修学旅行 3
遅くなりました。
篠山の発言は『自習時間』の話を見ていただければ、わかると思います。
二日目。
朝、お食事会場に集まり、朝食。
それぞれ指定された座布団に座り、黙々と口に運ぶ。
が、一人だけ騒がしいのがいた──
「うめえっ! 何これ!」
香月である。
いちいち違う物を口に含む度に、感動したような声を出すのだ。
「ちょっと香月うるさい……。朝なんだから、もうちょっと静かにできないの?」
と迷惑そうな顔をした秋乃が、玉子焼きを口に運ぶ。
「無理! 朝だからこそ、元気なんだろ」
「ないわ。うるせえ──」
章も迷惑そうな顔でご飯を口に運ぶ。
犀と朔は無言で、たまに、おいしい。と言って食べるくらいだ。
「湯川(犀)と野嶋(朔)を見習え」
「無理無理。オレ朝テンション高いし?」
と香月は章に手を振って言う。
「ごちそうさまでした──」
「ごちそうさまでした〜」
犀と朔は食べ終わり、時計に目を向けて言った。
「田端(香月)、あと十分で食べ終わるのか? この後は班別行動だからな。遅れたら……、わかってるよな?」
犀の目に、黒い光が宿った気がした。
「はい──」
香月は今までのが嘘のように黙々と食べるのだった。
*
「さて、これから班行動なんだが。どこか行きたい所は?」
「お菓子とか販売してるとこ」
と朔が手をあげる。
「アニメグッズ売ってるとこ」
と秋乃。
「どこでも!」
「任せる」
と香月と章。
「……近場から行こう」
と犀は地図を見てから歩き出す。
四人は、頼りになる〜と犀の後をついていった。
*
班行動、柚子とヒナミたちの班は、海を見に来ていた。
「きれいだね」
「ほんとね──」
ヒナミと柚子は、青く透き通る海を眺めた。
「夏見(柚子)さーん、羽山(ヒナミ)さーん」
すると、関野が走って来る。
「どうしたの?」
「班の人たちは?」
驚く柚子とヒナミに、関野は息を整えてから言った。
「班の人たちは、あっちにいます……。二人が見えたから、ちょっと、来ちゃいました……」
とはにかむ。
柚子とヒナミは顔を見合わせると笑って、
「じゃあ、写真撮ろうよ。私持ってきてるんだ」
とヒナミがデジカメを見せる。
「思い出の一枚ってことね」
と柚子は頷いて笑う。
「でも……誰に撮ってもらうの?」
他の班員は、それぞれ写真を撮り合っていて、空いてる人がいない。
「関野さーん!」
と、そこに篠山が走ってくる。
「いやぁ、修学旅行中は会えないかと思ったけど、会えてよかった──」
班で来たら、関野さんがいたから、つい来ちゃって……。と言ってる間に、三人は目配せしあい、関野が口を開いた。
「篠山くん」
「はい……?」
「写真、お願いしてもいいかな?」
「もちろん!」
カメラを受け取り、海をバックに三人を撮る。
「ありがとう」
「いやいや──」
とヒナミにカメラを返すと、ヒナミが気を利かせて言う。
「お礼に、写真撮ってあげるよ」
「え、ほんとに……?」
「うん──ね?」
とヒナミは関野を見る。
関野はヒナミと篠山を交互に見てから、うん……。と頷く。
「撮ってくれたから……」
「ありがとう!」
篠山は嬉しそうに笑うと、関野の隣に立ってピースサインをする。
「関野さん、ピースとかなんかしないの? もうちょっと笑って」
と柚子が口をだす。
「関野さん、嫌だった……? 嫌なら撮るのやめてもいいから」
と篠山が関野を見て言う。
関野は、そんなことないよ! と言ってから、恥ずかしそうに言った。
「男子とツーショットって、初めてだから……どうしてたらいいかわからなくて……」
恥ずかしそうに言った顔が可愛くて、篠山は笑って言った。
「やっぱり、関野さんは眼鏡あった方がいいや──」
「え……?」
「ううん──そんなの、さっきみたいに笑ってくれればいいよ」
「そっか……、だよね──」
と関野はクスッと笑ってから、カメラの方に向き直った。
「撮るよ〜? はい、チーズ!」
ヒナミのかけ声とともに、関野は笑ってピースサインをした。
「……じゃ、後日渡すね」
「うん。ありがとう──じゃ、もう戻るよ」
「私も戻るね、またね」
と篠山と関野は、反対方向に柚子とヒナミから離れていった──。
「……ふふ」
「どうしたの?」
写真を見ていたヒナミに、柚子が声をかけた。
「いや、良く撮れたなぁ、と思って──」
とヒナミは笑って写真を見せる。
ヒナミの見ていた写真は、関野と篠山が笑ってピースサインをしている写真だった。
*
旅館に戻ってきて、夕食を済ませた二学年は、部屋で自由時間を過ごしていた。
「明日には、もう帰るんだよなぁ……」
「そうだな。帰りの準備しておけよ」
と章が買ったお土産を整理しながら香月に言う。
秋乃や犀、朔も整理をしている。
「オレ……最後にやり残したことやってくるわ」
と香月がスッと立ち上がり、スリッパを履く。
「どこ行くんだ?」
「決まってんだろ──女風呂だよ」
どや顔でそう言い残し、香月は部屋を出て行った……。
自分が思い描くものに、心を膨らませながら──
眞壁「しかし、静かだな……(生徒会室)」
次回、香月は覗きを──?




