エピローグ「誓い」
「へぇ~……そんな事があったんだ」
「そうなんですよ……気持ちは嬉しいんですけどね。でもあんな場所で泣き出されたら、流石に困るって言うか……」
「フフッ! まぁそれはそうだよね~!」
ちかげの話を聞き、夕海は思わず噴出してしまった。彼女から聞かされた希人の行動があまりにも純粋で、同時に普段の彼とかけ離れていたからだ。
「あと、夕海さん……」
「ん? なに?」
「その……すみませんでした。失礼な態度を取ってしまって」
深々と夕海へ頭を下げるちかげ。しかし肝心の夕海は、きょとんとしている。
ただでさえ大きくて丸い目を更に丸くし、夕海はちかげを覗き込む。
「ど、どうしたの? ってか一体なんの事?」
「なんの事って……私、夕海さんに冷たくしてましたよね?」
「自分のした事なのに疑問形って……いいよ、そのことは! ちかげちゃんにも相談すべきだったって、私も思ったからさ。ごめんね、先走って」
「い、いえ……」
「なに? 照れてるの? かわいいなぁ~君は!」
気まずそうに視線を落とすちかげの頭に、夕海はやさしく手を乗せた。つややかな黒髪の上を、水仕事で少し荒れた手が撫でる。
年の離れた妹を慈しむように、九つ下のちかげを、夕海はやさしく包み込んだ。
* * * * *
サラの元を離れた希人は、基地の情報室へ向かっていた。
本部のデータベースにアクセスするスーパ-コンピューターが置かれた、この基地の頭脳とでも言うべき場所だ。
「あ……お疲れさまです、勇部さん」
「ん? あぁ、篭目か。ご苦労だ……と言うか、正式に辞令を受け取ったのだろう? それなのに〝勇部さん〟か?」
希人が情報室へ入ろうとした時、ちょうど部屋から出てきた亘と向き合う形となる。既に上司となった亘は希人に対し、『礼儀正しい紳士』ではなくなっていた。
百八十センチを超える亘に見下ろされると、それだけでかなりの威圧感がある。面食らった希人は、慌てて挨拶をし直す。
「し、失礼しました! お疲れさまです、〝勇部隊長〟! そのまだ慣れてないものでつい……」
「……まぁいい。これからはよろしく頼むぞ、篭目」
そう言うと、亘は希人に右手を差し出した。いつか汚れた手で握手する事を躊躇ったあの右手だ。
「いえ、こちらこそよろしくお願いします」
今度は躊躇わず、希人も握り返す。対峙して見上げる亘はやはり大きいが、自然と以前の様な気負いは感じられなかった。
では失礼するよ――そう言い残し、亘は去っていった。
小さくなった亘の背中が消えたの確認し、希人も情報室に入る。
部屋に入ると、希人は奥に設置されたPC端末のカードリーダーにIDパスを置いた。彼が今日ここに来た理由も、ここにあった。
「今日、あなたのお子さんの命を預かることになりました……頼りない私ですが、精一杯守りますので、どうかお許しください」
部屋の入り口からズラリと並んだPC端末。その奥に鎮座するのは、巨大なスーパーコンピューターだ。まるでこの部屋の主であるかの様な存在感を放っている。
そのスーパーコンピューターの手前に、希人が使用している端末はあった。
希人はパンゲアのデータバンクにアクセスし、記録された歴戦のDFの名前を呼び出していた。規則的に羅列されたDFの愛称。その中には、サラの母体となったアルバートサウルスの名前もあった。
その名前を確認し、希人は静かに手を合わせて誓う。
決して、悲惨な死に方はさせない――と。
まずは、ここまでご高覧いただき、本当にありがとうございました。
私結日、この機甲猟竜DFが処女作になります。色々と手探りではありましたが、なんとかこの第一章を描き終えることが出来ました。
当初はこれから先のエピソードも連続して執筆する予定でしたが、いざ書き始めてみると、思っていたよりも長編になってしまいました(汗)ちょっと、計画性が足りなかったのかもしれません……。
先にも申しました様に、この『機甲猟竜DF』が、私の初めて書く小説になります。とどのつまり、そんなペーペーの分際で大長編を書いていいものなのかと……。
また、私の個人的な問題なのですが、興味を引く小説内容でもあまりに読了時間がかかる様だと、読み始めるまでに尻込みしてしまうことも……。
まだ小説を書き始めたばかりの私は、できる限り多くの方に読んでもらい、意見を頂いてナンボだと思います。
その様な事を踏まえ、ちょうど区切りのいい一章終了時点で一旦締めさせていただきました。(なんだか打ち切りの少年漫画みたいになってしまい、申し訳ございません!)
文量的にも、横書きで御覧になる読者様を意識して足した改行位置を詰めれば、文庫本一冊くらいになるのでちょうどいいのかなと……。
以上の様な事情から、『機甲猟竜DF』はこれにて一旦終了となります。
……ですが、許されるのなら、やはりこの続きも書きたいと考えています。
その為にも、今回の第一章に関して意見を頂けたら幸いです。
私自身で見直しても、
「物語の舞台が人工島の箱庭的な世界に終始してしまい、マクロな視点から見た“DFの世界観”をうまく描けなかった」
「(主役恐竜のサラが)幼体時点からのスタートと言うハンデがあったにせよ、多くの読者様が求めるであろう戦闘描写をあまり入れられなかった」
「全体を通してのテーマを描くためとは言え、六話は少し地味な展開になってしまったかもしれない」
……等々、反省点は多いです。
いつぞや活動報告にも書きましたが、希人の飼育するペットは、三匹それぞれが小説のテーマを担って貰っています。
その中で第一章のキー・ペットは『コーンスネークのマリア』であり、
『人の造りだした命と、それに対する人の価値観や倫理観』と言うテーマで書かせていただきました。(金魚やソメイヨシノも、テーマに即して登場させました)
そのテーマがどこまで読者の方に通じたのかも、聞かせていただけたら嬉しいです。
……と、なんだか長文になってしまいスミマセン。
ダメですねぇ、小説の内容自体で勝負できる様じゃないと。
本当、こんな私の拙作に足を運んでいただき、本当にありがとうございました! 重ねて御礼申し上げます!
追伸:
やっぱ、二章以降も書きたいです!
今のところ描いている構想の中で登場させたい恐竜や古生物は居ますが、読者様の意見も聞きたいなぁ……。もし「DFの世界観で活躍するこの恐竜が見たい!!」と言うのが居ましたら、感想欄の【一言】の部分に頂ければと思います!(採用するかどうかは、モノによりますが……)
◆2014/04/07
報告遅れましたが、3/5より第二部「機甲猟竜DF‐泣き虫庭師と虹の竜‐」(N8820BZ)スタートさせました。もう需要があるかどうかわかりませんが、突っ走れるところまで突っ走ろうかと! よろしければ応援お願いします!




