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78/156

78 騎士団は王都で暮らします

今日は、面接を行います。

 次の日、最終選考の面接が行われた。


 面接官は、シュリンガー王城守備騎士団長、ボーア王都守備騎士団長とゾリゲン団長だ。王都守備騎士団は、王城から離れた場所にあるので、ボーア団長とは公式の場でお会いする程度の面識しかないが、大柄で如何にも偉丈夫、質実剛健と言う印象の方だ。そして面接官に何故か私も混ざっている。選考方法は、それぞれが欲しい人材の時に手を挙げるのだが、競合した時は、本人の意向を尊重するとのことだけど、それじゃあ地方採用の我がウエスタン家騎士団が超不利と思うけど。まあ、この選考会に混ぜて貰っただけでヨシとしよう。


 総勢180名の面接だ。一度に10名ずつ入って貰って、右から一人ずつ自己紹介して貰う。手元には、学科の成績と術科の成績それと受験時に提出させた身上書がある。年齢の平均は18歳前後かな。学歴は、幼年学校卒が最も多いが、学歴無しの者もいる。王立学院騎士科卒業生は、無条件で採用となるが、一般の騎士学校の卒業生は校長先生の推薦枠以外はこの選考で合格しなければ騎士になれないそうだ。でも騎士学校卒業生の成績は常に上位なので、今まで不合格者はいないとのことだった。


 私は、学科試験60点以上、術科試験B以上で、攻撃力か防御力のどちらかが50以上あれば手を挙げるつもりだったが、該当者がいない。1組目は該当者なしで、シュリンガー団長とボーア団長が7人を採用していた。まあ180名の面接対象のうち150名を合格するとなると、殆どの者を合格させなければならないのだろう 。


 2組目で漸く該当者がいたが、他の団長たち全員が手を上げ本人の希望で王城守備騎士団に配属が決まった。ヂグジョー!


 3組目で、やっと1人確保できたが、学科、術科とも合格ギリギリだったし、少し痩せ気味なところが他の団長に嫌われたのだろう。でも攻撃力が36、防御力58と隠れた逸材だ。磨けば光るだろう。磨けば。それよりスキルに『探索』が生えている。それだけで、ぜひ欲しい人材だ。勿論、シュリンガー団長には内緒にしているけどね。


 次の組に、あの双剣使いの女の子がいた。鑑定をしてみると、


   バーバラ・フォン・ヒルマン

   アスラン暦449年7月4日生まれ(16歳)

   人間族 女性

   レベル 7

   HP  48

   MP  26

   攻撃力 87

   防御力 23

   魔法適性 水

   スキル:旋風剣


 貴族の子女だった。身上書を見ると、東部地方の男爵の3女で、地方の騎士学校を卒業したが、校長の推薦が貰えなかったのだろう。学科の成績も大したことがない。でも術科は私がAを付けといたからね。


 団長2人は手を上げなかった。様子を見ていた私が、手を挙げるのが遅れたせいで、不合格になったと思ったのか、手を顔に当てて泣き出しちゃった。ごめんなさい。直ぐに手を挙げると、ハッと気がついて、顔を上げた。うん、鼻水、拭こうね。あ、でも袖で拭くのはばっちいです。


 それから、3人ほど採用出来て、次の女性、あのタンク役が入ってきた。流石に甲冑は脱いでいたが、着ているワンピースドレス、とっても似合っていますよ。とっても。見違えたかも知れない。多分。でも、胸とか腕周りがパッツンパッツンだもん。そっちに目がいって、スカートの裾が捲れ上がっているのには気がついていませんよ。本当に。白色なんて気付きませんでした。鑑定をしてみた。


   ジョリアンヌ・フォン・プルマン

   アスラン暦449年11月1日生まれ(15歳)

   人間族 女性

   レベル 7

   HP  58

   MP  13

   攻撃力 28

   防御力 91

   魔法適性 なし

   スキル:ガード回避


 この子も貴族の子女だ。バーバラさんと同じく東部の男爵家の次女で、騎士学校の同期らしい。2人で受験に来たのね。この子は、ボーア団長と私の2人が手を挙げたが、バーバラが私の所に来るのが決まっているので、同じところ、つまりウエスタン家騎士団を希望してくれた。ありがとうね。女性騎士の場合、通常の部隊運用や訓練以外に色々気を使わなければならないので、余程目を引くところがなければ、手を挙げないのだろう。ジョリアンヌさんは、女子とは思えない立派な体格・・・ウホン!恵まれた資質に票が入ったのだろう。


 最後の女の子は、最終組だった。身上書を見ると、両親の名前がない。出身は、王都のスラム街の中にある孤児院となっている。鑑定をしてみた。


   カレン

   アスラン暦451年1月1日生まれ(14歳)

   人間族 女性

   レベル 9

   HP  66

   MP  75

   攻撃力 83

   防御力 91

   魔法適性 火、風

   スキル:剣術


 能力は本日一番だ。しかし14歳か。募集要項には、受験時に15歳になっている者と規定されているが、待ち切れなかったのだろう。着ている服も、色が薄くなった綿のワンピースというか、孤児院で孤児達がよく着ている貫頭衣のような服だ。身上書を見ても、学校に入っていない。よく学科試験が合格できたものだ。おそらく教会のシスターが教えてくれたのだろう。孤児院は12歳になると院を出なければならない。それまでにある程度の職業に就けるように教育してくれるのだ。しかし、孤児院卒業後2年半、今まで、どんな生活をしてきたのだろう。でも、彼女の目は敗者の怯えた目ではない。不屈の精神を宿した強者への挑戦者の目だ。私は、躊躇わずに手を上げた。シュリンガー団長とボーア団長は驚いたような目で私を見た。スラム出身の孤児を騎士団や衛士隊に入れることなどあり得ないのだろう。ウエスタン領衛士隊のジムさんは特殊な例だ。これでステータス80以上の女性全てが我がウエスタン騎士団に採用になった。男性は、あと3人を採用出来たので、男性7人、女性3人計10人が騎士団1期生候補となったわけだ。


 ウエスタン領騎士団候補生達は、この日は、これで解散し、約1か月後の11月1日に、ここウエスタン侯爵王都邸に集合するように示達したところ、カレンさんと男性騎士候補のミロさんとティムさんの2人が、困った顔をした。事情を聞くと、今日帰るところはないし、これから1か月、当てもない王都で過ごすのも大変だとの事だった。それなら、それまでの間、この屋敷内の騎士団本部に寄宿すれば良いと言ったところ、他の候補生達も一緒に寄宿したいと言って来た。あ、即時採用ですね。


 その日の夕方、皆をウエスタン侯爵邸に案内した。侯爵邸内には、本館の他に北側に騎士団用の隊本部兼宿舎があり、ある程度住めるように整備していたので、100人程度まではどうにかできるだろう。料理人も商人ギルドにホームヘルパーさんを頼んだので、今日の夕食は心配ない。管理人のロイさんに部屋割りなどを今日は間に合わなかったが、後で賄いの調理人や掃除・選択をする用務員さんを何人か雇うつもりだ。


 ロイさんに、部屋割りを頼んで、皆には、明日鍛錬場に9時に集合するように指示しておいた。まずは彼らの基礎体力を向上させることが第一だ。彼らは騎士団第1期生として後輩を指導して貰いたいし、彼らの中から幹部だって生まれるだろう。元々潜在能力が高い者のみを選抜したのだ。鍛えていけば、王国最強騎士団も夢ではないだろう。





 次の日、鍛錬場に集まった皆には、まず準備体操をして貰う。鍛錬場は、最初、敷地外だったが外壁を作り直し、森のようになっていたのを何とか鍛錬場らしく整備しておいたのだ。


 準備体操などしたことがない彼らに、私が見本を見せて、号令をかけることにした。


   「腕を大きく振って、イチ、ニイ、サアン、シイイ!」


 皆も、見よう見真似で身体を動かしている。準備体操が終わったら駆け足だ。2列渋滞で走り始める。ゆっくりしたペースで走るのだが、お互いに大きな掛け声を掛けさせる。


   「イーチ、イーチ、イチニイ!そーれ!イーチ、イーチ、イチニイ!そーれ!」


 走りながらの掛け声は、心肺機能に負担が掛かるが、それだけスタミナと精神力の向上が図れる。そんな気がする。一周800mの鍛錬場を5周ほどすると、列がバラけてきた。さあ、これからが鍛錬だ。少しペースを落として、隊列が揃うのを待つ。その後、ペースを上げて周回を重ねる。


 目標は25周20キロだが、やはり初日からは無理だった。特に女性陣は、完全にご臨終だった。息も絶え絶え、死屍累々、もう一歩も動けないようだ。9月末と言えども日中は汗ばむ時期だ。私は、たっぷりの水を掛けてやって脱水状態になるのを防いだ。


 30分後、漸く息を吹き返した彼らに、言葉を掛けた。


   「走ることは、すべての基本です。私も幼い頃から走り込みをして、基礎体力の向上を図ってきました。朝5時から20キロの走り込みをしていて、今も続けています。皆さんも、時間を見つけて走り込みを続けて下さい。努力は、決して皆さんを裏切りませんから。」

ようやく、ウエスタン領騎士団1期生が決まりました。

次話は、本日の17:00に投稿予定です。

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