第18話:生活の始まり ── 信頼の芽生えと【同期(Sync)】
朝の光が谷に差し込む頃、大学生グループの6人は
ほとんど同じタイミングでゆっくりと目を覚ました。
まず最初に感じたのは──痛みだった。
半年間、逃げ続けた身体が、
ようやく安全を得たことで悲鳴を上げている。
「だいじょうぶ?」
しのんが覗き込み、きらりが水を運んでくる。
大学生グループはその光景に、言葉を失った。
「……なんだ、この……平和な朝は……」
◇◇◇
朝食の香りが谷に広がる。
美園が鍋をかき混ぜ、しのんが皿を並べる。
「……こんな朝、半年ぶりだな」
6人の胸に、その光景がじんわりと染み込んだ。
「ちょっと診させてください」
僕はみんなの状態を確認していく。
炎症、腱の張り、手の震え、精神的な緊張。
「春斗くんは、よう見とるねぇ。
それにしても、みんなホントよくがんばったね」
美園の言葉に、助かったみんな、また涙ぐんだ。
◇◇◇
昼頃になると、しのんちゃんとの距離が自然と縮まっていた。
英語、タガログ語、ドイツ語……連想ゲームや数え歌。
谷に柔らかな笑い声が広がっていく。
その様子を見て、美園が胸に手を当てて息をついた。
「……しのんちゃん。
たくさんのお仲間が出来て……ほんと、よかったねぇ」
(……今のところ、僕が行ったOS診断の通りだ。
安全と安心が揃えば、みんなの心が開く)
「……何か手伝わせてくれ」
イーサンたちが立ち上がろうとするが、
膝が笑い、道具を落としてしまう。
「今日は何もせんでよかよ」
美園が全員を座らせる。
「動けるようになるまで、
うちがちゃんと看るけん。
無理したら、ほんと倒れてしまうけんね」
僕も大学生グループ6人の前にしゃがみ込み、
看病される側の気持ちを話した。
「……僕、何年も寝たきりだったんです。
だから、看病される側の気持ちとか、よく知ってるんですよ」
美園が、ふっと目を伏せた。
「……そげんこと、言わんでよかよ。
あん時の春斗くん、入院着とスリッパで震えとったけん……
見とるこっちの胸が痛かったとよ」
しのんも僕の手を握る。
「はるとおにいちゃん……あのとき、
すごくさむそうだった……」
◇◇◇
夕方。
森の奥で、また“脈動”が走った。
きらりが外殻を震わせる。
(……昨日より強い)
「きらり?」としのんが首をかしげる。
僕は笑ってごまかしたが、内心は静かに警戒していた。
◇◇◇
夜。
美園さんはしのんちゃんを寝かしつけ、
他の大学生グループの6人も眠りにつき、きらりは見守っている。
(……仲間が増えるのは悪くない。でも、あの脈動は……)
焚き火の火が、静かに夜を照らしていた。




