最後の
プール。
休み明け。体育の授業。
秋乃のクラスは、女子はサッカー、男子は最後のプールになっていた。
「見よ、この程よく付いた筋肉──」
と香月がプールサイドで仁王立ちして、秋乃と章に体を見せていた。
「香月何かやってたっけ?」
「特に何もしてない!」
香月はふんっと鼻を鳴らして、秋乃を見る。
秋乃はどうでもいいのか、プールに入った。
「……章の方が筋肉あるよ」
と肩まで浸かりながら、秋乃が章だって何もしてないけど──と章を見上げる。
「普通だ。普通」
と章もプールに入る。
「確かに……。オレより筋肉あるな──よし、じゃあクロール往復で、先に戻ってきた方が勝ちだ。秋乃もやるか?」
香月も入って、秋乃に訊く。
「いや、疲れるから浮いて待ってる」
と秋乃は手を振って断る。
「そうか。じゃあ章、勝負だ!」
「何で俺だ」
「近くに居たから!」
「…………」
章はそんな理由かよと香月を見る。
「まあまあ、勝った方がジュースおごるってことでどうよ」
と香月が笑って章の肩を軽く叩く。
「……絶対な」
「おっし。そうこなくっちゃね!」
二人はゴーグルをして、並ぶ。
「秋乃、声かけて」
と香月が秋乃に言う。
秋乃はあいよ、と言って口を開いた。
「位置について、ヨーイ、ドン──」
秋乃の合図と共に、二人が泳ぎだ。
秋乃は遠くなる二人を見送って、その場でぷかりと浮かぶ。
近くで騒いでいる男子の波で、秋乃も揺れる。
「……舛田?」
と朔がプールサイドを通りかかり、ぷかぷかと浮かんでいる秋乃を見つけた。
とりあえず、呼んでみる。
「何してんの? 舛田」
秋乃は聞こえていないのか、まだ浮かんでいる。
「ちょっと、無視ですか──?」
と朔が背中をとんとんと叩く。
すると、秋乃がぐわっと顔を上げて叫んだ。
「道連れじゃあああああ」
「うわあっ──」
ガシッと秋乃が朔の手首を掴んで、プールに引きずり落とす。
「ぶっはっ……何すんの?!」
「背中叩いたから」
「…………」
もっと他になかったのか? と朔は秋乃を見て思った。
そこに泳いで犀がやってくる。
「珍しいな。あの二人はいないのか?」
と秋乃に犀が訊く。
「ん? あ、今来てるよ──」
と秋乃が犀の左側を見る。
二人は負けず劣らず泳いできていた。
「え……これ──」
ヤバくないか? と犀が思った時、朔が動いた。
「危ないっ!」
「うおっ?!」
「「ぶほっ──」」
朔が驚く犀を押して、押された犀はそのまま香月と章に衝突。
「いてえっ!」
「ってえ!」
「…………」
ザバァッとプールから顔出して、痛がる章と香月。その近くで、無言のまま俯く犀。
「……朔、後でちょっと話し合おうか──」
笑顔なのに、目だけ笑ってない犀を見て、朔は笑顔になる。
「久しぶりに罵声を浴びせてくれるんだね!」
「チッ……」
犀は不機嫌な顔で、舌打ちをした。
「舌打ちも久しぶりだ!」
そんな朔を見て、秋乃は呟く。
「……野嶋、それがなきゃ普通なのになぁ──」
その後は、誰が長く息を止めていられるかなど、簡単なゲームをして最後のプールは終わった。
もちろん、朔はその後犀に呼び出され、戻ってきた朔の頬は、赤くなっていた。
だが、朔はなぜかにこりとしていて、むしろ犀がどっと疲れているようだった──
秋乃「やっぱり、達磨浮きっていいよね」
休日投稿です。




