第20話 ギルド創設
ギルドを作るには街で一番偉いやつ、要するに諸侯とかそれに準ずる貴族とかにギルドを作る旨を説明し、代金を払ってその権利を得る必要がある。
で、どの街に作ろうか、広場もあるしここにでも作ろうか、でも治安悪いしなぁ、とティリッジの酒場でシャノンと話していたところ、近くで話していた冒険者の会話が聞こえてきた。
「ライトナムの冒険者ギルドもつぶれちまったしなぁ」
俺は目を見張ってしばらくその冒険者を見ていた。
ライトナムにある冒険者ギルドはカインがギルド長を務める、元職場しかありえない。
俺はその冒険者――栗毛でカールしている、若者――に近寄った。
「話の途中悪いが、ライトナムの冒険者ギルドってあのカインのか?」
「ああ、そうだ……ってそこにいるのシャノンさんじゃないですか。それにあんたルベルさんでしょ」
「そうだが、知ってるのか」
「俺ら、もともとあのギルドにいた新人ですよ。ほかの新人はルベルさんのこと馬鹿にしてましたけど、何度命を救ってもらったかわからない人によくあんな態度とれるなって思ってました」栗毛の前に座っていた赤毛の男が言った。
「ふたりがいなくなって初めてのダンジョン攻略遠征で冒険者もカインもズタボロにやられて回復もできないような状況になって死んでしまいましたよ。二人の力で遠征はもっていたようなものなので俺たちは参加しませんでしたが、あそこまでひどいとは……」栗毛がため息を吐いた。
「ギルドは今どうなってる」俺は尋ねた。
「カインのギルド資金の散財、税の滞納が発覚して、ダンジョンで死んでたカインをわざわざ生き返らせて諸侯が尋問の上制裁が下って、経営なんて全くできない状況になりましたよ。結局建物差し押さえの上ギルドの解散を余儀なくされました」
俺はシャノンを見た。
「おいシャノン。ライトナムにギルドをかまえるぞ。俺たちがいたあのギルドを作り直すんだ」
それからは結構トントン拍子に事が進んだ。
まずリリスのところから金勘定が得意なエルフを数人借りてきてギルドの建物の資産価値を計算して、諸侯に提出。ギルドの経営権を買って、建物を買いとった。
カインの行った税の滞納によって生じた不利益を何とか巻き返そうと考えていた時の諸侯ニコラス・サンドウィックはエルフの算出した資産価値に色を付けた金額で同意、ギルドの経営権のほうにも色を付けてやってほくほく顔で同意した。それだけ払ってもまだ金は有り余っていた。
「税の方も色を付けてもらえるとうれしいね」とか戯言をほざいていた。俺は適当に笑ってごまかした。契約書にサインをして、経営権を得て、建物の鍵を受け取った。
俺はギルド長になったわけである。全く実感がわかないね。
俺とシャノンはギルドの建物前に立っていた。
「息巻いて出てきた日が懐かしいですね」
「一ヶ月も経ってねぇだろ。ほら行くぞ」
俺はギルドの扉を開いた。
これだけ閑散としているこの場所を見るのは初めてだ。テーブルも椅子も隅のほうに重ねられていてパーティを探す歓談室は見かけより広々として見えた。
「ちょうどここですね、私たちが逃げたのは――」そういってシャノンが歩いていくと、頭をぶつけた。
「痛ーい」シャノンは額を押さえて恨みがましく俺を見た。
「ダンジョンそのままになってるんですけど」
「あ、忘れてた」
俺は即座にダンジョンを消去した。つまりあの日から今までこの受付前という邪魔な場所にデカい置物が放置されていたわけか。
「笑えるな」
「私のことですか」シャノンが額を押さえながら言う。
「ああごめん違う。独り言」
俺はギルド長が使っていた部屋に赴いた。あの日、俺がクビになった日を思い出す。
部屋はがらんとしていた。おそらく諸侯ニコラスはこの部屋にあった調度品をすべて売り払えばいくらか金は返ってくると思っていたのだろうが、残念だったな、全部偽物だよ。で、結構焦り気味に俺に建物を売り飛ばしたんだろうなぁ。
机と椅子だけがそこにポツンと置かれていた。俺はイスに深く腰掛けて顎を上げた。
「座り心地はどうですか」
シャノンが扉に寄りかかって尋ねた。
「まあ、悪くない。いまはまだね。カインみたいになったらどうしようね」
「私が殴ってとめますよ」
シャノンは笑った。
笑い事ではなかったが、俺は苦笑した。
ブックマーク、評価ありがとうございます。これにて第一章終了です。
次回更新は水曜日です。




