猫はいいぞ!
新キャラ三人目。
会長登場。
「秋乃ー! どこだー!」
章は廊下を走って探していた。
秋乃はそれを、階段に身を隠しながら見下ろしていた。
「どこ行ったあ! 次自習だからってサボってんじゃねえよ──」
少し怒りながら、章は通り過ぎて行く。
「……ふぅ。当分大丈夫だな──大体午後の授業は眠くなるんだよなぁ」
と秋乃はそのまま階段を上っていく。
「今日は屋上に続く踊場で……ん?」
人を発見。
踊場に座り込み、堂々と男子がマンガを読んでいた。
「……」
それを見た秋乃は、そのマンガの題名が気になって仕方なかった。
「あの、何読んでるんですか?」
「ん?」
ちらっと秋乃に目をやって、表紙を見せながら言う。
「『ニャンニャンパラダイス No.4』」
「うおお! 読んでる人がいるなんて!」
「なに。君も読むの? ニャンパラ」
「はい! いいですよね! 初めて手に取った時、猫の良さが最大限に描かれてているのを見て、普段は動物マンガは読まないんですが、このニャンパラだけは立ち読みしてますよ!」
「買ってないんかい」
と猫大好き人間の眞壁がツッコむ。
「いや、最近マンガ増えすぎて、母さんに止められてるんですよね」
「それで猫好きを語ろうなんざ、十年早いぞ」
「いや、おれはべつに……」
「仕方ないな。今度貸してやるよ。初代ニャンパラ」
「マジっすか」
「ああ。で、お前誰だ」
「舛田です」
「何年?」
「二年です」
「なるほど。だから知らなかったんだな」
と眞壁はぽんっと手を打つ。
「あ。俺は三年の眞壁。授業はサボるなよ」
「いや、先輩もサボってるじゃないですか」
もうとっくに授業は始まっている。
「…………。まあ今日はいいさ。ニャンパラ読んでるやつに初めて会ったしな。語り明かそうじゃないか。今日はいい一日になりそうだ」
「え……いやおれは犬派なんで……」
「遠慮はいらんよ。さあさあ、君も猫好きの仲間入りだ」
とグッと親指を秋乃に向ける。
秋乃は少し後ずさるが、立ち上がった眞壁に捕まった。
「聞いていきなさいよ」
「いや、聞くならアニメの話のほうが……」
「猫の話だよ。決まってるだろ」
「いや、おれはアニメの話のほうが」
「猫の話、聞いてくよな?」
「いや、アニメの」
「聞いてくよな?」
「いや」
「先輩の言うことは〜?」
「絶対! ……ですか?」
「あたりまえだろ☆」
「…………」
眞壁の目は、有無を言わせない何かがあり、秋乃は静かに腰を下ろすのだった……。
*
「どこ行ってたんだよ」
「肉球の弾力、気持ちよさ、モフモフの毛……」
「は?」
教室に戻ってきた秋乃は、何かに洗脳されたように口を動かす。
「サラサラ、モフモフ、しなやかな尻尾……」
「おい」
「いつもはツンツン、たまに見せるすき……」
「どうしたんだよ!」
「ハッ──」
章に肩を叩かれ、秋乃は元に戻る。
「今、何かペラペラ喋ってた気がする……」
「喋ってたな」
「猫大好き人間に、サボってた間ずっと猫の良さを聞かされた……」
「あぁ、猫か」
「……それも先輩だった」
「マジかよ──」
*
章たちが教室で話している時、眞壁は満足げに生徒会の仕事をこなしていた。
「ふんふふんふふー♪」
「会長今日は機嫌良いですね。何かあったんですか?」
「篠山にはわからんだろうよ」
「なんですかそれー」
「ふんふふんふふー♪」
その日はいつよりも増して、仕事の終わりが早かったそうな──
猫、好きなんですよ。自分(^^)




