修学旅行 5
修学旅行編はこれで終わりです。
お土産も買い、皆満足顔で飛行機に乗り込む。
早いもので、もう帰る時間になってしまった。
それぞれ席に着き、思い思いに話をして盛り上がる。
「思い残すことは、ない」
ふっと笑って秋乃は窓の外を見る。
その隣で、香月はお菓子を食べていた。
「あっという間だったなー。なんか」
「そうだな」
とその隣の章はリュックを整理しながら頷く。
帰りの席は、三人揃った。
「今思ったけど、この状態がまさに、雲の中にいる、じゃない?」
と秋乃が窓の外を指差して言う。
行きの飛行機内では寝ていたので、見ていなかったのだ。
「確かに! 雲の中にいる」
「……お前、菓子こぼすなよ?」
お菓子をもぐもぐ食べながら言う香月に、章は眉間にシワを寄せて言った。
「当たり前だろ? 食う?」
「……いらね」
差し出された袋を手で払う仕草をして、章は目を閉じた。
犀と朔、柚子は同じ席になっていた。
「……あの、さ、何か機嫌悪くない?」
と真ん中に座る朔は、両隣でムスッとしている犀と柚子に訊く。
なぜか犀と柚子は合う度に、敵対しているように見える。柚子の香月に対する扱いとは違う何かが、犀にもあるのだ。
「「べつに」」
「……あのぉ、なんか気まずいんだけど──。言いたいことがあるなら、ちゃんと言った方がいいと……」
と朔が頬を掻きながら言うと、犀が口を開いた。
「じゃあ、先に言わせてもらうが──僕はべつに夏見をどうも思ってない。ただ、一つだけ言うなら……言葉遣いだけだ」
くいっと眼鏡を押し上げて、柚子を見る。
柚子もなら言わせてもらうけど、と口を開いた。
「私だってべつに、あんたのことなんてどうも思ってな」
「あんたじゃない。湯川だ」
「っ、そういう細かいとこ気にするのが私は嫌なのよ!」
「細かくない。礼儀だ」
「はあ?」
「人の名前を呼ぶのは礼儀だ。そんな普通のことを出来ていないじゃないか」
「なっ──?!」
ギャーギャーとやりとりを交わす二人の間で、朔は言わなきゃよかった……と思いながら、ゆっくり目を閉じた。
飛行機は順調に空を飛んでいる。
そして篠山は、今の席にぐっと内心ガッツポーズをした。
真ん中に篠山、窓際にヒナミ、右隣に関野が座っているからだ。
しかも、ヒナミは窓際に頭をもたげて眠り、関野はぐっすりと篠山の肩に寄りかかって寝ているからだ。
行きの飛行機では秋乃が寄りかかってきていたが、今は想いを寄せる関野が寄りかかってきているのだ。嬉しいこと極まりない。
「……ん──」
と関野は少し頭を動かし、またスー……と寝息を立てる。
肩に近い腕に、関野の眼鏡が食い込む。篠山はそっと眼鏡に手を伸ばした。
「…………よし」
上手く眼鏡を外せた。
前のイスに付いている簡易テーブルを出して、そこに眼鏡を置く。
「…………」
篠山はそっと関野の頭に手を伸ばしかけてから、やめた。
撫でてみたいが、気づかれたら大変だし、隣のヒナミが急に起きてくる可能性も無いことはない。そして、もし今撫でたのを近くの誰かに見られたら、後に関野に迷惑がかかるかもしれない。
それをふまえて、篠山は今の状態を大切にしようと思った。
まだ飛行機は、飛んでいるのだ。
山井と保梨、忍者は行きと同じく、並んで座っていた。
「終わりましたね」
「ですね……」
「そうでござるな」
しみじみと、三人は頷き合う。
「けが人、病人も出なかったし」
「そうですよね、それが何よりです」
と保梨は山井に頷く。
「帰ったら、もう日常でござるな」
「ですね──とりあえず、プリントとか溜まってるだろうから、それの確認だなぁ……」
やだやだと山井は息を吐く。
「はは。でも楽しかったですよね」
「そうですね」
「うむ──皆も楽しんでいたように見えたでござる。いい思い出になるでござろう」
忍者の言った言葉に、山井は頷き、保梨は微笑んだ。
飛行機はそろそろ、着陸しようとしている──
真壁「俺を、忘れないでくれよ?(不安)」




