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自習時間

調べる。

 二学年全クラス、修学旅行に向けての事前学習が行われていた。

 パソコン室で調べたり、図書室で調べたり……。

 でも従う生徒と、やっぱり真面目じゃない生徒もいるわけで、この事前学習の自習時間は、ある人物たちには自由時間になる──


「ちゃんとやってるよな?」

秋乃(あきの)香月(かづき)には期待しない方がいいぞ──」


 とパソコン室で調べていた(しょう)が、訊いてきた(せい)に言う。


「……(さく)も居るから大丈夫だろ」

「どうだろうなー」


 カタカタとキーボードを打ちながら、章は画面を見ていた。


         *


「秋乃ー、本見つかったかぁ?」

「見つかんない」


 香月の問いかけに、秋乃はライトノベルを読みながら答える。


「ちゃんと探せよー、章に怒られんのはいいけど、湯川(ゆかわ)に怒られんのは嫌だろ〜」

「そう言いながら、香月だって探してないじゃん」


 とライトノベルから顔を上げて、秋乃はふらふらと歩いている香月に言う。


「だってー、性に合わないっていうの? 調べ物なんてめんどくせえ」

「それは章たちに任せとけばOKだし、おれたちはのんびりしてようよ」

「賛成ー」


 と香月は席に着いて伸びる。

 秋乃はライトノベルに目を落とした。


「……ちょっと、舛田(ますだ)田端(たばた)も調べてよ。犀たちに怒られるよ──」


 と資料を抱えた朔がやってきて、テーブルに置く。


野嶋(のじま)はそっちのが嬉しいんじゃないの?」

「え? うーん、まあそりゃ、犀の使えねえなっていう人を蔑むあの目を向けられるっていうのを考えたら、ちょっとワクワクしないでもないし、平井(ひらい)の怒りの籠もった目を見られるっていうのをふまえたら、そりゃやらない方が得だけどさ──今は自習時間だから」


 ときらきらとした目で語ってから、朔は席に着く。


「それは変わらないんだ……」

「ほんとな……」


 秋乃と香月は、さて、始めようか。と読み始める朔を、知ってるけどさ……と少し冷めた目で見た。


         *


「あら、舛田は?」


 パソコン室で、柚子(ゆこ)が章と犀を見つけて声をかける。


夏見(なつみ)は相変わらず秋乃の追っかけか」

「違うわよ//!」


 と柚子が章に吠える。


「そっちは羽山(はやま)がいないな。いつも一緒なのに」

「ヒナミは図書室よ」


 と柚子は犀に答える。


「じゃあ今頃、秋乃に会ってんじゃね?」

「え?!」


 章の一言に、柚子はおもむろに残念な声を出す。


「図書室行けば。会えるぞ?」


 と犀が眼鏡を押し上げながら言う。


「い、行かないわよっ//! ヒナミと約束したんだからっ──」


 ほんとはちょっと行きたいけど……! と柚子は自分のパソコンに戻った。


「……なぜ怒るのか。わからん」

「湯川にはわからないだろうな──」


 と犀に章が苦笑いで言った。



篠山(しのやま)くん、自分の班の所行きなよ」

「大丈夫大丈夫。許可もらったし、関野(せきの)さんの隣で調べるから──」


 と章たちより少し離れた所では、篠山と関野が並んでパソコンをいじっていた。


「……篠山くん」

「なに?」

「会長にお土産買おうと思うんだけど、何がいいと思う?」


 と関野は調べながら篠山に訊く。

 篠山は少し考える仕草をして、


「ちんすこうとか? 紅芋タルトとかいいんじゃないかな」

「そっか……。じゃあそれにしようか──」


 と関野は頷いて、眼鏡の汚れに気づいたのか、眼鏡を外して眼鏡ケースから眼鏡拭きを取り出して拭く。


「……関野さん」

「ん──?」


 関野は眼鏡を拭いたまま、篠山を見る。

 素顔の関野を見て、篠山は言った。


「ぁ……、可愛い──」

「……。はっ////?!??」


 みるみるうちに、関野の顔が赤くなっていく。

 そして眼鏡をかけ直してから、


「し、篠山くんっ、そういうのはいいから、ちゃんと調べて──!!」


 と関野は画面に視線を向けて、カタカタとキーボードを打つ。

 篠山は、照れてる関野さん可愛い!! 隣に座れてよかった──と思いながら、キーボードを打ち始めた。


         *


「……っ、取れないなぁ……」


 ヒナミは本棚の前で、本を取ろうとしていた。

 しかし身長が足りず、困っていた。


「もう一回──」


 と手を伸ばした時、取ろうとしていた本が、誰かの手によって取られた。


「はい、羽山」

「あ、ありがとう野嶋くん」


 受け取って、ヒナミは朔に礼を言う。


「どういたしまして──」



「何やってんだお前ら──?」


 離れた所から章の声がして、朔とヒナミは本棚から覗き見た。

 そこには、いつ来たのか章と犀がいた。


「お前ら、何悠長にラノベなんか読んでんだよ。ふざけんな」

「章も読む?」


 と秋乃が一冊差し出して言う。


「それ面白かったぜ」


 と香月もすすめる。


「読まねえよ。てか野嶋に全部任せてんじゃねえよ」

「テヘペロ」


 と章に秋乃がコツンと頭を叩いて、舌を出してみせる。


「…………」


 プチッと章の何かが切れた。


「……知ってるか? 自習時間にちゃんと調べなかった班は、放課後残って先生に奉仕しなきゃならねえの」


 章の言ったことに、秋乃と香月は、へ? という顔になる。

 それに加えて、犀も言う。


「それで、それにも従わなかった生徒は、反省文五十枚。……去年それを書いた不良一名は、トゲトゲしていた性格が書き終わってから丸くなって、優等生になったという」


 秋乃と香月の血の気が、サア──ッと引くのが、章と犀にはわかった。


「残り時間調べるのと、先生に奉仕するの、どっちがいい?」

「僕は調べる方がマシだと思うよ」


 と犀は眼鏡を押し上げる

 秋乃と香月は顔を見合わせて頷くと、ライトノベルを片し始めた──。


 

 それらを本棚から覗いていた朔は、ヒナミを見て苦笑いした。


「あはは。ついに来ちゃったな、犀たち」

「二人とも大変そうだね……」

「うーん。自業自得だから、仕方ないけどね……」

「そうなんだ……。でも、修学旅行楽しみだね」

「……そうだね、楽しみだ」


 と朔は四人を見てから笑った──

 




次回、修学旅行──


投稿は、再来週になります。

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