#13 バーロンとの出会い
◆今回登場する人物◆
リドナー(14)
バッファル島南東の、とある館に住む剣士。アルカディア学園第8学年。
エレン(32)
リドナーの父。鍛冶屋をしている。ジョブは聖剣士。18の時、手に入れた館で、家族とともに生活している。
リサ(33)
リドナーの母。光属性の魔法使い。家事や、応急処置をそつなくこなす。
バーロン(24)
バッファル島に住む剣士。正義感が強く、力もある。剣術”回転切り”を自分で編み出した。
イーサン(23)
エリザの義理の兄。”赤猫盗賊団”のリーダーでもある。ジョブはナイフ使い。残忍な心を持っている。
●今回登場するアイテム●
スティーラーナイフ
盗賊が使うナイフ。刃は短いが、その分、扱いやすく素早い攻撃も容易に出来る利点がある。
バトルソード
バーロンが愛用していた剣。エレンの自信作の1つ。
ガーディアンソード
防御に特価した、護身用の剣。エレンの自信作の1つ。リドナーは、これをいつも持ち歩いている。
バッファル島に住む剣士・バーロン。彼との出会いは突然であった。
その日、まだ14歳を迎えたばかりだった僕は、護身用の剣を持って、陽の森地下通路へ向かっていた。鍛冶屋をしているお父さんから、装飾品・青銅剣を作るための銅と錫を採ってきてと頼まれたからである。
僕は、その途中、とある盗賊に行く手を阻まれた。彼らは、
「持ち物を全て置いていけ!」
と命令してきた。しかし、護身用の剣以外の何物も持っていない。その時、まだ、人と立ち向かう勇気が無かった僕は、その剣を地面に置いた。そうすれば、見逃してもらえると思った。しかし、そうは上手くいかなかった。
「それだけか!」
盗賊たちはそう言って、腰から短剣を抜いて、襲いかかってきた。当時から、素早さだけは自慢だった僕は、それを右に左にかわし続けた。が、体力が無くなってくるとその動きは鈍くなっていった。
そして、僕はついに膝から崩れ落ちた。体力も失い、両足も斬られ自分で立つことが出来ないのだ。そんな僕に、容赦なく盗賊たちは短剣で攻撃してくる。僕は、それらを転がりながら何とかかわし続けるが、それも、やがて出来なくなってしまった。
それなのに、盗賊たちはニタニタしながら、こちらに向かってくる。まず、背中を刺された。続いて、両腕。さらには、肩。そのせいで、体中は刺し傷だらけになり、その痛みで動けなくなってしまった。これを見た、1人の盗賊はさっきよりも恐ろしい笑みを浮かべて、こちらに近づいてきた。そして、その人は短剣を振り上げた。この絶体絶命の危機に、まだ、両親に「さようなら」も言ってないのに...。と、嘆いた、その時だった。
「やぁぁぁぁぁ!」
1人の男が茂みの中から現れ、僕を刺そうとした盗賊をタックルで吹っ飛ばしたのである。その人は近くの木に頭をうち、気絶した。その様子に、しばらく唖然としていた、盗賊たちであったが、すぐに彼に襲いかかった。しかし、彼はそれらを見事に剣でさばいた後、返り討ちにしたのである。盗賊たちは全員気絶。そよ救世主は、安堵の息を漏らし、こちらに向かってきた。
「つかまれ。」
その人は、そう言いながら、手を差し伸べてくれた。僕をそれにつかまり、立ち上がった。のは良いものの、怪我で上手く体を動かせない。次に、彼は地面にあった僕の剣を渡してくれて、腰に納めたのだが、こんなものがあっても動けないんじゃ意味がない。
そこで、僕は
「僕はリドナーです。良かったら、家に帰るまで護衛をお願いできますか?」
と、自己紹介に交えて、護衛を頼んだ。すると、
「俺はバーロンだ。わかった、お前の礼儀に免じて、護衛を勤めてやろう。」
と、同じく自己紹介に交えて、護衛についてくれた。
バーロンさんはとても強かった。彼は襲いかかる怪物たちをバッサバッサと斬り倒し、地下通路の奥へと進んでいく。その様子は、当時の僕の憧れになるに十分であった。
その後、無事に銅と錫を手に入れた僕たちは、家に向かって歩き始めた。その途中、災難にも怪物の群れや、さっきとは違う盗賊団に出会ったが、全てバーロンさんが倒してくれた。
そして、家に辿り着いた。お父さんは、まず、バーロンさんに誰何すると思っていたが、どうやら2人は主と客の関係らしく、僕に
「リドナー、その怪我はどうしたんだ?」
と聞いてきた。僕は、それが盗賊によるものだと言うことを話し、バーロンさんがソイツたちから守ってくれたこと、そして、今に至るまで護衛をしてくれたことを話した。すると、父は彼を家に上げ、お茶をもてなした。2人はそれを飲みながら、意気投合し、友のように仲良くなり、僕はお母さんに怪我の手当てをしてもらっていた。彼は、この時から僕の付き人となった。
それから、僕はバーロンさんに弟子入りし、サドリール地区の北端から突き出た、ヒューマニー半島で特訓を始めた。その特訓をしているうちに、僕はすっかり彼に慣れて、敬語もなくなっていった。彼の指導は厳しかった。しかし、そんな試練を乗り越えてこそ、人間は強くなれるとお父さんに教わり、信じていたので、一度も折れることなく、彼の指示に従い続けた。
そんな日々が、3年ほど続き、僕は強くなった。バーロンからは自慢の素早さを生かした剣術や、強さとは諸刃の剣であることを教わった。何でも、正しい使い方をすれば、身を守る糧となるが、誤った使い方をすれば、身を滅ぼす原因になってしまうらしい。当時は、全く理解できなかったが、その言葉は目に見えない
大きな力で僕を引き付けた。学校では剣術の成績のトップに上り詰め、バーロンは自慢の僕の師匠となった。




