やる気
途中から、ちょっと形式が変わります。
ある日の放課後。
秋乃を含む五人は、教室で勉強をしていた。
「あー……やる気出ねえー!」
香月が、シャーペンを口と鼻の間に挟んで、頭の後ろで手を組む。
「お前はいつもそうだろ」
章がシャーペンに芯を足しながら香月に言う。
「だってー、やる気ないんだもんよ。仕方なくね?」
「やる気ースイッチ君のはどこにあるんだろう〜。見つけーて、あげるよ〜。君だけのーやる気スイッチ〜」
と秋乃が歌う。
「見つけてくれぇぇ〜」
「始めれば、おのずとノってくる。だからやる気スイッチ何ていらないだろ」
と終わった犀が眼鏡を押し上げる。
「あれだろ、湯川は毎日やる気スイッチ入ってるもんなー。ついでに、夜のヤる気も……」
「何だ? 田端」
犀は手の関節をパキパキと鳴らす。
「いえ! 何も!」
「そうか。卑猥な表現しようと思うのなら、僕に殴られるのを承知して言えよ?」
「はい……」
香月はシャーペンを持って、プリントと向き合う。
「犀」
「ん?」
朔が犀を呼ぶ。
「やる気スイッチ押して」
「……ちゃんとやれ──」
目を輝かせて言った朔を、犀は軽く受け流した。
「やる気ースイッチ、君のはどこにあるんだろう〜。見つけーて、あげるよ〜、君だけのーやる気スイッチ〜」
「ちゃんとやってんのかよ──って真っ白じゃねえか」
「めんどくさいんだもん」
と秋乃はシャーペンを振る。
「頑張れよ。終わったらガチャガチャ一回分の代金やるから」
「え? ほんと?」
「ああ」
「やった! 頑張ろ──」
と秋乃はさくさく進めていく。
「できるなら最初からやれよ!」
「章、オレにも何かくれ」
「はあ?」
「そしたらやるから!」
「じゃあジュースな……」
「おっしゃ! 香月いっきまーす!」
とまた、秋乃と同じようにやり始める。
「こいつら……物目当てかよ──!」
「物ならまだいいじゃないか……」
と犀は朔の方を見ないようにして、章に言う。
章は、目を輝かせて犀を見る朔を見て、ああ……と頷いた──
*
柚子とヒナミの場合──
「柚子ちゃんは、舛田くんに応援されたら、やる気でる?」
「はあ////? 何言ってるの!?」
「なんとなく。やっぱり、好きな人に言われたら、やる気でるよね!」
「それは、そうなんじゃないの////? 私は知らないけど──//」
と柚子はそっぽを向く。
そんな柚子を見て、ヒナミは笑う。
「ヒナミはどうなのよ//」
「え? 私は……別に──でも、彼ができたら、彼に群がる女子をどうしようか考えとく」
とヒナミは笑った──
*
山井と保梨の場合──
「やる気って、必要ですよね」
「そうですね。保梨先生はやる気どうやって出しますか?」
「そうですね、これが終わったら何かご褒美とか──」
と保梨はボールペンを顎に当てて言う。
「でも、やっぱり一言もらえるだけで頑張れますね」
「ああ、確かに──じゃ、そろそろ授業なんで」
「はい。頑張ってください」
「はは。頑張ります──」
と山井は笑って、保健室から出て行く。
そして、保健室を出るちょっと前。山井は振り返って、
「保梨先生も、書類まとめ頑張ってください」
と軽く手を上げて、山井は出て行った──
「はい!」
頑張ります! もう頑張りまくります! その一言だけで今日一日やり抜けます!
と保梨は内心なりながら、書類をまとめはじめるのだった──
忍者「拙者の出番はいつでござろうか……」
休日投稿です。




