桜と乙女
明けましておめでとうございます。
そしてお久しぶりです、遅くなりました……。
「そういえば、桜の花びらを片手でキャッチすると、願い事が叶うっていうのがあるよな──」
教室の窓の外に目をやり、章がふいに言った。
くだらない話をしていた秋乃と香月が、それに反応して顔を外に向けた。
「「マジで?」」
「なんだその食い付きようは──まあ、聞いた話だからな」
「え、ちょっと願い事しに行こう。おれ今月発売したレデンツのフィギュア欲しいんだよね」
と章の付け足しを気にせず、秋乃が言う。
「オレもちょっとほしいのあるんだよな、行くか」
と香月ものる。
「叶うわけじゃないかもしれないんだからな、それだけは忘れんなよ」
「了解了解」
「わーってるって──」
秋乃と香月が頷いたのを見て、章は少し後悔しながら、外に向かうのだった。
下駄箱に行くと、ちょうど靴に履き替えた犀と朔に会った。
「お二人はもう帰り?」
「あぁ」
「そうそう」
秋乃の質問に、犀と朔が答える。
「これから桜の花びらゲットしに行くんだぜ」
「環境破壊か?」
香月の言葉に、犀が眉間にシワを寄せて、眼鏡を押し上げると言った。
「そんな事したら、指折るぞ?」
「なわけないだろ! 痛いな!」
と香月は自分の両手を背中に隠しながら言う。
ならいいがな、と犀は香月から目をそらして、秋乃と章を見た。
「……実際、それは叶うのか?」
「湯川(犀)も興味あるんだね」
「まあ聞いた話だから、絶対ではないけどな」
秋乃と章の返事に、犀は少し考える仕草をしてから頷いた。
「……。僕も行こう」
「うわ、湯川そういうの信じるタイプかよ〜笑えるわ〜」
「殴るぞ──」
からかってきた香月に鋭い視線を向けると、香月はキャーとわざとらしく悲鳴をあげて、朔の後ろに隠れる。
「犀、いいよ殴って。イライラを思いっきりぶつけて!」
さあ!と両手を広げる朔に、犀は軽く舌打ちをしてから言った。
「チッ……。お前じゃ意味ねんだよ、気づけ馬鹿が」
「あえての罵声……! でも、じらされてる感じでいい……」
うっすらと顔を赤くする朔を無視し、犀は続ける。
「こんなドMは置いて、行こうか」
「放置プレイ?! それも捨てがたい──」
「「「「…………」」」」
一人頷く朔を尻目に、四人は歩き出した。
「あ……、ちょっと──」
朔も少し遅れをとりながらも、四人の後を追った。
*
「あとは、風が吹いて花びらが舞うのを待つだけだな──」
桜の木の下に着いて、章が言った。
五人は風が吹いてくるのを待つ。
だが、こういう時ほど風は吹いてこないもので、五人はじっと桜を見上げていた。
「……吹かない」
と秋乃。
「木揺らしてみっか」
と香月。
「そしたら蹴るぞ」
と犀。
「ほんとに?!」
と一人違う意味で嬉しそうな朔。
犀はちらっと朔を見てから、はぁ……と溜め息を吐いた。
「……やめるか」
少ししてから、章が口を開いた。
「時間無駄じゃね? てか俺願いとかないし」
「章にはなくても、おれにはあるんだよ──」
桜を見上げたまま、秋乃が章に言う。
秋乃がそう言った時、風が吹いてきて花びらを舞い上がらせた。
章以外の四人が、舞って落ちてくる花びらを片手でキャッチしようと、必死に動き始める。
「頑張れー」
と章は少し離れて気の入ってないかけ声をかける。
四人は風の吹いている間、花びらに遊ばれていた──。
その頃ヒナミは、教室の窓から五人を見ていた。
「何してるんだろう……野嶋(朔)くんたち」
「またバカなことしてるんでしょ?」
「そうなのかな──、あ、柚子ちゃん。舛田(秋乃)くんもいるよ?」
「え?! どこ──」
とイスに座っていた柚子は勢いよく立ち上がり、ヒナミの横に立った。
秋乃は右手を伸ばして、花びらを掴もうとしている。
「頑張れ……!」
柚子がそう呟くと、それが届いたのか、秋乃は見事花びらをキャッチして、章に見せて笑った。
「ぁ、やった……!」
「ふふ……、良かったね、柚子ちゃん」
ヒナミにそう言われて、柚子はハッとしてから赤くなると、ふいっと顔を背けるのだった──
章「願い叶ったか?」
秋香犀朔「全く(きっぱり)」
これから不定期更新となります(^^;)




