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陽織、とばっちりを受ける(子育て編)

9月もあと一週間、バイトもあと3日で終わる、と言う日。湊人はいつもいる地下のデータ室から、12階の広報室にお使いを頼まれた。

神代製薬本社ビルは全33階建。12機のエレベーターが随時稼働している。


が、その日の午後イチは、点検作業が入っていた。

現在では10機のエレベーターが稼働中。

行きは当然エレベーターを使い、12階まで行った。

しかし、帰りのエレベーターが中々来ない。


2機は20階まで10階の大会議室以外ノンストップ。2機はさらに30階まで同じく、10階と20階以外ノンストップだ。2機は地下3階でずっと止まっている。駐車場がある階なので、何か搬入でもしているのだろう。


そして残り4機はまだ地下1階や2階、逆に23階、26階にいる。

湊人はしばらく悩んだ結果、階段で降りることにした。


階段は2ヶ所、5階から下へ行けばエスカレーターもある。とりあえず、5階まで、と湊人は広い階段の方を降り始める。


下の階は階段を使う人もいるが、上の方は流石に少ない、と言うかいない。ならば、と、先日の依頼を思い出し、湊人は踊り場から飛び降りた。

(お、結構行けるじゃん!)

と思ったら、取らなかった。


会議室のある10階にきても、誰も階段の方は見向きもしない。

そのまま勢い付き6階まで来ると、ちょうど1階下に用がある社員と出会す。しかし、その人も、いきなり踊り場に降り立った湊人に、「若いねー。」と声をかけて、すぐに5階から廊下に出て行った。エスカレーターを使うのも忘れて、結局湊人は地下1階のデータ室まで、あっという間に着いた。


エレベーターは、まだ一機も来てなかった。

(よっしゃー!)

と、ガッツポーズを決めて、さりげなくデータ室に入り、お使いをすませたことを、社員の人に告げ席に座る。


しかし、それから10分後。とんでもない騒ぎに発展した。


黎人は警備室からの電話で、会社に不審者が侵入した形跡がある、との連絡を受けた。


警備室からの連絡を基準に、12階から地階まで下の各フロアのセキュリティ担当者に連絡を入れ、各室の入退室履歴をチェックさせる。

さらに、会長室にも連絡をする。


そして自ら2階の警備室に足を運んだ。


「こちらが、防犯カメラの映像です。」

警備員が出したのは15分ほど前から、東階段を飛び降りながら下の階に向かう若い男性の姿。

そして、その後ろ姿と、服装に黎人は心当たりが、あまりにもあった。ありすぎた。しかし、その名をここで口にするわけにはいかない。

「わかりました。外から入った形跡は?」

「今のところはありません。」

そのうち、社内の警備責任者に当たる総務部長も駆けつけ、各課異常は見当たらないとのことだった。


「外に出た形跡もありませんか?」

「はい。」

警備員2人が緊張して答える。

真凛たちと同じ会社の先輩だ。


「この姿に、私は心当たりがありますので、そちらに確認を取ります。おそらく、アルバイトの学生かと、思われます。」

黎人は、言葉を選び慎重に答えた。

心の中は、「みーなーとー!」と、煮えくり返りそうになりながら。


夜、黎人が帰宅した。

陽織はいつも通りに出迎えたが、何か不機嫌そうだ。

「何かあった?」

と聞いても、何でもないと言い、服もそのままで、母屋へ行ってしまった。

「パパ、怖かったねー。」

と、陽織は鷹人に話しかけ、テーブルの上に黎人の夕飯の支度を始める。


「湊人!」

黎人は家の扉を開けると同時に、弟の名を叫んだ。

美咲が驚いて出てくる。

「なに?挨拶もなしに。」

と言うが、そんなの聞いていない。

「湊人ー!ばかやろー!」

と叫びながら、2階に駆け上がっていく。


湊人はキョトンとした顔で、部屋から出てきた。

「おかえり?何?」

「何じゃない!お前のせいで、今日は警備部が大変な騒ぎだったんだからな!」

湊人は、警備?と意味を解してない。

しかし、そのあと、父親の蓮也も帰宅し、黎人の声が聞こえたのか、今日の騒ぎの原因が自分の息子だと知る。


「湊人、ここに座りなさい。」

湊人はなぜ父親にまで?と疑問を浮かべながら、リビングの椅子座る。すると、今日、湊人が踊り場から踊り場へ階段を飛んで降りたことが、不審者となって、警備室から連絡が入ったことを知った。

さらに、12階から地階までの全防犯システムと、セキュリティ関係の確認が行われたことを。


「えー?おれ、ただ、段ぬかしで階段降りただけじゃん!」

「社会人は段ぬかしで階段は降りない。」

「下に誰かいたらどうするんだ。」

「場合によっては大事故になる。」

「警備の人の目からも、不審者に見られたくらいだ。」

「セキュリティチェックが入ると、場合によっては警察に届けが必要になる。」

と、次々、父と兄の2人から怒られた。


さらに、湊人はその件について顛末書を明日までに、総務部長に提出することになった。

書き方がわからない、と言うと、夕飯の後、黎人のところへ来るように言われた。


黎人が夕飯とお風呂を終えた頃、湊人がパソコンを持ってやってきた。

一応自分なりに、書いてみたらしい。

陽織は、お風呂から出ると、鷹人を連れて2階へ避難した。たぶん、黎人の鬼教官が始まる。


陽織は、鷹人の部屋で絵本を読んで、頭を撫でて、寝かしつけると、そーっと下の様子を見に降りた。


湊人が来てから1時間、何度もダメ出しをされているようだ。

「だいたい、陽織が悪いんだ!」

と、訳の分からない、言い訳を湊人が言って、黎人からゲンコツを喰らっていた。

「会社の階段を飛び降りたのは、お前だ!」

(え?会社でやったの?バカじゃないの?)

陽織はそう思いながら、そっと2階の自室に戻ってベットに入った。


さらに1時間後、やっと納得のいく?顛末書ができたようで、湊人は戻って行った。

それから数分後、一階の戸締りなどを済ませ、黎人が2階に上がる音が聞こえた。陽織は寝たふりに徹する。


そして、余計なとばっちりを受けないように、ベッドの隅に丸くなった。電気が消されて、部屋が暗くなる。

真っ暗な中、陽織はほっとして、ベッドの真ん中に寝返りをうとうとすると、そのまま捕まった。

目の前に、お怒りモードの黎人の顔。

怖い!

な、何?

「全く、陽織が湊人に変なことを教えるから!」

「え?わたし湊人に何も教えてないよ?」

黎人は陽織のナイトドレスのボタンを外しながら

「階段の踊り場から飛び降りるなんてこと。」

と言う。しかし

あれは、教えたんじゃなくて、真似したんだよ!


と、陽織は言いたい。それに、何してるの?

「もう、湊人のせいで今日は散々だった!」

と言いながら、今度は陽織の下着に手をかけてる、

暗い中よく見ると、黎人は裸のようだ。

「えーっ?昨日だって付き合ったのに!」

陽織が、ちょっと文句を言うと、だから?と、怖い顔で返された。

嫌なんだけど、怒ってる黎人さんに、何かされるの!

「陽織は、服着ないでいいよ、寝る時は!」

と、わけのわからないことまで言ってる。

「さ、寒い、じゃない。」

と言うと、

「これなら寒くないでしょ!」

と、いきなり密着された。


もう、あとはされるがまま、気づくと、朝になっていた。


















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