主人公に……?
お久しぶりです。
ゲームの中でなら、主人公に……?
この間、香月の提案でキューピッドになり切れなかった秋乃と、それに付き合った章。
そして今回、ゲームでならキューピッド、というか物語の主人公になれるというので、秋乃が持ってきた恋愛シミュレーションゲームをやろうと、放課後三人は一つの机を囲むように座っていた。
「とりあえず、先生に見つかったら即没収だから、人の気配を感じたらすぐ隠すこと。OK?」
「OK!」
「わかった」
香月と章が頷いたのを確認して、秋乃はゲーム機を真ん中に置く。
「なんか値段激安だったからかな、初めの方でやめた」
「ちなみにいくら?」
「五百円」
「「やっす」」
と聞いた香月と章は口を揃えた。
秋乃はまあまあと手を動かし、機械を操作する。
「まず、ヒロインは三人、ネタは二人かな」
「ネタ二人って何だよ」
「んー? 友だち枠と教師枠」
「そんな枠あんの?」
と章は驚く。
「友だち枠って、男?」
「そうそう。ボーイとラブ出来るんだな。教師枠は美人教師」
「え、何それめっちゃいい!」
と香月が目を輝かせる。
「オレは美人教師とウフフな展開を希望するぜ!」
「まあまあ、とりあえずチュートリアル見ていかないとね──」
と秋乃がスタートボタンを押した。
すると簡単な物語の導入部分が流れ始める。
『あなたは親の都合で引っ越しをすることになった。新しい環境に、友人、これから始まる物語はあなただけの物語──あなたの性別を決めてください。ただし、途中で変更することはできません。よく考えてから決めてください』
「……だって、性別どっちする?」
「もちろん男だろ」
「だな──」
香月と章の返事を聞いて、秋乃は男を選択する。
『それでは、物語を始めるうえで大切な名前を決めてください。こちらも性別と同様に、途中で変更することは出来ません。よく考えてから決めてください』
「名前かぁ、どうする?」
「わかりやすいのがいいよな」
「確かに」
と三人は少し考えてから提案していく。
「やっぱりわかりやすく皆の名前から一文字ずつとってやる?」
「それいいな」
「変にならなきゃなんでもいいだろ」
秋乃の提案に香月と章が頷いたので、秋乃が適当に進めていく。
「じゃあ、おれの【あ】と香月の【か】と章の【し】でアカシでどう?」
「いいぜ」
「おう──」
『アカシ、でよろしいですか?
それでは、あなたの人生、楽しんでください──』
画面が暗転して、場面が切り替わった。
住宅街と十字路のイラストを背景に、コメントが表示される。
『今日からこの街が、俺の新しい舞台なんだな』
「……待って、主人公舞台とか言うの?」
「主人公演劇部らしいよ」
と香月のツッコミに秋乃が取り扱い説明書に目を通して答える。
『すがすがしい朝、これから始まる学園生活に胸が躍るぜ』
「俺こんな奴が主人公だったらあんま関わりたくないんだけど」
「わかる。だからおれもここで電源切った」
と章に答える秋乃。
香月はそうでもないらしく、楽しそうに続ける。
「じゃあオレが進めてもいい?」
「いいよ」
「見てるから」
と秋乃と章の返事を聞いてから、香月が進めていった……。
ヒロインの選択、はぐくまれていく友情、たまにぶつかる試練……それを乗り越え、香月はやっと告白のシーンまで進んだ──。
『俺、今日はお前に伝えたいことがあって、呼んだんだ。俺の気持ち、聞いてくれるか……?』
『……うん。何──?』
「キター!! ここが一番の盛り上がりだろ!! よっしゃ、来い選択肢!!」
ポチッとボタンを押すと、画面に三つの選択肢が表示された。
『・あ、あの、好きですぅ! 付き合ってくださいぃ!
・ムフッ、あのぉ、俺とぉ、付き合ってくださぁいっ!
・無理ぃ、二人きりとか無理ぃ、でも好きぃ!』
「……。あれ? なんかオレが思い描いてた告白と違うんだけど」
「おれも初めて見た」
「やっぱ主人公ヤバい奴だったんだな」
と秋乃と章も画面を見て頷く。
「とりあえず一番無難なやつにするわ」
と香月は一番上を選んだ。
『アカシくん……。ごめんなさい!! 初めてあなたに話しかけられた時から、ずっと無理って思ってました……!!』
「……これも初めて見るんだけど、ギャルゲーってこういうもんなの?」
「いや、基本的に上手くプレーしてればハッピーエンドになるよ」
「特例だろ、これは……」
香月の問いに秋乃が答え、章は苦笑いする。
画面には『BADEND』という文字が表示され、スタッフロールが流れ始めていた。
「え……てかさ、最初から無理ってことはさ、ハッピーエンドとかありえないじゃん……、オレの努力は──?」
「ドンマイ。現実で頑張れってことだよ。ポジティブに考えよう」
と秋乃が香月の肩を軽く叩く。
「そうだぞ、二次元がダメでも、もしかしたら三次元でお前のことが好きだって言ってくれる女子がいるかもしれない」
と章も香月の肩を軽く叩く。
両方から肩を叩かれ、香月はなんでオレが慰められてるんだ……と思いながら二人に言う。
「──てかさ、こういうのって現実で出来ないから二次元に走るんだろ? だとしたら、現実でも二次元でも失敗してたら、もう救いようがなくね?」
香月の発言に秋乃と章は顔を見合わせてから、そっと視線を逸らした。
「……」
「……」
「おい、黙るなよ、こっち見て!! ねえ!!」
香月の悲しい声は二人に届かないのか、二人はずっと遠くを見ているのだった──
香月「こんな結末ならやらなきゃ良かった……!!」




