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77 騎士団員選考会は厳しいようです

今日は、騎士団選考日です。

 9月の終わり、王城守備騎士団と王都守備騎士団の採用選考会が始まった。ザイン宰相との約束通り、ウエスタン領騎士団の採用試験も兼ねている。まあ、普通に考えると王城守備騎士団が第1希望となり、第2希望が王都守備騎士団だろう。我がウエスタン領騎士団は、地方採用扱いの第3希望が妥当なところだ。


 まあ、どんな者でも良いという訳にも行かないので、厳正に選考して行くつもりだ。先ずは学力試験だ。義務教育のないこの世界では、文字の読み書きが出来ない者が多い。自分の名前は勿論のこと、ある程度の文章作成能力がなければ騎士としてやっていけない。また足し算と引き算くらいは常識の範囲で出来なければ、敵と遭遇した際の彼我の勢力差を即時に計算できないだろう。


 150名の採用枠に6000名の応募があり、試験会場を幾つかに分けることになった。私の王都邸も試験会場に貸し出しており、600名が受験するのだ。半年前にはお化け屋敷みたいだったが、内外装ともリニューアルしておいた。工務店の方には、見た目よりもしっかりした素材で補修して貰いたいとお願いしたら、チーク材やウオールナット、マホガニー材をふんだんに使って補修してくれた。費用が心配だったが、救国の英雄だからと部材費だけしか取って貰えなかった。


 さらに試験の立ち会いもシュリンガー団長からお願いされた。学科試験なので、ゾリゲン団長やスザンヌさん、ジュリちゃん、それに騎士団のうちでも優しい顔付きの人達を中心に30人を選抜して、立会い試験官をすることにした。机と椅子は、急場のことなので長い板を工夫して作ったのだが、試験が終わったら、これ、どうするんだろう。


 試験が始まった。問題を見ると、小学4年生レベルの読み書きと計算だ。漢字がない世界での読み書きなんて思ったけど、アルファベットを書けない者もいるし、算数も三角形とか台形の面積になると全く解けない者が続出していた。


 午後は、試験官全員で採点だ。採点結果は、一旦騎士団本部に集められ、上位600名が実技試験に進める事ができるわけだ。


 私は、試験中に片っ端から鑑定しまくって、攻撃力や防御力が80以上の者をチェックして歩いた。その結果、3人の受験生が該当した。学科試験に残ってくれれば、明日の実技試験が楽しみな人材だ。しかし、全員女性なのは何故だろう。


 学科試験は終わった。完全に諦めた者もかなりいたようだが、自分の名前さえ満足に書けないようでは、騎士になるのは難しいだろう。冒険者だって、依頼書が読めなければ満足な仕事はできないだろう。そう言えば、同じ依頼をずっとやっている冒険者がいるらしい。新しい依頼書が読めないので、薬草採取とかゴブリン退治などの依頼だけをずっとやっている者がいるらしいのだ。


 試験結果は明日発表の予定だが、今日の宿泊費を節約するために、夕方まで屋敷の前で待っている者が大勢いた。仕方がないので、屋敷で受けた者だけの合否判定書を夕方6時に門の前に張り出した。殆どの者がガッカリして帰って行ったが、例の女性3人は全員合格したようだ。合格者58名中女性は24名と比率が高いのは偶然なのだろうか。しかし、明日の実技試験では、例の3人組以外の女性では、最後まで残るのは体力的に難しいかも知れない。


 次の日の実技試験は、王城内の騎士団鍛錬場で行われた。最初は鍛錬場の外周を駆け足で回るのだが、概ね半分になった段階で終了だ。全員では走れないので100人ずつ6回に分けて走ることになった。先導は何故か私だった。時速15キロのゆっくりしたペースで回ったが、最初の20分で半分が脱落した。


 午前9時から始めて、午前11時過ぎに全員の駆け足が終わった。残った300名は、午後に模擬試合をすることになっている。


 午後の模擬試合は、騎士団から10名の対抗試験官が出て、15人ずつ相手をするのだが、何故か私も対抗試験官をやらされた。しかも受験者は全員女性だ。解せぬ。


 結局、例の3人以外は基準外となった。しかし、この試験は騎士になるための試験のはずなのに、剣の握り方から教えなければいけない者とか、剣が重すぎると文句を言う者など、一体何しに来たのと聞きたい。午前の試験を通過したのだから基礎体力はある筈なのに、攻撃力8とか防御力4とかのスザンヌさんやジュリちゃん並みのレベルで騎士になろうと思わないで下さいね。


 私は、一応礼儀としてフル装備で、ショートソードの模擬剣を使うことにしていた。


 例の3人のうち最初は、双剣使いの子だった。背が若干低い気がしたが、闘志溢れる目をしたツインテールの子だった。最初は様子見をするのが普通だが、この子は最初からガンガン攻撃をしてきた。剣速も速く、また狙い所もなかなか考えていて、次の行動が予測しづらいように攻撃してくる。無意識だろうが、時々『斬撃』のような魔力の放射が見えている。1分ほど彼女の攻撃を躱したりはね返したりしていた時だった。突然、攻撃の手が止まった。


   「ハアハア!ま、参りました。ハアハアハア!」


 あ、スタミナ切れね。まあ、あの動きを1分も続けるだけでも大したもんだと思うけど。これでスタミナを付けたらかなり手強くなるだろうな。はい、合格です。


 次は、大柄な女性で、並の男性なら絶対に声をかけないショートヘアのマッスルウーマンだ。武器は、短槍だが、注目すべきは、左手に持っている大楯だ。いわゆるタワーシールドで、下部には地面に打ち付けて固定するニードルが付いている。ああ、この子だった。防御力94とか信じられない程の高防御力の子は。彼女は、試合が始まると同時に、タワーシールドを正面の地面に打ち付けて、その巨体を全て楯の後ろに隠し、覗き穴からこちらの様子を窺っている。不用意に近づくと、あの短槍が攻撃してくるだろう。最初の何合かは私の打ち込みを受けていたが、徐々に速度を速くしていくと、勢いに押されて地面に打ち付けていたタワーシールドがズルッ、ズルッと下がり始めた。


    ガガガン!ガガガがガン!


 あ、もう後ろないかも。突然、短槍を上に投げ上げたので、投げてきたのかと思ったら、そのまま片手を上げて、


   「参りました。」


 本来は、敵の攻撃の間隙を縫って攻撃をするのだが、その隙が全く無いまま試合場を押し出されそうになってしまったらしい。うーん、攻撃手段をもう少し考えるべきだね。はい、合格です。


 最後の子は、オーソドックスな片手剣のポニーテールの子だ。左腕にバックラーを付け、右手の剣と一緒に多彩な攻撃を仕掛けてくる。うん、この手の相手は騎士さんたち相手に数え切れない程稽古をしているので、攻略法も熟知している。


 右上段から位置下ろすと、バックラーで受ける。その後、片手剣が空いている左脇を狙ってくる。これが常道だが、この子は、バックラーで受けると同時に左回転で見えないようにショートソードを下段から切り上げてくる。最初の回転に戸惑っては相手の思う壺だ。成程、この子の持ち味は多彩な攻撃手段だ。バックラーを使ってシールドバッシュをして来る。それを躱そうと体を変えたところにショートソードを叩き込まれる。かなり実戦を積み重ねているようだ。しかし、何合か打ち合った結果、彼女の致命的な欠陥を見つけてしまった。攻撃方向に足を大きく踏み込むのだ。足だけ見ていると躱すのも容易だし、予め待ち構えている事もできる。よし、右足を右に踏み出した。右手の剣をバックラーに隠して、右に振り出すだろう。よし、今だ。私は、彼女の剣が右上から繰り出されると同時に擦り上げて巻いて叩き落とした。彼女は、何が起きたか分からずに呆然としたが、直ぐに自分の剣が地面に突き刺さっているのを確認した。


   「参りました。」


 彼女の技の多彩さは特筆に値する。後は癖をなくすのと、もうちょっと剣に狡さが加わると無敵になるだろう。はい、合格です。


 実技試験が終わってから、各人に今後の課題と訓練方法を教えてあげた。全員、真剣に聞いていたが、最後の片手剣の子が、


   「試験官はお幾つなんですか?」


   「今年の春に7歳になりました。」


   「7歳なのに、どうしてそんなにお強いのですか?」


   「努力ですね。努力に勝る天才なしと言いますし。あと、これですかね?」


 手首と足首のウエイトバンドを見せてあげた。勿論、お腹のウエストバンドは隠したままだ。セクハラになっちゃうし。


   「このオモリをお風呂に入る時以外はずっと付け続けていますが、鍛錬というよりも精神的な訓練ですかねえ。」


   「えーと、さっきの試験の時も付けていたんですか?」


   「ええ、基本的に外すことは無いです。」


   「もし、外したらどうなるんですか?」


   「えー、分かりません。ヴァイオフォンさんと戦った時も付けていましたし。」


   「え、あの剣聖ヴァイオフォンと戦った?もしかして、あなた、ウエスタン侯爵様あ?」


 ああ、彼女達、私が誰か知らなかったみたい。

今日も、チートぶりが発揮されました。

次話は、明日、6:00に投稿予定です。

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