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String link  作者: 初瀬姫
String link・Ⅴ
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新橋姉弟

 

 掃除道具を片付け、ちょうどシンタがヒサトを連れて戻ってきた。

 フェルと新橋が俺たちに話がある、ということを話しながら手っ取り早く着替えをすませ、校庭の裏庭に向かう。

 向かう途中、やっぱり話は広がっていく。

「あー、ちくしょおぉ……。フェルと新橋、いつの間にそんな仲になってたんだよぉ?」

 やっぱりこういう具合に話は広がっていく。

「いつからかはわからないね。でも、フェルがここ最近変わったのって、新橋が原因だからじゃない?」

「マジかよぉ? やってらんねぇー」

「やっぱりシンタは羨ましがったね」

「当たり前だろ、ナルミ。フェルが彼女作ったら、見に来る女子が減るだろ? どうすんだよぉー」

「いや、それはそれで羨ましい感じじゃない?」

「バッカだなぁ。中には俺を目当てでくる女子がいるかもしれねぇだろ?」

 ありえないにジュース一本。

「あっははははっ。シンタはねぇだろ」

 お? ヒサト、意見が合ったな。

「ああっ!? 何だと、ヒサトッ!? てめぇ、またプールで溺れさせられてぇのかっ!?」

「マジ勘弁しろよ、童貞」

「ど、童貞ってっ。勘弁させる気無いだろっ、てめえっ。てか、童貞はてめぇもだろっ」

「シンタ。お前、フェルの青春の第一歩であるこの日を素直に祝ってやれよ。それが青春だろ?」

「青春バカは口を開くんじゃねぇよぉ」

「あっ!? 青春をバカにするとはいい度胸だ!」

「童貞も一つの青春じゃね? シンタは童貞の青春が一生続くだろーけど」

「ああっ!」

 二人が睨み、一人がヘラヘラ笑う。

「こらこら、やめなさいサル三匹ども」

「そうだよ。そろそろ裏庭に着くんだから、ケンカはよそうよ」

 機嫌が治まらないシンタ。憮然とした態度のトシハル。ヘラヘラ顔のヒサト。

 三人、いや実質二人は一先ず手打ちといった感じ。納得はこれっぽちもしてないけど。

 何やってんだかなぁ。

 そうしているうちに裏庭に着く。

 裏庭に着くと、フェルと新橋。新橋の後ろにあとに……もう一人……?

 ん? もう一人?

 俺たち五人の足が止まる。

「お、おい……? 女子が、二人いるぜ……?」

「……そ、そうだ、ね」

「……それも一つの青春か」

「二股ってやつ? 修羅場、修羅場」

 ヒサト、軽はずみなことを今言うのはやめてくれ。

 それとお前らよく見なさい。一人は〝男子〟だ。制服が男子用の制服を着てる。

 ……しかし、顔立ちは女の子みたい。どことなく新橋に似ている。

「来たね、みんな。待っ……」

「フェ、フェル! 見損なったぞ、てめぇーっ!」

「これはどういう状況なのかな……」

「だが、これを一つの青春として認めていいものか。うぬぅ」

「見物してればいいのかー?」

 こいつらは何か色々と話が飛んでるなぁ。あれ?

「みんな、ちょっと……」

「お、落ち着いてよ。あなたたち、何か勘違……」

「新橋の弟か」

 慌てるフェルと新橋を気にせず、俺は新橋の後ろにいる奴が誰かを思い出す。

「「「え?」」」

「あ、ホントだ。一年の〝スオウ〟くんじゃん」

 ヒサト意外の面がマヌケだった。

「ど、どうも……」

 新橋の弟――スオウくんが、弱りきった子犬のような小さな声で挨拶らしきものをした。

 萎縮して相変わらず小さい声だ。この先、剣道部をやっていけるのか一応先輩として心配を抱かざるを得ない。

「おっ。おー、おー。そうだそうだ。弟くんじゃねぇか」

「な、なーんだ。ちょっとビックリしたよ」

「そういうことは、やはり青春として許せんよな」

 思いだしたようで口が軽くなる三人。

「何? お姉ちゃんは渡さないぞ系? リアルでやっちゃうの、そいうの?」

 ―――……。

 ヒサトの一言で俺たちの時間が凍りつく。

「一人一発な」

 俺が合図となり、俺、シンタ、ナルミ、トシハルの順でヒサトを殴って気絶させる。

 数十分は起きないだろう、これで。

「えっと、新橋さん? その、ごめん」

 フェルは困惑しつつ謝る。

「……この人たち大丈夫か心配になってきた」

 新橋はそれ以上にもっと困惑していた。

 いや、申し訳ない気分です。ごめんなさい。


 初っ端から色々あったけど、色々の大ポカ(ボケヒサト)をナルミとトシハルに見張らせて気を取り直す。

「で、こんな所まで呼んで話ってのは?」

 困らせて迷惑かけた新橋姉には努めてにこやかに話しかける。

「新橋さん」

「う、うん」

 フェルに促され、新橋姉が口を開いた。

「……実は弟のスオウのことなんだけど」

「うん」

 まあ、一緒にいるってことはそれしかないね。新橋姉自身のことなら、さっき体育館で話しただろうし。

「この子ね……。誰かにイジメられているかもしれないの」

 ……ん?

「イジメだぁ? 誰だそんなくだらねぇことしてるやつぁ? 呼んでこいっ」

「イジメは青春ではない。そんな奴はみっちり青春がどういうものか教えてやるべきだっ」

「シンタ、ちょっと落ち着きなさい。トシハルはちょっと黙ろう」

 一々感情的に反応せんでいいし、何でもかんでも青春と絡めないでくれ。ややこしいから。

「でもよぉ、レンヤ」

「イジメと聞いてしまったからには、青春的観点からして黙っているこはできん」

 青春的観点って、なんぞよ?

「まだ冷静に聞けるレベルの話だろって言っているんだ。新橋弟の話も聞いていないんだからな。あと、トシハルは黙れ」

「ま、まあぁ、そうだけどなぁ」

「黙るのも青春か。一理ある。よし、黙ろう」

 俺も大概沸点低いけど落ち着こう。トシハルは黙ってくれるなら、理由はもう何でもいいよ。

「話、続けてもいいかな……?」

「ああ、何度も悪い。続けて、新橋姉」

「といっても、話すより見てもらったほうが早いから……」

 新橋姉は自身の後ろに隠れている弟を前に引っ張り出す。

「モ、モエギお姉ちゃん……!?」

「あなたが見せた方が早いでしょ」

「い、いやっ、いやだぁ」

「大人しくしなさいっ」

 ジタバタして抵抗する新橋弟の衣服を新橋姉が無理やり掴む。

 新橋姉の下の名前、〝モエギ〟って言うんだ。初めて知った。

 てか、規制が掛かりそうな構図に見えるんだが、何とかならんのかなぁ……?

「うはっ。姉に襲われる弟の構図。誰得?」

「ヒサトッ」

「あ、ご、ごめん。黙っておくから」

 思ったことが咄嗟に出たヒサトをナルミが一喝。ヒサトは口を手で押さえた。

 ごめん、ナルミ。俺もヒサトが言ったこと一瞬思ったわ。

「脱ぎなさいっ」

 心の中で謝っていると、便橋姉が新橋弟のシャツを剥ぎ取る。シャツの下のアンダーシャツも脱がされた。

 泣きそうな新橋弟の裸――打撲傷がある上半身が露わになった。

 うわぁ、お腹かよ……。

「やめてってっ!」

「きゃっ!?」

 新橋弟がシャツを奪い返し、新橋姉を押して倒して転ばせた。

 アンダーシャツだけ地面にゆっくりと落ちると、泣いていた新橋弟は、新橋姉のことなど目もくれずに一目散に走って去っていった。

 ――……。

「だ、大丈夫、新橋さん」

「いたたた。うん、大丈夫。千歳くん、ありがと」

 フェルが手を貸して新橋姉は立ち上がる。

「あの弟くん、姉貴を転ばせといて一目散に逃げやがったな」

「だが、無理やりやられたらそうなるだろ?」

「こんな大勢に上半身見られて、恥ずかしいっていうのはあるだろうね……」

 まあな。新橋姉のやったことは、やや強引過ぎだったな。

「い、家に帰ったら謝るわよ。で、それよりあなたたち、ちゃんと見てくれた? スオウの傷?」

「打撲傷がけっこうあったなぁ。けどよぉ、新橋? あれぐらいの打撲傷、剣道やってりゃ日常茶飯事だぜぇ? 剣道部のお前ならそれぐらいはわかんだろ?」

「俺もあれぐらいある。青春の打撲傷」

「そうだね。あれぐらいだったら普通だと思う。イジメとは関係ないんじゃないかな?」

 三人にそう言われて新橋姉は不服な表情を見せる。

 言い返したいけど新橋姉自身にも確固たる確証が無いのだろう、口をモゴモゴさせるだけで言葉は出てこない。

「レンヤはどう思った?」

「新橋弟、イジメられているかもしれない」

 フェルが訊いてきたので、俺は簡潔に述べた。

「「「「ッ!?」」」」

 フェルとヒサト意外の面々が瞬時に険しい顔つきへと変貌。

「いや、一斉に俺を見るなよ?」

 見ても愛想笑いの一つもしてやらないぞ。

「いやっ、驚くだろ普通よぉっ」

「そう言われてもなぁ。身体見た時、そう思った。それを言っただけだし」

 驚く要素がわからない。

「湊くん!? どうして思ったの!? ねぇっ!? ねぇってばっ!?」

 新橋姉、落ち着け。俺を揺さぶっても、俺は早く答えれるわけじゃない。

「落ち着いて、新橋さん」

 フェルが俺を揺さぶる新橋姉の間に割って入った。

 新橋姉の表情が必死だ。新橋弟より、こっちの方が俺は驚いたわ。

「どうしてそう思ったんだ、レンヤ?」

 落ち着いているフェルが新橋の代わりに訊いてくる。

「傷の場所」

「傷の場所?」

「そう。剣道で打撲傷が残るのって、腕や肘が多くて、あとたまに脇の下とか胸の上辺りだろ?」

「ああ」

「でも新橋弟、〝お腹〟に打撲傷があったんだ」

「「「「「ッ!?」」」」」

 それだけでヒサト意外の全員が理解した。

 理由は防具をつけている胴の部分――お腹にハッキリと打撲傷が残るのはおかしいってこと。

 残るとしたら防具をつけていない状態で打たれたってことだけど、そんな危ないことをさせている所を、部活で見たことも聞いたこともない。

 だとしたら少しは疑わざるを得ない。

「そ、そうなのね。やっぱり私が思っていた通りだったってことか……」

 いや、確証はないよ、新橋姉。

 けど、新橋姉はショックとか不安とか心配とか悲しみとか、もう色々なものが混ざりに混ざりすぎて形容し難い雰囲気に陥る。

 そんな新橋姉の雰囲気を察知してか、みんな黙り込んでしまった。

 ……空気、重っ。

 これはどうしたもんかなぁ……。

 ハッキリ言って、先生が頼りにならない、というのが一番の問題。

 どの先生も、この手の問題には触れたくないっていう感じの先生ばかり。事務的なただの教職員だしなぁ。

 次にイジメたのはどこの誰か、ということだけど……。

 同じ学校の生徒だろうと他校の生徒だろうと、探すのは時間が掛かる。

 それに今は夏休み。二十四時間、見つけるまで新橋弟を見張っておくわけにもいかない。

 最後は、新橋弟自身……。

 新橋姉に対する接し方を見ても、これこれこう何ですよ、と簡単に話してくれるっていうのは期待できないだろう。

 ましてや今さっきあったことが尾を引いて、話を訊こうと近づいたら逃げ出す可能性しかない。

 ここは多少の時間は掛かっても、新橋弟を見張っておくのが現状の打開策なんだろうなぁ……、

「なあ? 俺、そろそろ喋ってもいいか?」

 俺が考えていると、ヒサトが口を開く。

「……こんなときに何だよぉ? バカなこと言いてぇなら、向こう行へ」

 シンタがシッシッと手を振って向こうへ行けのジェスチャー。

「剣道部一年に、新井、岸村、多田野、吉川。その四人いるじゃん?」

 ……ん?

「ああ? あいつらがどうしたよぉ?」

 めんどくさそうにシンタが一応訊く。

「スオウくんをイジメている奴ら、そいつらかもしれないよ」

 ん!?

「そうか、そうか。イジメている奴らはそいつらだっ、えっ!? はあぁあぁっ!?」

 ……ヒサト……どうしてそんなことを……?

「て、てめぇ、適当なこと言ってんじゃねぇよっ」

「適当じゃねぇよ、シンタ。前々から怪しいって思っていたし。そういうような場面を何度か見た覚えがある」

「ああっ? 見たんだったら言えよっ。何やってんだっ?」

「イジメだっていう証拠を見せなかったんだよ、あいつら。俺が怪しいなぁって思っている間は絶対にそういうのやらねぇし。やっているところを見つけたと思ったら誤魔化すしな」

「それでもそういうのはよぉ、俺たちに言っておくべきだろ?」

「憶測のことなんだから意味ねぇだろ? 言っただろ? 証拠がないって」

「うっ……」

「スオウくん自身、イジメられている、とはハッキリ口に出して言わないさ。それを今すぐ訊いたところで、スオウくん自身が違うって言っちまったら、スオウくんにそれ以上踏み込めなくなるぞ?」

 ヒサト……お前……。

「だから今この場で、スオウくんがいないこの場で、やったかもしれないと思う奴らの名前を言っただけ。スオウくん自身は何も言わなかった、けどあの傷と俺の言ったことがあれば、それは一つの足がかりになるんじゃねぇか?」

 お前、何か変なモノ食べたんじゃないか?

 俺の知っているヒサトは、こんなマジメなことをマジメに言える奴じゃないぞ? 笑かしているのか?

「そうだね。確かにヒサトの言う通りだ。俺たちに言わなかったことで言い合いしても仕方ないよ。大事なのは、新橋弟の傷とヒサトの言ったことを足がかりにするべきだね」

「さっすが、ナルミ。勉強はできねぇくせに物分りが良い」

「一言多いよ、ヒサト」

 まあ、そういうことを悪気も無い感じで言うのがヒサトクオリティだからな。

 ん? 新橋の様子がおかしい……。

 俯いて顔は見えないけど、肩が僅かに揺れてる。

 これ、やばいな。と思った俺は新橋の背後にこっそり近づく。

「となると、その四人がイジメているところを押さえなければいけないな。どうする? 一応、先生に話しておくか?」

「無駄無駄。やめとけ、トシハル。先生なんてこの手のことは役に立たねぇよ。特にうちの学校の先生は」

 ただの教職員だもん。頼りになるわけない。

「シンタの言う通りだね。証拠が無いわけだし、変に先生の方で事が大きくなれば、落ち着いたあと更に新橋弟のイジメが酷くなるかもしれないよ」

「だからどうった、ナルミ? さっきから珍しく頭使いやがって。笑かしているのか? あはははははっ」

「ヒサト……。ヒサトがマジメに話していた姿も、今となれば笑い話だね」

「お? たしかに。あんなマジメなこと、俺の性に合わねぇな。あっはははははっ」

 ヒサト、通常運行で少しホッとしたわ、俺。

「……せな……い……」

 新橋姉?

「許せないっ!」

 新橋姉が吼えた。

 やっぱりこうなるよね。

 新橋姉が吼えたあと、走ろうとする。けど、それを俺は手を掴んで止めた。

 近くに居て正解だな。

「離してっ! 離してよっ、湊くんっ!」

 いや、離したらお前、あの四人のところへ行くつもりだろ? それは無理なお願いだ。

「新橋さん、少し落ち着いて」

 フェルが新橋を宥める。

「落ち着いてなんていられないわっ! スオウがイジメにあってて、やっている人たちもわかっているのよっ!」

「違うよ。落ち着いて、お願いだから」

「うるさいっ! 私はやっている人たちのところに行くのよっ! 行って、金輪際スオウをイジメないように言うのっ!」

「だからさ……」

「うるさいっ! あなたに何がわかるのよっ!?」

「いや、わからないけど……」

「わからないでしょっ! だったら言わないでよっ! 口出ししないでっ!」

「――……」

 フェル、ここは押されて黙っちゃいかん。このままだと確実に新橋の矛先が俺に向かう。

「離して、湊くんっ! 私、行くんだからっ! それとも、あなたも私に何か言いたいわけっ!?」

 ほら向いちゃった、もう……。

「早く離しなさいっ!」

「え? イヤです」

「……はっ!? あなた何を言って……」

「だからイヤです」

「え……ちょ、ちょっと!?」

「『離しなさい』に対して『イヤです』と言ったの。だから答えは、離しません、ということです。わかります?」

「……な、何よ、それっ! 意味わかんないっ!」

「頭悪いな、お前」

「はいっ!?」

 あ、思わず言っちまった。

「いや、まあ……。じゃ、じゃあ、もう一度訊くけど、行ってどうするの?」

「そ、そんなの決まっているわっ! 金輪際スオウをイジメないように言うのよっ!」

「シラをきられたり、口先で交わされたらどうするの? 〝証拠〟がないのに?」

「そ、それは……。け、けど、悪いのは向こうなのよっ!」

「やったという〝証拠〟はないんだよ? それで悪いって決め付けることはできるの?」

「えっと、それはその……」

「やったかもしれない、ということは、やったという証拠にはならない。であるなら、悪いって決め付けられないでしょ」

 証拠を出して、やった奴が認めたら悪いと決め付けられるんだから。

「……だ、だけど……。だけど、何もできないなんて……」

 ああ、新橋が泣きそう。だから俺に矛先向いてほしくないだよ。

「あのな? できることがあるから俺はお前の手を離さないの。ここ、ちょっとわかってくれるかな?」

「え……? どういう、こと?」

 お? 良い反応あり。

「つまりね。新橋弟のお腹の傷で、イジメがあるかもしれないという可能性。ヒサトが怪しいと思う四人が、イジメているかもしれないという可能性。今、この二つがあるんだ。わかるよね?」

「う、うん」

「で、この二つを結ぶためには、証拠が必要なの。その証拠は、その四人が新橋弟をイジメているところ、まあ現行犯で見つける、ということなんだ」

「あぁ……」

「一応、絞れてはきているんだ。剣道部の中にやっている奴がいるかもしれない、ということがね」

「……そっか」

 正直、ヒサトの証言があるのとないのとでは、段違いに違うなぁ。

「その現場を押さえるということが、できることなの。わかってくれますか?」

「うん。わかったわ」

 同じ剣道部の後輩を疑うのは気は進まないけど、ハッキリさせるためには疑いを持つのは仕方がない。

 なにより今、新橋姉に喚いたり泣かれたりするほうがもっと気が進まない。

 許してね、後輩諸君。

「話は終わりだな? じゃあ、帰るか」

「え? ちょっと待ってよ?」

「あんだよぉ?」

 新橋姉に呼び止められてシンタは不機嫌な声を漏らす。

「え、いや、これからどうするか考えてくれないの?」

「はあ? 何でんなもん考えなくちゃいけねぇんだよぉ?」

「え、でも、だって……」

「新橋さん。もうやることは決まっているんだから、これからどうするかはないよ」

「ああ。ナルミの言う通りだ。青春を踏みにじった奴らを捕まえる。それだけだっ!」

「イジメっ子ホイホイでも作るか? ゴキブリホイホイの要領で?」

 シンタたちのやり取りに困惑をする新橋姉。そんな新橋姉に俺は声をかける。

「まあ、大丈夫」

「湊くん」

「学校、部活中は俺たちがちゃんと見張っておく。新橋姉は、家とかでの行動を見張っておいてもらわないといけない。それがお前のやることだから」

「え、あ、うん」

「何かあったと思ったら必ず俺たちの誰かに連絡、相談すること。一人に連絡してくれたらいい。あとは受け取った一人があとの五人に連絡入れるから。わかった?」

「うん。わかったわ」

「じゃあ、携帯の番号とアドレス教えて。後で五人の連絡先、メールで送っておくから」

「ええ」

 新橋姉から連絡先を聞き、そこでこの話は終わった。


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