が亡くなりそう又は亡くなった時とかに、
他の姉妹が探し回った結果偶然発見したらお嬢様にあるまじき生活をした結果、
身体を壊して亡くなっていた。んでもってせめて子供だけでも連れて帰ろうとしたら、
母親の教育が良かったのか島から出ても大丈夫なほど、やたら教養はあるものの、
祖母には逢いに行くものの島から出るつもりは無いと言われた。
仕方がないので他の姉妹は自分の娘たちに定期的に亡くなった姉妹の子供に会いに行くように言った。
「偶にサメやクマに襲われたりしていないか様子を見てきて。あそこには電話もないから自家用飛行機で。」
ちなみに島に残った子供たちは今、周辺の海を含め、
島の生態系の頂点にいてサメを素手で捕えて元気に食っている。
産まれから其処の育ちだけあって母以上に洗練されており問題は無いようだ。
…みたいな感じだろうか?
人を虫に変えれば大体あってる。
ちなみにそんなグラシリスにも弱き幼虫時代があったのだ。
この後はそこから語っていこうと思う。