91 カルチェ・ラタン市をリニューアルするようです。
カルチェ・ラタン市に大ナタを振るいます。
市行政庁での挨拶を終えてから、衛士隊本部に向かう。グレイ騎士団長以下騎士10名とオートマトン兵300名を引き連れての訪問だ。衛士隊本部の中には、グレイとニケだけを連れて入っていく。本体は、衛士隊本部から少し離れたところで待機だ。衛士隊長は、アイゼンさんという名前の50代半ばの少し頭の毛が薄くなっている男性で、しかし目の光は隊長らしい強い意志を秘めたものだった。その隣に立っているにやけた男が副隊長なのだろう。アイゼン隊長は、私の目の前で膝間づき臣下の礼をとってくれたが、隣の男はニヤニヤと立っているだけだった。まあ、すぐに辞めさせるので関係ないけど。その男は尊大そうな態度で私に話しかけてきた。
「侯爵さん、俺らをやめさせるというけど、そんなことをしたら、ここがどうなっても知らないよ。」
「えーと、お前は誰だ?」
「なに、俺様は、ここの衛士隊の副隊長のアレグという者だ。ここの衛士隊は俺が仕切っているんだ。侯爵と言えど、何なら牢屋にぶち込んでやろうか?」
この男は、ろくすっぽ勉強なんかしなかったんだろう。貴族を逮捕するには、逮捕される貴族よりも爵位が上の逮捕許認状と裁判官の許可状の2通が必要であり、現行犯であっても軽犯罪では逮捕できないことになっている。したがって、この男が私を逮捕するなど、法律的も無理だし、物理的にはもっと無理だろう。取り敢えず、この男に鑑定をかけてみる。この男の犯罪歴に特化した鑑定だ。
アレグ
(38歳)
人間族 男性
レベル 22
犯罪歴:12件
殺人 4件
強姦 6件
強盗 2件
えーと、初めて犯罪歴の鑑定を実施してみたが、情報が簡潔すぎる気がする。窃盗や傷害などはデフォでは表示されないみたいだ。でも、これで、この男の犯罪奴隷以上の措置が決まったな。ニケに外で待機しているオートマトン兵を10名ほど連れてくるように指示する。裁判を受けるまで留置場で監視しなければならないからだ。アレグは、ニケが引き連れてきた10人の完全装備オートマトン兵を見て顔を青くしている。あ、そういえば、あの盗賊はどうなったんだろう。
「あ、昨日、門番の衛士に渡した盗賊の首領はどうしました。ここの留置場に入っていると思うんですが。」
「あ、えーと、えーと、おい、ベン、あいつはどうした?」
「え、ボス、あの男はそのまま帰しましたが。ボスが帰せって言ったじゃねえですか。」
はい、これで犯人逃走補助罪確定ですね。まあ、いいけど。どっちみち、新衛士隊発足の折は、どこかで逮捕されるだろうから。結局、衛士隊と軽作業員の軽180名はすべて解雇、そのうち、殺人など凶悪犯の履歴がある者29名は、そのまま着の身着のままで留置場に入ってもらった。地下の留置場に行くと、昨日からの収監者が12名もおり、そのうち1年以上収監されている者が6名もいた。この国の法律では、逮捕・収監されてから1カ月以内に裁判を受けなければならず、もちろん無罪となれば釈放することになっている。この国の裁判は、鑑定魔道具と真実の水晶である程度有罪・無罪が分かるので、えん罪率が極端に低いはずだ。なのに裁判を受けることなく1年以上も留置場に入っているなんて、裁判をせずに禁固刑に服しているようなものだ。この実態は、温厚なアイゼンさんも知っていたようだが、アレグにいいように胡麻化されて今日まで来てしまったようだ。
もちろん、私は、本人の犯罪歴などを鑑定してあげて、無実であると認められた方々11名を直ちに釈放してあげた。残りの一人は、元衛士隊員で強姦罪で訴えられていたが、証拠の品を王都にいるシュリンガー男爵まで送られてしまったので、仕方がなく留置場に入れているらしい。まあ、こいつはこのまま入っていて貰おう。退職者達は、武器や防具などは当然に持ち出せない。また、私物以外の各種装備品や魔石類などもそのままだ。退職者に対しては、一週間後9:00から衛士隊員の採用試験を行うことにしていることを伝えた。試験と聞いて、皆、げんなりしていたが、衛士隊の勤務経験者は当然、加点がある。でもそのことは内緒にしている。今から、そんなことを知ったら試験勉強なんかしないもんね。衛士隊員の採用試験をすることは、領内の市町村すべてに鳥を飛ばして示達している。採用予定は80名だ。あと、各市町村独自で採用する地方採用衛士制度もあるのだが、それは後日、シュリンガー団長、いえ男爵に任せることにしよう。まあ、衛士がいない村などは、若者たちで自警団を編成して、野盗や魔物から村を守っているそうだ。
衛士隊の採用試験は、すぐに特別採用したアイゼンさんが主体となってやってもらおう。本当は、私も面接に立ち会いたいのだが、少しゆっくりしすぎたみたいなので、ニケ副団長とボブとベントの3人に後のことは任せて、先にウエスタン領に向かうことにした。騎士そのものは3人だけだが、オートマトン兵が90体もいるので、戦力的にはその辺の騎士団にも負けないだろう。
その日の夕方、ミライト行政官が主催の歓迎会を開いてくれた。現在、男爵邸を建築中で、行政庁内にもイベントホール的なものがないので、私達が止まっているホテルのバンケットルームで催すことになった。大きなホテルには、通常のレストランのほかに、貴賓や大商人が主催する宴席を承ることが多いので、それなりの部屋を準備できるようだ。ミライトさんが、いろいろと紹介してくれたが、小さな都市ではあるが、それなりに王都で名の通った商会の支店があったり、あと、準男爵や騎士爵の方々が爵位章を胸に付けて自己紹介に並んでいた。これも貴族の務めだ。嫌がることなく、挨拶を受けているが、これって絶対にシュリンガーさんの仕事だよね。ベス嬢も、なんか疲れ切っているみたい。
ミライトさんが、壇上に上がって、今年度及び来年度の年貢や税率の軽減策について発表していた。周囲からのは反響が大きいのだが、それだけではなく領内の内政がうまくいくのか心配してくれる声が聞こえてきた。財源もなく減税すれば、そのツケは子々孫々まで及ぶのは火を見るよりも明らかだ。このカルチェ領内には、優良な鉱山も、王都でもてはやされるような産物もない。そんな状況で減税などして良いのかという心配だ。私は、ミライトさんに続いて壇上に上がり、シュリンガー男爵の寄親として、内政費の赤字分は、低利で貸し出すことを約束した。この世界で、低利とは年3割とか常識外れの金利だそうだが、私の言う低利とは、年2%で貸し出す予定だ。そして、当然に利息だけの返済も認めるし、、元本については30年ローンとすることを公表した。うん、日本の住宅金利よりは高いけど、この世界の相場で言えば超破格の低金利だろう。まあ、大型魔獣の3匹も倒せば、それなりの収入になるので、財政については心配していないけどね。それに誰にも内緒の埋蔵金もあるから、何とかなるはずだ。
次の日は、1日、市内観光に歩いた。この街の人達は何か元気がない。毎日、何十人もの人たちがウエスタン領に引っ越していくので、活気がなくなるのも仕方がないのかも知れない。でも、この市のすぐ南側には大きな森が接しており、森の恵みの他に魔物もある程度湧いてくるらしい。そのため、冒険者が結構目立っている。王都からブロンコ辺境伯まで行く道はブロンコ街道と言うらしいが、ウエスタン市までは、ウエスタン街道と呼ぶ人もいるらしいのだ。そのウエスタン街道の南側に広がる森が魔物が出没する森だそうだ。本当は、騎士団やオートマトン兵の訓練のためにも、何日間か森に入って討伐をしていきたいのだが、まあ、ここは我慢をして西へ急ぐことにした。
ウエスタン市のベンジャミン準男爵には、あと1週間位で到着すると連絡している。旧ダメンズ城、現ウエスタン城の内装もだいぶ出来てきただろう。あと、ウエスタン市の商会や職人ギルドとのつながりも作っていかないと。あれ、なんか、それって私が10歳になってからやる予定の作業だったような気がするんですけど。
カルチェ市を出てから3日、ようやくウエスタン領に入った。まあ、関所があるわけではなく、幅20m位の小さな川にかかっている橋を渡ると、ウエスタン領らしい。この川は、クロウズ川といい、かかっている橋はダメンズ大橋というらしいが、まあ、川の名前はしょうがないとして、ダメンズ大橋の名前はダメでしょう。どうにも明るい未来が見えてこないんですけど。まあ、建設費をケチったみたいで、馬車1台がやっと通れる位のちゃちい橋なので、この橋は早急に架け直す
街の規模からすると、オートマトン兵の戦力は過剰かもしれません。
次話は、明日6:00に投稿予定です。




