誰だ?
お久しぶりです。
※メタ発言のようなものがあります。
こういうのもやってみたかった…!←
後悔はしてません、楽しかったです(笑)
放課後。
秋乃と香月と章は、なぜかわからないが、炭酸の缶ジュースを片手に掲げていた。
『おい皆、今回こうしてるにはわけがある!』
『ほう』
『何だ』
香月はふふんと鼻を鳴らしてから、ニッと笑って言った。
『祝! 七十話突破! カンパーイ!!』
『……カンパイ』
『カンパイ──て、何が七十話突破なんだ?』
と章は首を傾げつつも、缶を口に運ぶ。
秋乃も一口飲んで美味しいと頷く。
香月は仕方ないな、というように缶を机に置いてから説明した。
『知らないのか? オレらの日常が、ついに七十話突破したんだよ。こないだ本谷がもうこんなに……って一人で呟いてた』
『へー、もうそんなにおれらの日常出てんだ』
『そうだよ、オレのあんな話やこんな話……! いやー、嬉しいやら恥ずかしいやら』
と香月と秋乃が普通に話を進めるので、章がちょっと待てと口を挟んだ。
『いやいや、おかしいだろ。お前ら何の話してんだ』
『え、おれらの日常の話でしょ?』
『そうだぞ章。何だよ、毎日オレらの日常密着されてんじゃん。まあ、毎日が形になるわけじゃないけどさ』
『そうそう。なんかもう慣れちゃったよね、教室の隅のカメラとか──』
と秋乃が教室の隅に目を向ける。
章もそっちに目を向けるが、そこにカメラらしき物は見当たらない。
『あ、家にもあるよね、あれ。部屋にも。あれいつ回収してんだろ。容量とか大丈夫なのかな』
『確かに。それ気になるわ』
『おい……、マジで何の話だよ、てかカメラとかどこにもないし、毎日密着って……どういうことだよ──?』
章が二人を見ると、二人はすっと章の後ろを指差して言った。
『『ほら、今も撮ってる』』
*
「──ていうな、夢を見た」
「へー」
「疲れてんじゃね?」
と章は秋乃と香月からそう言われ、そうなのだろうかと少し考える。
今日もいつものように、放課後の教室でだらだらしていた。
「てかさ、七十話突破って……。半端じゃない? 五十話とかにすれば良かったのに」
「確かに──。てか七十話より百話記念の方がインパクト強いのにな。てか保育の方なんかとっくに七十話突破してんじゃん」
「ほんとね。そっちでやればいいのにね。おれたちより先輩でしょ?」
「そうだよ、オレらより先に生まれたわけだし、なんなら本谷が学生の頃のやつだから大先輩だよな」
「でも松城平太は同学年だもんね」
「いや、もう松城は先輩になった。今高三らしい」
「へえ──」
秋乃と香月がまた夢の中のような話をするので、章はぽかんとする。
「これは……夢か?」
「何言ってんの、現実だよ。章だって香月が薬飲んだ日に言ってたじゃん」
「……あ、確かに──」
何故かわからないが、あの時は枠間違ってるぞ本谷、と思わず口から出ていた。
「てか……本谷って誰だ?」
「え? ……言われてみれば。今普通に名前出してたけど、本谷って誰だっけ」
「確かに、誰だろ──。てか松城とかもわかんないし……って、え? 何で知らない奴の名前フルネームで言えんだよ、怖っ、オレ怖っ」
と香月は自分の肩を抱いて青ざめる。
「はっ、もしかして、前世の記憶……?」
「それは無い」
「無いな」
と秋乃と章がひらめいた香月にズバッと言った。
「冷たっ、ちょっとはノってくれてもいんじゃないの?!」
「いや、流石に前世はないだろ」
「そうだよ、そういう設定もないしね、おれたち」
「いや……設定ってお前」
「だってそうでしょ、本谷もたぶん決めてないだろうし──」
「おいおい、怖いって、やめようぜ」
と香月が二人を止める。
「何で皆普通に本谷って名前出すんだよ……、で? 名前聞いても知らないって……怖すぎだろ、都市伝説かよ」
「いや、ここは学校だし、学校の七不思議じゃない?」
「知らないのに知っている、恐怖の名前──的な?」
秋乃にノった香月がそう言うと、秋乃と章がスン……と真顔になって、香月を見詰めた。
「おいおい、それのが怖いじゃん、やめろよ! オレだけのけ者にしないで!!」
「……さ、帰るか」
「だね──」
さっさとリュックを手にして歩き出す二人に、香月はおいと叫ぶ。
「待てよ! 置いてくなって!」
「……何か声した?」
「気のせいだろ──」
本当に無視して二人が進んで行くので、香月は若干泣きそうになる。
「え、マジで無視するじゃん、やめて!? 泣いちゃうよ?! オレ泣いちゃうよ!?」
追いかけながら香月が叫ぶと、やっと二人が立ち止まって振り返った。
「ったく、何してんだよ本谷」
「おいてくよ? 本谷」
「え……?」
自分に向けられていたと思った目線は、香月の後ろに向けられていた。
「ちょ……マジで……?」
そう呟きながら恐る恐る香月が振り向くと、そこには誰もいなかった。
「……っ、はああああ、びっっっくりしたあああ! マジで!!」
と前に向き直ると、秋乃と章は腹を抱えて笑っていた。
「あはははは、香月驚き過ぎ」
「ほんとな、必死かよ」
「っんの野郎……!!」
「まあまあ、落ち着いて」
「ジュース奢ってやるから──」
まあまあと二人に慰められながら、香月は二人と合流した。
結局、本谷が誰なのかはわからないまま、三人は缶ジュースを飲みながら帰るのだった──
秋・章・香(本谷って誰だ……?)
※作中の保育とは「築山高校保育ルーム」の事であり、松城平太はその主人公です。




