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出掛けた先

関野は、他人のフリをする事にした。

 出掛けた先で、関野(せきの)秋乃(あきの)に声をかけられた。


「あの、関野さん」

「はい……? 舛田(ますだ)くん──」


 ちょっとした沈黙のあと、秋乃が口を開いた。


「ちょっと持っててくれる?」

「え……? はい──」


 と関野は秋乃から紙袋を渡される。

 ちょっと重量感がある。


「これは……?」

「今日発売のフィギュア──と、マンガ、ゲームなどなど。グッズかな」

「なるほど……」


 と関野は紙袋を見つめる。


「まだ買うのあるから、ちょっと見ててもらってもいい? ほんとは(しょう)とかに付き合ってもらおうと思ってたんだけど、ちょっと予定が合わなくて……」

「……それで私が偶然居たから、声をかけたと」

「そう──じゃあ、ちょっと適当に座って待ってて」


 と秋乃はタッと走っていく。


「え? ちょっ……」


 関野は、紙袋と共に残された……。


「…………座ろ──」


 と自販機の横にある、休憩用のベンチにとりあえず座る。

  

「はぁ……。まあ、買い物は終わってるから、いっか」


 と紙袋を横に置いて、関野は秋乃が戻ってくるのを待つ。 

 紙袋から見えるフィギュアは、ツインテールの女子だった。

 他にも、ガチャガチャが入っていたり、キーホルダー、ストラップなどなど……。

 関野にはあまり縁のない物ばかりだった。


「……オタク?」

「関野さん、ありがとう。もうちょっとよろしく──」

「え……。……」


 いつの間にかまた紙袋を持ってきた秋乃は、置いて走っていく。

 関野は止める間もなく、増えた紙袋を見つめる。


「…………」


 いくつ増えるんだろう……。そんなことを考えてから関野は首を振って、そんな増えても困る! と思うのだった。


 待ち続けて数十分。

 やっと秋乃が戻ってきた。

 両手に袋を持っている。


「関野さんごめんね、ありがとう。助かったよ」


 と袋をガサガサと漁る。

 そして、ペロペロキャンディーを取り出すと


「はい。見ててくれたお礼」


 と関野に渡す。


「あ、ありがとう……」


 と関野は受け取る。

 そして秋乃は紙袋を二つ両手に持って


「じゃ、おれはもう用は済んだから──」


 と歩いていく。

 関野はそんな秋乃を見送ってから、キャンディーを舐め始める。


「ん。イチゴ味だ──」 


 美味し。と関野はベンチから立ち上がる。


「……帰ろ」


 アメを舐めながら歩く。

 ふと、ある一定の距離を歩いてから立ち止まった。

 なぜか、点々とキャラグッズが落ちていたからだ。


「まさか……」


 と関野は顔を前に向ける。

 前の方で、秋乃がグッズを拾い集めていた。

 他の人たちも、拾うのを手伝っている。


「…………」


 何してんの?! 転んだの? 袋に穴でも空いてた!? と関野はどうしようか考える。

 すると秋乃が関野に気づいて、落としちゃった……テヘペロ☆という表情をする。

 そんな秋乃を見て、関野は真顔で落ちている物を拾い集めてから秋乃に渡すと、無言で立ち去ったのだった──




秋乃、金持ってんなぁ……(笑)

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