義理でも何でも
季節感関係なく、バレンタインのお話。
バレンタイン。
女子たちは勇気を出し、男子はそわそわする日──。
柚子やヒナミ、関野はチョコを手作りしていた。
皆ちゃんと渡す相手は決めている。
三人は先生たち(忍者も含む)に渡してから、男子に渡しにきていた。
「はい、ハッピーバレンタイン──」
ヒナミを筆頭に、きれいにラッピングしてあるチョコを渡す。
「ありがとう。手作り?」
「そ、そうよ!」
と訊いてきた秋乃に柚子が答える。
「やったぜ! いっきに三個もゲットしたぜ!」
「香月、章と湯川はもうとっくに今ので五個目だよ」
と秋乃が言うと、香月ははっ?! と驚く。
確かに、章と犀は朝にはもう貰っていた。
「作るの大変でしょ?」
と朔が言うと、ヒナミが笑って首を横に振った。
「ううん、そうでもないよ。喜んだ顔が見れるから、私は楽しい」
「そうなんだ」
「うん──」
章と犀は貰ったチョコを見ながら、机に置いた。
「あ、じゃあ俺たちもお返ししなきゃじゃね?」
「そうだろうな」
と章に犀は眼鏡を押し上げながら言った。
「貰ったら返す。礼儀だろ」
「えー、チロルチョコ二つでいい?」
「それはちょっと……」
と関野は香月を見て言う。
作った側からしたら、それはあまりにも悲しい。
「じゃあ、お菓子お返しするね」
と秋乃が柚子のを食べながら言う。
「お、おいしい?」
柚子が窺うように秋乃を見る。
秋乃は飲み込んでから言った。
「うん。おいしいよ。ありがとう」
柚子はポッと顔を赤らめて笑う。
「良かった……」
そんな柚子を見て、秋乃以外の全員が思った。
ほんとに好きなんだな、と──。
「あの、篠山くんは……?」
「生徒会室じゃないか? さっき見かけた」
と犀が言う。
関野はありがとう、と言って、ちょっと行ってくるね、と柚子とヒナミに言って教室を出た。
*
「会長、チョコ貰いましたか?」
「お前には負けるけどな──」
と真壁はニャパラを見ながら言う。
生徒会室で、篠山と真壁は話していた。
「関野さんからですよ」
「いや、まだだな──」
すると生徒会室のドアが開かれ、関野が入ってくる。
「関野さん!」
「噂をすれば、なんとやら」
「こんにちは──えっと……会長、ハッピーバレンタインです」
と関野は篠山を通り過ぎて、真壁に渡した。
「お、サンキュー」
「いえいえ──」
それから振り返って、篠山の横に戻り渡した。
「ちゃんとあるから、年功序列ってことで……」
「ありがとう……! 最後に食べるね!」
「好きなのは最後までとっておくタイプか」
「はい!」
と真壁の言葉に篠山は笑って頷いた。
「なるべく早めに食べてください、手作りなんで……」
「了解」
「わかった!」
二人の返事を聞いて、関野は微笑んだ──
大人組。チョコの数。
山井「四つ(保梨先生にも貰った)」
保梨「六個(女子から)」
忍者「三つでござる」
理先「八つ貰ったよ、ありがとね(女子から)」
次回、ホワイトデーのお話。




