山井先生と保梨先生
※危ない表現があるかもしれませんが、そっち系の話ではありませんので、安心してください。
「どうも、保梨先生──」
「山井先生──! ど、どうなされたんですか//?」
ある日の昼休み。山井は保健室に来た。
「いや、どうもなされてないんですけどね。保梨先生は、お昼もう食べました?」
「お昼ですか……?」
「はい」
「食べましたけど……」
「そうですか──」
と山井は困ったな、と頭を掻く。
「食べてなかったら、一緒にどうかと思ったんですけど……」
「えっ……」
「なら仕方ないですよね。でも、実は俺もお昼食べたんです──」
「じゃあ、どうして……」
山井は保梨を見つめて、手を取る。
「……ぇ////?」
「保梨先生を……あなたを食べに来ました──」
「そ、そんなっ////山井先生っ?!」
「保梨先生、俺が好きなんですよね?」
「え、ええっ……//!?」
山井は保梨の顎に手を持っていき、クイッと軽く上に向ける。
そして、ゆっくりと顔を近づけていく。
「……っ////」
保梨が目を閉じて口をキツく結ぶ。
そして、山井の唇と保梨の唇が付きそうになった瞬間。
一番奥のベッドから、秋乃が顔を覗かせた。
「先生、そこはベッドに」
「やっぱりそこか。舛田。てかベッドにってどういう意味だ──」
と山井はパッと保梨から手を離し、秋乃を見る。
保梨は、何がなんだかわからないと言うように、山井と秋乃を交互に見る。
「お前、課題めんどくさいからって平井の丸写しすんなよ」
「おれは丸写ししてませんよ」
「答え一緒だったぞ」
「丸写ししたのは香月です」
「何自分でやらないで人のを人に写してもらってんだコラ。めんどくさくても自分でやれ」
「自分で写せばいいんですね!」
「そういう問題じゃないんだよ。お前、後で職員室来いよ」
「えー……」
「えーじゃない。授業中寝てるし、単位やらんぞ」
「そんなぁ──」
と秋乃は、困りますよと苦い顔をする。
そして、今まで黙っていた保梨が秋乃に訊く。
「舛田くんいつからいたの?」
「先生が、用事があって一回出て行った後から、ずっといました」
「……え?」
「はい。あの、四時間目から」
「何してんだ舛田」
と山井が額に手を当てる。
「サボってました。ひさしぶりに」
「ひさしぶりに、じゃねえよ。職員室来い。もう連行だ──」
と秋乃の腕を掴む。
「えっ、あ、ちょっと……先生勘弁してください。お昼まだなんですよ」
「安心しろ。課題っていう、おいしいおいしいご飯をやる」
「それ紙ですよね、ヤギじゃあるまいし……」
「じゃあ今日からお前はヤギだ──」
と山井は秋乃を引っ張って歩いていく。秋乃は嫌だ〜と抵抗しながら、保健室から引きずられていった。
「……はぁ──」
保梨は、今あった出来事があっという間だったので、一人ため息を吐いた。
「保梨先生──」
「はいっ?」
まだ近くにいたのか、戻ってきた山井がちょこっと顔を覗かせた。
「お邪魔しました」
「あ、いえ。大丈夫ですよ……。あの──」
「はい?」
山井は、ちゃんと保梨と向き合う。
秋乃もちゃっかり顔を覗かせる。
「今度、お昼どうですか//?」
「いいですね。学食で焼肉定食でも食べますか」
「っはい!」
「それじゃ、今度──」
山井は、ドアにすがりつく秋乃を引っ張っていった。
保梨は、胸の前に手を持ってきて、キュンと手を組んだ。
「……ウフフ。約束しちゃった──」
「センセー。トイレットペーパーください! ん? センセー何か良いことありました?」
女子生徒が、保梨を見て首を傾げる。
「ん〜? 何でもない! はい、トイレットペーパー」
「センセー変なの〜。もしかして、彼女できた? あ、でも、センセーだったら、彼氏か──」
冗談ですよ〜と笑いながら、女子生徒は保梨からトイレットペーパーを受け取る。
「ウフフ。どうかしら?」
「えー? 変なの〜。じゃ、ありがとうございました!」
「はい──」
その日、保梨は一日うきうきとしていた。
そして、保健室に来る生徒たちに良いことあった? と訊かれる度に、笑顔で何でもない! と答えるのだった──
休日投稿です。




