“わいわい”
わいわい。
会話文が長いです。
秋乃は、国語の補習を受けていた。
「あれ? 国語の補習おれだけですか?」
「そうだぞ。お前だけだ。ちゃんとやれよ」
「はい──」
と秋乃は席に着いて、山井がプリントを渡す。
「それ終わったら、見せに来い。で、丸が半分以下だったらもう一枚な」
「えー……まけてくださいよ、先生」
「誰がまけるか。これ以上まけたら補習の意味がなくなる」
と山井は教卓の前のイスに座る。
「ほら、やれやれ」
「はい──」
と秋乃は筆箱を出してやり始める。
すると、やり始めて少しして秋乃が口を開いた。
「そういえば先生、夏休み何してました?」
「ん? 夏休みか。……まあ、学校来て補習やって、家帰っての繰り返しだな。あとは先祖の墓参りとか、実家に顔出したりだな」
と山井は答える。
秋乃はプリントをやりながら、
「普通ですね」
と言う。
「おれなんか、章たちと課題やったり花火やりましたよ」
「普通で悪いな──へえ。花火か。夏だな」
「でしょう? でも、おれはゲームが一番好きです。一人でやるのが」
「皆でやれよ」
「いや、そしたら冒険出来ないじゃないですか」
と秋乃は山井を見る。
山井は、違うだろ。というように、
「皆でわいわいやるのがいいんだよ」
と一人頷く。
そんな山井に秋乃が、わかってませんね。というような顔して言う。
「先生、皆でわいわいやったら、近所から苦情来ます」
「どんだけわいわいしてんだよ」
「それだけわいわいしてるんですよ。章が怒ってわいわい、香月が叫んでわいわい、湯川が呆れてわいわい、野嶋が笑ってわいわい、おれが楽しくてわいわい……」
「湯川だけ違わないか……? てかわいわいが何かわからなくなってきた──」
と山井は額を押さえる。
「擬音語ですよ、先生」
「知ってるよ。騒がしい感じを楽しげに表したのが“わいわい”だろ」
「なるほど。じゃあ、今わいわいですね」
「そうでもないぞ?」
「わいわい!」
「いや、口で言うもんじゃないから──早くやれ」
「はい……」
つまんないな、と秋乃はやり始める。
山井は窓の外に目を向ける。
「……もう夏休みも終わりか」
「わいわいした夏休みでしたか?」
「大人になると、そんなわいわい出来ないんだよ」
「そうですか」
「ああ。だから、今のうちにわいわいやっとけ。すぐわいわい出来なくなるからな、わいわい」
「……お祭りは?」
「ワッショイ」
「先生ノリ良いですね」
「まあな、今のうちにわいわいしとこうと思って」
と山井が笑って言う。
「先生……! じゃあ、おれも家帰ってわいわいしたいので、もういいですかね」
「それは別だ」
「ですよね~……」
そこはちゃんと分けている山井だった──
夏休みが終わるので、休日投稿になります。




