焼肉定食
遅くなりました。
焼肉定食、
昼休み。山井と保梨は、この前約束したとおり、食堂で焼肉定食を頼んでいた。
「席は空いてる所でいいですよね」
「はい。大丈夫です──」
山井が先を歩き、保梨が後に続く。
端の席を指差して、
「あそこ、でいいですか」
と山井は振り向く。
「はい、どこでも──」
と保梨は頷く。
「……ここの焼肉定食、美味しいですよね」
「そう、なんですか──?」
席に着きながら、保梨は言う。
「焼肉定食、食べたことないんです……」
「そうなんですか。もったいないな、美味しいのに──でも、今日食べるからわかりますよ」
パキッと山井は箸を割る。
「そうですね//!」
保梨も箸を割り、いただきます。と食べ始める。
「……うん! 美味しいですね//」
「でしょう? ここの焼肉定食が、一番好きです」
と笑って頬ばる。
目の前で子供のように食べる山井を、保梨は笑って見る。
「……ん、どうしました?」
「ぇ? あ、いえ。美味しそうに食べるなぁと……」
「あは、いや、美味しいですし。保梨先生も、温かいうちに食べた方がいいですよ──」
とまた箸を動かしはじめる。
「そうですね──」
保梨も、黙々と食べる。
たまに山井を見て、ああ、新しい山井先生の一面が見れて幸せ……//と一人ときめいていた。
食べ始めて少しすると、柚子とヒナミがやってきた。
「隣いいですか?」
ヒナミが水筒とお弁当を掲げて見せる。
その後ろから、柚子も顔を覗かせた。
「いいよ」
「おお──」
保梨と山井は、快く頷く。
「失礼します」
二人は、向かい合うように座った。
山井の隣はヒナミ。保梨の隣は柚子が座った。
「珍しいですね、先生たちが一緒にお昼とってるの──」
ヒナミがお弁当を広げながら訊ねる。
「ん。まあな──」
「仲良いんですね」
柚子がご飯を食べながら言う。
「ん? まあ、普通だろ」
「そうなんですか? 普通だったら食べたりしますか?」
柚子の質問に、山井はチラッと保梨を見た。
保梨は一瞬ドキッとして、うつむいた。
確かに、あの時は勢いで誘っちゃったけど、山井先生は舛田くんがいたから断らなかったのかもしれない……頭の中で、マイナスな考えが保梨を襲う。
実は今日も、嫌々付き合ってくれてるんじゃ……? 会話だってあんまり弾まなかったし……、迷惑だったりして──
保梨は恐る恐る顔を上げて山井を見た。
山井は普段と変わらずに言った。
「じゃあ、仲良いのか。ね? 保梨先生」
「え……//あ、そうですかね? 良いんですかね?」
保梨はちょっとおどおどする。
「仲良いですよ。私たち来るとき、見てて楽しそうに話してたし。ね、柚子ちゃん」
「そうね──」
と柚子が頷く。
保梨は、楽しそうに見えてたんだ……//! とちょっと嬉しくなる。
「んじゃ、そろそろ戻りますわ。保梨先生はどうしますか?」
授業の準備しないと、と山井は席を立つ。
「あ、行きます──」
と保梨も立ち上がる。
「じゃ、授業に遅れないようにな──」
とヒナミと柚子に忠告して、山井たちは歩き出した。
「……焼肉定食、美味しかったです」
「そうですか、気に入りました?」
「はい! また食べたいです」
「じゃあ、また食べましょうか」
「……いいんですか?」
「え?」
と山井は何が? というように保梨を見る。
「今日、つまらなくなかったですか……?」
「つまらなかったから言いませんよ──」
と山井は苦笑いする。
「じゃ、また。準備してきますんで──」
「あ、はい。また……!」
職員室に向かう山井の後ろ姿を見送りながら、保梨はポッと頬を染めるのだった──
秋乃「新境地開拓……」
章「やめろ──」
休日投稿です。




